このページの本文へ

山根博士の海外モバイル通信 第317回

日本ノキアユーザーの宝「KKJConv」の10年間を振り返る

2016年12月01日 09時00分更新

文● 山根康宏 編集●ゆうこば

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

旧ノキアユーザーなら誰もがお世話になった「KKJConv」

 いまや海外でスマホを買っても、「Google 日本語入力」を入れればすぐに日本語入力ができる時代になりました。しかしスマートフォンの黎明期は、日本語表示どころか日本語入力ですら困難な時代があったのです。

 とくにファンの多かったノキアの「Symbian S60」はQWERTYキーボードを搭載する製品で、海外機では当然日本語入力をサポートしていませんでした。しかし、そこに救世主とも言えるアプリが存在していたのです。それが「KKJConv」です。

独特の入力方法を採用した「神」アプリ

KKJConvの生みの親、コザック氏

 KKJConvは現在、上海在住のコザック氏が開発したアプリ。2006年6月25日に公開されるやいなや、ノキアののQWERTYキーボードスマートフォンユーザーのほぼすべてがインストールしたといっても過言ではないほどの「神」アプリでした。

 使いやすさとデザインの良さと最新のハードウェアを搭載した海外ノキア機の最大の欠点が日本語入力だっただけに、KKJConvの登場はノキアの日本人ユーザーを大幅に増やしていったのです。

海外のノキアQWERTY機で日本語が入力できる

 ただし、KKJConvは「FEP(Front End Processor)」ではありません。SymbianでFEPをつくるとなると、難しい話はさておき、パーミッションの設定などとにかく大変。KKJConvはひとつの完結したアプリであり、このアプリ内で日本語を入力します。

 そして、入力された文字列を「コピー」して、別のアプリに移動してペーストすると、日本語が間接的に入力される、というわけです。

KKJConv内で日本語入力

ワンタッチでコピペ画面に切り替え、「Ctrl+A」で全文選択して「Ctrl+C」でコピー、ほかのアプリで「Ctrl+P」を使ってペースト

 この操作、一見面倒に見えるようで、まずKKJConvの動作が軽いので文字入力も苦になりません。また、QWERTYキーボード端末であればコントロールキー操作も楽に行なえます。

 その後、Symbian向けには日本語FEPがいくつか登場しますが、KKJConv登場当時はほかにアプリは無く、サクサク使えるということでSymbian S60の特徴である左右のソフトキーのどちらかにKKJConvを割り当てていた人も多かったはずです。

Symbian S60端末はアプリのショートカットキーとして使えるソフトキーを搭載。そこにKKJconvを割り当てれば即座に日本語が入力できた

 なお、SMSアプリへはKKJConvから日本語をワンタッチで転送できました。KKJConvで文字入力後、メニューから「SMS送信」を選べば、SMSアプリの画面に文字がペーストされます。そこで送信すれば相手に日本語が送れたわけです。

 当時のコミュニケーションはメールかSMSでしたが、スマホ同士でも即座に内容が確認できるSMSは人気でした。まだプッシュメールもこの時代はそれほど普及していなかったのです。

SMSを使う場合はワンタッチで日本語を送ることができた

 ちなみに、いまでもKKJConvは利用可能です。コザック氏のウェブページからダウンロードしてインストールが可能。昔のノキア機をいま入手してしまったというマニアの人も、KKJConvを入れて日本語入力が可能です。

 ただし、ブラウザーなど、利用するアプリ側が、表示できないウェブページがあるなど、いまとなっては実用性はやや落ちてしまっています。

 また、KKJConvは実はJavaのMIDPアプリなので、非Symbian機でも動きます。とはいえ、動作確認された機種は過去のものとなっているため、最近のQWERTYキーボードを備えた他社端末で動くのか、といった検証も各自が自分で行なってください。

 なお、KKJConvの開発裏話は、10周年を迎えた今年、コザック氏のウェブページにまとめられています。

改めて触ってみて、その良さを実感

非スマートフォンな「Nokia Asha 303」でも動くKKJConv

 ちなみに、筆者も久しぶりにノキアの「E90」の電源を入れてみましたが、QWERTYキーボードの押し具合は最高。このボディーにAndroidをインストールした端末をクラウドファウンディングでつくりたくなってしまうほどです。

 BlackBerryのハードウェア撤退などQWERTYキーボード端末はどんどん減ってしまっていますが、需要はゼロではないはずなので、どこかのメーカーにも頑張ってほしいところ。

E90のキーボードの押し具合は最高。Androidを走らせたくなる

 KKJConv登場の2006年ころは、ノキアのシェアが圧倒的な時代。その前後に登場したSymbian S60スマートフォンを見ても、縦型QWERTY(E61、E61i)、横型クラムシェルQWERTY(E90)、縦フリップ(N76)、画面回転(N93、N93i)、10キー部分ツイスト(3250、5700)、縦スライド(E65、N80、N81)、デュアルスライド(N95、N96)、そして、キャンディーバー(複数機種)と、豊富なラインナップを擁していました。

 ほぼ毎月のように新製品が発売されるという、ノキア好きには悲鳴を上げるほどうれしい時代だったのです。

KKJConvを使いながら、当時の思い出話に花が咲く

新生ノキアの新型スマホに期待しよう

 さて、最近になってノキアの新しいスマートフォンのリーク情報が少しずつ出てきています。

 マイクロソフトとの協業、Lumiaの廃止、そして新体制での新たなスタート。年明けに出てくると思われる新モデルはAndroidスマートフォンとなる予定です。再びユーザーたちをワクワクさせてくれるような、ノキアらしさを持ったスマートフォンをぜひ送り出して欲しいものですね。

日本のノキアユーザーにとって、KKJConvは一生忘れられない宝物

山根康宏さんのオフィシャルサイト

「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!

 長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰〜山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!

 「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!

→ASCII倶楽部「スマホメーカー栄枯盛衰〜山根博士の携帯大辞典」を読む

ASCII倶楽部は、ASCIIが提供する会員サービスです。有料会員に登録すると、 会員限定の連載記事、特集企画が読めるようになるほか、過去の映像企画のアーカイブ閲覧、編集部員の生の声を掲載する会員限定メルマガの受信もできるようになります。さらに、電子雑誌「週刊アスキー」がバックナンバーを含めてブラウザー上で読み放題になるサービスも展開中です。

→ASCII倶楽部の詳細はこちらから!

カテゴリートップへ

この連載の記事

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ