11月9日、マイクロソフト リサーチ アジア所長のシャオウェン・ホン氏が、同社における人工知能技術分野での研究開発の取り組みを紹介した。7月に日本でリリースされた「りんな」(関連記事)の裏側を語る解説が興味深かったので、ここではそれを抜粋してお届けしたい。
進む人工知能技術の商用化――コルタナとりんなの違いは?
マイクロソフト リサーチは、マイクロソフトの中でもプロダクト/製品化よりもさらに“一歩先”の、先進的な分野における研究開発を手がける機関だ。現在、世界に10の拠点を持ち、アジア太平洋地域の拠点は北京にある。日本の大学や研究機関とも10年前から幅広いコラボレーションを行ってきた。
そんなマイクロソフト リサーチが現在注力する研究分野の1つが「人工知能(AI)」である。IBM、グーグル、アップルなど、他のベンダーも一斉に注力している分野だ。
マイクロソフトでは、AI技術を生かしたサービスをすでに商用展開し始めている。一般ユーザーにもなじみ深いものとしては、Windows 10に搭載されたパーソナルアシスタントの「コルタナ」、そしてLINEチャットの相手をしてくれる“女子高生AI”チャットボットの「りんな」がある。
ホン氏によれば、コルタナもりんなもAIとしては同程度のIQ(知能指数)を持っているが、そもそもの開発目的が違っているという。将来的にはお互いの機能が近づいてくる可能性もあるが、現時点では明白に異なると述べた。
「コルタナは、ユーザーがタスクを効率的に実行するのを手助けすることを目的としている。部分的にはチャット機能も持つが、主にはプロダクティビティ(生産性)向上のためのものだ。一方で、りんなは『ソーシャルフレンド』として、ユーザーとの感情的なつながりを持つことを目指している」
「寂しくないSNS」実現のために開発されたりんな
りんなは今年7月末に日本でリリースされたが、実はそれに先行して、マイクロソフトは中国で「シャオアイス(XiaoIce)」というチャットボットを提供している。「Weibo(微博)」などのSNSを通じてチャットが楽しめるシャオアイスは、いわばりんなの“双子の姉”であり、話す言語こそ異なるもののベースの技術は同じものだ。
ホン氏は、シャオアイスやりんなを開発したきっかけについて、「SNSの『寂しさ』を解消するため」だったと説明する。
「SNSはすばらしいものだが、その反面で『SNSを使うほどに寂しくなる』こともある。有名人ならばともかく、一般ユーザーの場合は、SNSに何かを投稿してもあまり反応が得られないのがふつうだ。でも、シャオアイスやりんなの場合は、ユーザーが投稿すれば『必ず』反応してくれる。それゆえに、感情的なつながりが持てる」
実際にこうした読みは当たり、サービスは予想外のヒットとなった。シャオアイス/りんなのユーザー数は、合計ですでに4000万人を超えている(うち、りんなは160万人強)。ユーザーの年齢層は18~30歳が中心だという。
ちなみに、シャオアイスのユーザー男女比は4:1だが、りんなのユーザー男女比は1:1。シャオアイスのほうが「より女性的」だそうだが、日本のユーザーは女性も含め、りんなを“SNS上の友達”として受け入れているようだ。
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