5周年を迎えたMouseProのこれまでとこれから

PCだけでは売れない時代、高品質で成長続けるMousePro

文●鈴木誠史/ASCII

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左から、マウスコンピューターの小松 永門社長、有藤 俊氏、金子 覚氏

 マウスコンピューターの法人向けPCブランド「MousePro」が、2月に設立5周年を迎えた。

 2011年2月にブランドを立ち上げて以来、デスクトップPCからモバイル向けのタブレットPC、さらにはワークステーション、小型サーバーまで幅広くラインアップを取り揃えてきた。マウスコンピューター小松 永門社長は「社内における法人ビジネスの売上高は、この5年で20%から35%に成長した」と語る。

 節目を迎えたMouseProの、これまでとこれからを聞いた。

「品質」強みにリピーターを獲得。MouseProが法人ビジネスを成長させた

── 5周年おめでとうございます。まずは、これまでを振り返っての感想を一言お聞かせください。

金子 この5年間はとにかく、あっという間でした。1年目は「MouseProにはなにが足りないのか」の自問自答を続けているうちに終わり、2年目3年目はXPからの買い替え需要で事業規模が拡大しました。4年目からは市場の反動がありつつも、さらに発展するためにワークステーションなどのラインアップを新たに強化してきました。新しいものを取り扱うごとに、その業界業種のことを一から勉強して……。常にその繰り返しで、本当にあっという間でした。

有藤 法人ビジネスにどう取り組んでいくかをプロダクトチームと営業チーム一体となって取り組んできた結果、順調に成長し続けることができました。リピーター数の増加も順調要因のひとつだと思います。

小松 MouseProというブランドは、マウスコンピューターの法人ビジネスを伸ばすためのソリューションでした。社内における法人ビジネスの売上高は元々20%程度でしたが、今では35%となっています。

マウスコンピューター小松社長

── この5年間で培ってきた「MouseProの強み」はなんでしょうか。

有藤 一番は、国内生産である品質ですね。新しい技術を取り入れていくことを重視しながらも、やはり品質は譲れません。特に市場評価期間の短いものを提供する際は、きちんと安心だと言える根拠を持っておく必要があります。開始当初からこだわってきた品質を、お客様および販売パートナー様に評価してもらえたのが非常に大きかったです。

金子 ユーザーフィードバックの内容は、年を重ねるごとに変化してきています。5周年のいま特に多いのは「何も問題がないことが素晴らしい」ですね。昔は納品後、仕様や品質について問い合わせをいただくこともありましたが、今は本当に何もないので、こちらから確認を取らせていただくほどです。

 その次によく評価していただいているのは、カスタマイズ対応と納期のバランスです。カスタマイズの幅が広いメーカーも多くいますし、納期が早いメーカーも多くいます。しかし、この2つを両立できるメーカーはそう多くないはずです。

5年前よりも「MousePro製品が活躍する場は増えてきた」

── MouseProを立ち上げた5年前と比べて、今のPC業界をどう見ていますか?

小松 4Kや8K、VRなどの普及により扱うデータ容量が格段に増加し、より一層パワフルなPCが必要になってきました。このニーズに対して、きちんと応えられるPCを出していこうというのが我々の使命です。PCの存在価値は、「コンテンツを楽しめること」から徐々に「コンテンツを快適につくれること」にシフトしてきたように見えます。

── 8Kなんて、5年前には想像できなかった解像度ですよね。

金子 5年前は「3Dビジョン」の時代ですかね……。2年前に出展したクリエイターEXPOでは「4K、間違いなく来ます!」とお客様に訴えかけていたのに対し、昨年は「実際に4Kを扱うためには何が必要なのか」を伝えるようになりました。現在は複数のケーブルテレビ局が4K編集用マシンとして当社のワークステーションを導入していただいておりますし、確実に市場は育っているなという実感があります。

有藤 街頭のデジタルサイネージなどを見てみても、ハイエンドな再生機が求められるようなリッチコンテンツが増えてきました。コンテンツがリッチになればなるほど、MousePro製品が活躍する場は増えると思います。

金子 G-Tuneの製品が自動運動車の開発用に搭載されていたりもしますし、これから先やりたいことを考え始めるとキリがないです。ただ、今あるラインアップでやりきれていないことがまだまだあるので、まずはそこからですけどね。

入社時からMouseProを担当してきた有藤氏

金子氏は「まだまだやりきれていないことがある」と語る

今後に向けてのテーマは「いかに期待を超えていくか」

── 今後MouseProはどういった分野に注力していくのでしょうか。

有藤 当社はクリエイター向けの新しいPCブランド「DAIV」を立ち上げました。法人のお客様の中でも、デザイン関連のお仕事などクリエイティブ分野へは徐々にDAIVを基軸としていく方向を考えています。MousePro製品にとらわれずゲーム用途ではG-Tune、クリエイティブ用途にはDAIVなど専門性に特化した製品を提案していくため、必然的にMouseProは営業ツールであったり、オフィスワークの需要により特化した製品に注力していくことになります。サーバーやワークステーションをはじめ、モバイル分野であれば例えば「防塵・防滴性能を持ったタブレット」などもですね。

マウスコンピューターは新ブランド「DAIV」を引っさげ、カメラの総合イベント「CP+ 2016」に出展。職場で4K動画編集用PCの導入を検討する人も訪れたという

金子 既存の組み込み向けOS搭載製品について、もう1歩先へ踏み込んだ販売方法を考えています。というのも、製品そのものだけでは売れない時代になってきている。ですから例えば、単に組み込み向けOSをPCに搭載させて売るだけでなく「このようなシチュエーションで使えますよ」といった提案をさらに行なっていく必要があります。

── スマートフォン「MADOSMA」もあります。法人へ向けて今後モバイル分野に踏み込む計画はないのですか?

小松 MADOSMAは今後、法人のお客様が多くなってくるのではないかと思っているところです。確かに法人向けのモバイル分野も伸ばしていかなければと思っている部分ですが、我々の中心はモバイル分野ではありません。法人ビジネス全体を伸ばすために、どうモバイルを展開するかを考えています。

法人専用モデルの「MADOSMA Q501-BK」

── 最後に、次の6周年、さらに先の10周年に向けての意気込みをお聞かせください。

有藤 我々がこの5年間でやってきたのは、本体の構成から販売方法まで、PCを買い慣れていない中小・SOHOのお客様がPCを買いやすいようにすることでした。反対に、エンタープライズ系のお客様へはまだまだアピールできていません。今の基軸をもとに、さらに幅を広げるため武器を揃えていきます。

金子 「個人でマウスのPCを使っていたから、法人のMouseProを導入した」という声をいただくことがあるんですが、これを逆にしていきたいなと。売上や出荷台数だけにこだわることはありません。数を追うだけでは、ニーズとかけ離れた製品になってしまいますから。今やりきれていない領域へも裾野を広げて、結果として数が伸びればいいなと思います。

小松 我々は「ここはお客様にご迷惑おかけしてしまっている」という部分を自ら考え、拾って、次に生かさなくてはいけません。意見を直接くださるお客様は、全体のなかの一部だからです。今後に向けての大きなテーマは「いかにお客様の期待を超えていくか」。少しでも先回りして、いい製品をご提供できればと常に考えています。

コーポレートメッセージを1月から新たに「期待を超えるコンピューター」としたマウス。MouseProブランドにおいてもこのテーマは変わらない