毎週近況として、身の回りの出来事を記事の枕にしていますが、今回は事件が起きました。バークレーで停電です。ちょっと気温が25度を超え、帰宅して部屋が熱気で充満していることに驚いて、みなが家でエアコンを一斉に使ったのでしょう。
これまでも確かに、1年に1回か2回、急に暑くなった日の夕方から夜にかけて停電が起き、「ああまたか」という感覚ではあったのですが、今回はタイミングが悪すぎました。
筆者はちょうどWWDC15の初日のキーノートから帰ってきて、さあ写真をアップしよう、原稿を書こう! としていた矢先の出来事。取材先でもバッテリー駆動していたMacBook Proは息も絶え絶え。もちろんケーブルモデムもWi-Fiも沈黙。
iPhoneはモバイルバッテリーもありますが、どうやらT-MobileのLTEのアンテナも使えなくなったようで、2Gを示す「E」マーク(EDGE)が点灯しままとなってしまいました。
もし、少し帰宅が遅れたとしたら、BARTと呼ばれる電車は、停電している駅を「通過する」という措置を執るので、最寄り駅で降りられない事態になっていたかも知れません。不幸中の幸い、と思い、Kindleで少し本を読んで寝ることにしました。
WWDC15のポイントは?
昨晩はあれだけ暑くても、朝には霧が立ちこめてヒンヤリとした空気になっているので、東京の熱帯夜とは違います。そんなことを考えながら、復旧した電気をありがたく使いながら、この原稿を書き始めています。
Appleは、年次開発者イベントのWWDC15で、iPhone/iPad向けの次期OSであるiOS 9、Mac向け次期OSであるOS X El Capitan、オープンソース化もアナウンスされた開発言語の新版Swift 2、Apple Watch向けの新OSとなるwatchOS 2、そして新しい音楽サービスとなるApple Musicを発表しました。
ちなみに、OS X El Capitanの「El Capitan」とは、現行バージョンの名前にもなっているヨセミテ国立公園にある、高さ1000mにもおよぶ花崗岩の一枚岩で、ヨセミテの名所の1つにもなっています。
全体を通してみると、体験の連係を強調した昨年のアップデートよりも、個別のデバイスがユーザーである我々のことを深く理解してくれるようになった、そんな印象を覚えました。Siriがとても重要な、ユーザーとのコミュニケーションの窓口に成長しつつあるということです。
また、iOS 9については、主役はiPadのようにも思います。マルチタスクと画面分割、そしてビデオの子画面再生など、より自由度や生産性を高めることができるようになりそうだ、と期待が持てます。ただ、複数のアプリを同時に動かす画面分割のフル機能は、iPad Air 2での対応となるそうです。
Apple Musicについては、カセットテープ、CD、MD、iPod、iPhoneと音楽を聴く道具の進化のなかで過ごしてきた筆者にとっては非常に魅力的ですが、そう思ってくれないユーザーにとっては余り響かないのではないか、と思いました。次回詳しく取り上げたいと思います。
Appleが2度も強調した、大切なこと
コンピュータの世界は、機械学習をいかに活用するかというトレンドが進行しています。前回ご紹介したGoogle I/Oでも「Googleは最大級の投資をしてきた」と機械学習によってコンピュータが持ち始めた知恵の有用性を強調していました(関連記事)。
正直なところ、一般消費者向けのサービスを提供する企業において、真っ正面から立ち向かってGoogleに勝てる企業はないんじゃないか、という凄みを感じざるを得ませんでした。
Appleとて、同じことでしょう。だからこそ、異なるアプローチでユーザーに「選択」を与えているように映りました。
WWDC15の基調講演のスライドで、Appleは同じスライドを2度見せました。
1度目は、Siriが能動的にユーザーの習慣や行動を学習し、先回りして求めていることを見つけ出してくれる機能を紹介する際、そして2度目は新しい「ニュース」アプリが自動的に必要そうなニュースを集めてくれる機能を紹介する際。
匿名で検索や処理が行われ、Apple IDとは紐付かず、学習された結果は他のAppleのサービスやサードパーティーのアプリと共有されない。スライドの最終行には「You’re in Control」、つまり全てあなたのコントロール下にあると書かれていました。
より数多くのユーザーの情報をを統合して究極の正しいパターンへ近づこうとするのではなく、あくまでそのデバイスを使っているひとりひとりに向けて学習が行われ、活用される。そんな「違い」を創り出そうとしているように見えました。
(次ページでは、「選択もまた、ユーザーの手に」)
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