最大のハードルは、WaaS(Windows as a Service)
一方、企業がWindows 10を導入する上で、最大のハードルは、WaaS(Windows as a Service)と呼ぶ、Windows 10で採用された新たな考え方をいかに取り込むかという点だ。
WaaSでは、常に最新のOSを利用することを前提として、それにあわせたサポートサイクルが示されている。
たとえば、2015年7月29日に公開された最初のWindows 10は、この時点で、個人向けとなるCB(Current Branch)と、法人向けでの利用を想定したCBB(Current Branch for Business)、さらには、ミッションクリティカルなどの特定用途向け製品であるLTSB(Long term Servcing Branch)が同時に用意されている。
実は、この3つが同時に提供されるのは、イレギュラーなものであり、2016年8月2日に公開されたWindows 10 Anniversary Updateのように、まずはCBが提供され、続いて約4ヵ月後にCBBを提供。さらに、LSTBが10月から提供されることになる。ちなみに、LTSBはすべてのアップデート時に提供されるのではない。Windows 10 Anniversary Updateでは、最初のWindows 10からわずか1年で、LTSBが提供されたことから、これもイレギュラーとはいえるが、今後は、2、3年に一度のペースで提供するというのが基本的な姿勢だ。
そして、CBのサポート終了時期は次期アップデート版がリリースされた時点、CBBのサポートは、2世代先のアップデート版のCBBが登場した時点で終了することになる。
最初のWindows 10は、年内提供されるWindows Anniversary UpdateのCBBにより、サポートが終了
この仕組みを当てはめると、2015年7月29日に提供開始となった最初のWindows 10は、年内をめどに提供されるWindows Anniversary UpdateのCBBにより、サポートが終了するということになる。実に、1年半という短い期間だ。WaaSによって、Windows 10導入企業はこの仕組みを前提とした導入および運用ルールを策定しなくてはならないというわけだ。
日本マイクロソフトでは、「CBでは、新機能リリース直後から4ヵ月以内、CBBでは同4~8ヵ月以内に新しいバージョンを適用する必要があり、企業はこのサイクルについていく必要がある」とする。
企業側から見れば、CBBを選んでいる場合新バージョンの一般提供から原則8ヵ月以内に社内検証を完了し、適用を終える必要があるというわけだ。
中小企業においては、WaaSの認知に関して課題が残っている
日本マイクロソフト 浅田氏は、「日本マイクロソフトが直接担当している大手法人ユーザーにおいては、WaaSの仕組みについて理解が進んでおり、その適用も広がってきた。これらの企業においては、配信方法をどうすべきかという点に移行している」と語る。
だが、「中小企業においては、WaaSの認知に関して、まだ課題が残っている」とも語る。パートナーを巻き込んだ、WaaSの認知徹底が今後の課題といる。
OEMベンダーに課せられた180日ルール
もうひとつ気になっているのは、OEMベンダーに対して課せられた180日ルールである。Windows 10を搭載したPCなどを製品として出荷するまでに、180日間という期限が設けられている点だ。
このため、企業の一括導入案件において、180日間を超えて同じ仕様のPCを順次導入する場合などにはこれに対応できないという問題が発生。PCメーカーやシステムインテグレータは頭を悩ませている。
法人向けのWindows 10に力を注ぐという姿勢を示しているにも関わらず、こうした課題が解決されていないのはブレーキになりかねない。
企業がWindows 10を積極的に導入するには、企業側が意識やルールを変えなくてはならない。日本マイクロソフトにとっても、企業側の理解を高めてもらい、社内の標準的な運用ルールとして適用してもらえるかが鍵になる。
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