革新的な! 驚くべき! いままでにない斬新な研究結果がいまここに!
過去40年間の科学論文を分析「画期的な大発見!」など急増する煽り文句
2015年12月16日 13時13分更新
英医学誌BMJは12月14日、ここ40年間の科学論文を分析したところ「画期的」「革新的」「驚くべき」といったポジティブワード(肯定的な単語)が非常に増加しているという研究論文を掲載した。
これはオランダの研究者が行なった調査結果。novel(新奇な)、amazing(驚くべき)、innovative(革新的な)といったポジティブ単語と、impossible(不可能)、unsatisfactory(不出来な)、mediocre(平凡な)といったネガティブ単語をそれぞれ25単語、そのほかのニュートラルな名詞や形容詞をランダムに100リストアップ。オンライン論文検索でアブストラクト(抄録)から検索・カウントした。
1974年から2014年までの論文(おもに医学関係)の単語使用率を見ると、ネガティブやニュートラルワードに比べ、ポジティブワードは平均2%から17.5%へと増加。とくに上位の単語robust(健全な)、novel、amazingなどは相対的に150倍という驚異的な増加を見せていることがわかった。使用率向上を外挿したところ、2123年にはすべての論文が単語novelを使用するだろうと予測している。
論文筆者たちは、誇張表現を多用することでバイアスを生じさせ、論文誌編集者や読者に肯定的な印象を与えるのは確かだが、研究自体の質の向上に意義のあることかどうかに関して疑問を呈している。とくに近年になって医学関係では、虚偽や誇張された研究結果を検証するために多大なリソースが浪費される傾向にあることに警鐘を鳴らしている。
また、今回発見された知見を踏まえつつも、我々(学術・医学界)は独創的で革新的な創造的で優れた科学者を必要とすることには変わりないとしている。
なお、BMJは1840年創刊の歴史ある医学誌。現在において世界的に非常に権威ある医学誌のひとつだが、12月はクリスマス特集としておもしろおかしい論文を掲載するのが恒例行事となっている。この論文もクリスマス特集の一環として掲載されたものだが、調査結果は実際に集計したものと思われる(完全なジョーク論文も掲載されており、今年の論文には「ゾンビ対策のための防疫体制」などというものもある)。また、この論文は世界で最も権威ある学術誌ネイチャー(Nature)にも掲載されており、内容的には信頼がおける(はずだ)。
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