低価格競争でSupraに敗退
ISDNやADSLモデムで起死回生を図る
法廷闘争の一方で、モデムの市場自身にも変化が生じていた。CCITTは1984年、2400bpsの標準規格としてV.22bisを策定する。Hayesも1985年にSmartModem 2400を549ドルで投入するが、この市場は最終的にSupraに持っていかれてしまったのは前回説明したとおり。
そして2400bpsの市場は製品の差別化が難しくなってしまい、戦いの場は9600bpsに移る。ここでU.S.RoboticsはHST(High Speed Transfer)、TelebitはPEP(Packet Ensemble Protocol)という独自プロトコルを開発し、Hayesも負けずに“ping-pong Protocol”(後にExpress96と名前が付けられる)を開発したものの、最終的にCCITTはどれとも異なるV.32を標準化し、これが普及することになった。
結局いずれの会社も、V.32と独自プロトコルのデュアルサポートになったのがこの世代である。1988年、HayesはまずV.32をサポートしたSmartModem 9600を1299ドル(内蔵タイプのSmartModem 9600Bは1999ドル)で発売、1990年にはV.32とExpress96両対応のSmartModem Ultra 96を投入するが、1991年にSupra Faxmodem V.32/14400が299/399ドルで登場したことで売れ行きはばったり止まることになる。
その1991年、Hayesは中国政府と大規模な契約を結んでおり、中国郵政通信庁や中国保健省で大々的にHayesのモデムが採用されたが、それでも利用される数はそう大きなものではなく、同社の業績の下支えにはなり得なかった。
結局1991年は130万ドルの営業赤字を計上し、翌1992年にはそれが4700万ドルの赤字に拡大した。同社は別に手をこまねいていたわけではなく、モデムの次のビジネスとしてISDN向けの製品開発を1985年から手がけており、これに続きADSLモデムにも着手していた。
ただISDNは日本はともかく米国ではほとんどど立ち上がらず、これはADSLも同じであった。日本と異なり電話局と家庭までの距離が長く、かつ電話線の品質も劣る米国では、ADSLを使ってもそれほど性能が上がらなかったあたりが1つの理由であろう。
他にもLANstepと呼ばれる独自のネットワークOS(競合はLANtasticだった)を1991年から投入したものの、結局NovellのNetwareに押される形で1994年にはビジネスから撤退している。
最終的に現金が足りなくなったことで、1994年11月に連邦倒産法第11章(Chapter 11)の申請を行ない、ここでHayesの命運は尽きることになった。
その後ベンチャーキャピタルなどと組んで会社の資産の半分近くを売却、Hayes Corp.として一旦は連邦倒産法第11章から脱した後、Access Beyondというターミナルサーバーのメーカーと合併。今度は社名をHayes Communicationとした上で株式上場を行うが、1998年10月に再び連邦倒産法第11章を申請することになる。
今度は救いの手はどこからも現れず、結局1999年に会社清算となってしまった。その後、このHayesのブランド名のみがZoom Technologyによって買収され、現在もいくつかの製品にHayesの名が冠されている。

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