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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第70回

Apple Musicに期待すること

2015年06月17日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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Apple Musicについて紹介するTim Cook氏。音楽はAppleの心臓部にあるとして、今後も音楽ビジネスに積極的に関わる姿勢を取り続けている

 サンフランシスコのGoogle/Appleの開発者イベントに続いて、今度はカリフォルニア州を南へ下ったロサンゼルスで、ゲームの祭典「E3 2015」が開幕しています。

 Microsoft、ソニー、任天堂という大きなゲームプラットホーマーと、EAやスクエアエニックスなどのゲーム企業がプレスカンファレンスを開催し、また「Star Wars Battlefront」といった待望のゲームが披露されるイベントです。

 やはりゲームは、テクノロジーの発展を牽引する上で非常に重要です。テクノロジーへの渇望感や奇想天外なことが、ゲームという世界観やシナリオ、システムと融合していくからです。

モバイルの台頭はエンタメにとっては逆風か?

 そうした最先端のテクノロジーを気負わず、また必然性を感じながら取り込むゲームの世界において、モバイルの台頭はもしかしたら逆風と感じられたかもしれません。

 小さな画面、非力なプロセッサー、そしてケータイの決定キーからマルチタッチディスプレーと、ゲームコントローラーよりも操作に直感性がないインターフェース……。

 ケータイやスマホに娯楽の時間が奪われ、しかも貧弱な端末という制約を前に、モバイル以前のゲームメーカーは耐えなければならない時間も短くなかったように思います。

 先般発表されたApple Design Awardのゲームのカテゴリーでは、3Dながら8bit風のグラフィックスを用いたゲームから、リアルなテクスチャーを備えた乗り物がスムーズに動くゲームまでさまざまでした。

 ただ、ここ数年、1セッションが数分で終わるタイプのゲームが表彰されており、テレビという大画面でゲームの世界観に浸る没入感よりも、同じゲームにはまって長時間やり続けてしまう没頭が評価されているように思います。

 没入と没頭の二極化とも言えるかも知れません。となると、Oculusのようなヘッドマウントディスプレーを用いるゲームは、どちらかというとモバイルらしくない、没入に向いているようにも思いました。

音楽への没頭を再び作れるか?

 さて、前回(関連記事)に続いてAppleの開発者会議WWDC15の話題。とはいえ、まったく開発者向けの話ではない「One more thing……」として披露されたのが、Appleの新しい音楽サービス「Apple Music」です。

 最近のAppleの新しいサービスは、「i○○」ではなく、「Apple ○○」として披露しています。しかも表記上、「Apple」はリンゴマークで表現されています。Appleがライフスタイルブランドとしての歩みを始めており、今後も核となるパーソナルデバイス以外には、「Apple」が製品名につけられていくことになるのでしょうか。

ラッパーのDrakeがApple Musicの「Connect」機能について語る

 Apple Musicは、米国では月額9.99ドルで、iTunesにある音楽が聴き放題となり、気分や人が介在するキュレーションによって、好みの音楽を聴いたり、新たな音楽と出会ったりすることができるサービスです。

 すでにiTunesにライブラリがあれば、iTunes Radioのように、ライブラリにあるアーティストや楽曲から音楽を聴き始めても良いでしょうし、ダンスミュージックが聴きたい、往年のヒップホップ、高校卒業時のヒットチャート、といった少しワガママな要求をしても、きちんと応えてくれる、そんなサービスになりそうです。

 かつてiTunesにはPingと呼ばれるソーシャルサービスがあり、あまりうまくいかずひっそりと終了していました。Apple Musicには再度、アーティストの写真やビデオ、近況などをフォローできるソーシャルネットワークの仕組みが搭載されます。

 iTunes、あるいはiPhone/iPadのミュージックアプリが刷新され、新しいサービスが利用できるようになる予定です。6月30日に開始、とアナウンスされており、100ヵ国に導入されるとしていますが、日本でいつ、いくらで、という情報はわかりません。でも、さすがに100ヵ国に入りそうですよね。

CD世代からすれば、朗報のサービス

 筆者は2万曲弱のiTunesライブラリに加えて、SpotifyやiTunes Radioも使っています。MacではiTunesでの音楽再生が多いですが、プレイリストをiPhoneに転送するのが面倒で、モバイルではSpotifyやiTunes Radioにお世話になっています。

 ただ、どちらかというとSpotifyの方が好きです。iTunes Radioは、どうしても「ステーション」という枠の意識が強い印象があります。もちろん既存の好きな曲も良いのですが、新しい音楽に出会いやすさを考えると、取りあえずムードを選んで再生しておくにはSpotifyの方が良いのです。

 その点、Apple Musicは、「For You」で新しい音楽との出会いを演出してくれる部分に期待しています。

 ラジオやストリーミング系のサービスは、誰かもしくは機械がセレクトした音楽が順番に聞こえてきて、それもまた音楽との出会いの場として有効です。Spotifyは特に、手放しに「良い感じ」に、新鮮に音楽を聴いていられる点が良いのだと思います。

 ただ、たとえば、毎週水曜日にCD屋にフラッと立ち寄って、気になる1曲が見つかるような感覚になるかどうか。つまり、ちょっとだけ能動的に、音楽を選んでいる感覚が得られるかどうかに注目したいのです。

 一方、そもそもストリーミングで音楽を聴いている人、あるいはYouTubeやニコニコ動画などで音楽を聴き始めている人たちにとっては、さほど魅力を感じるサービスではないかもしれません。そもそも有料でなければフル機能を使えないわけですし。

 ちなみに、音楽のバックアップのため、すでにiTunes Matchを利用していますが、Apple MusicとiTunes Matchは独立したサービスとして提供されるため、iTunes Matchユーザーだからと入ってApple Musicのお金を払わなくて良い、というわけではないそうです。 せっかくなら、統合してしまってもいいのに……。

WWDC15の基調講演の最後を締めくくったのは、The Weekendのライブ


(次ページでは、「Beats 1という面白い可能性」)

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