24時間開いているコンビニがないアメリカ
想像もしていなかった天井暖房
今回も筆者の体験的な話ではありますが、少し概念的な話でもあります。
筆者は米国に住み始めてちょうど感謝祭・クリスマス・正月を3回過ごしました。途中、ビザを1度書き換えていますが、住んでいるのは変わらずサンフランシスコから電車で20分ほど北上したところにあるバークレーです。

筆者のアパートのすぐ目の前にあった、我が家での通称「始まりのカフェ」。引っ越したばかりでケータイも家のネットもない頃、このカフェに来て調べ物をしました。2013年末で惜しまれながら四半世紀の営業を終了し、現在は寿司屋になっています
住み始めた当初、ちょうど11月10日頃でしたが、バークレーに夜11時半頃に到着して、荷ほどきをしてお腹が空いたなと思って近くにあったスーパーへ出かけたら、ちょうど12時を回ったところで、閉店した後でした。日本のコンビニのように終夜営業している店なんてありません。
部屋が寒いなと思ってもエアコンはなく、難解で操作方法すら不明なサーモスタットが設置されており、なんとか主電源を見つけたら摂氏ではなく華氏の温度表示。70度が暑いのか寒いのかわからずしばらく待っていてもいっこうに床は暖まりませんでした。
その晩は諦めて布団をかぶって寝たのですが、なんと床暖房ではなく天井暖房だと言うことに数日後気づきました。小学校の理科で、暖かい空気は上へ、寒い空気は下へ、と習っており、暖房は下向きに、冷房は上向きに、というのが当たり前だと思っていたので、まさかの天井暖房だと分かるまで数日を要したのです。
悟りました。経験や学びというのは確かに人を賢くするし、いろいろな察しが付くようになり、そうした知識を活用できるようになります。ある種の喜びでもある。ところが、経験や学びは時として、まったく異なる事象への対応を決定的に遅らせる原因にもなるということを。
アメリカは問題発見天国 問題が多いからこそ
モバイルを使った解決策がたくさん生まれる
筆者は2011年に夫婦で米国に渡りました。妻もよくついてきてくれたと思います。例えばケータイを持つにも、免許を取るにも、クレジットカードを取得して一人前の人間として買い物ができるようになるにも、たくさんの障害がありました。
ちょっとやそっとのことで驚かないこと、“そんなもんだ”精神を持つことで、それなりに楽しむ事ができました。同時に、日本の快適さの中で生きていたことにショックを受ける場面も多かったです。
日本はマクロで見れば、先進国病を先取りする国家として見なされています。財政、人口減少・高齢化、社会保障、一極集中化、地方の疲弊、労働力減少と移民受け入れ、たび重なる大規模自然災害からの復興、人々の幸福度の問題など、今後、途上国を含むあらゆる世界の国々が経験するであろう問題をすでに解決しなければならないタイミングで背負っています。
ところが、日常生活レベルに落とし込んでいくと、おおよそ問題が見つかりにくい場所だ、ということもわかります。
交通システムは発達し、100km以上の通勤もほぼ正確に毎日こなすことができます。街はタクシーであふれ、街路もキレイに保たれ、犯罪は少なく、レストランはチェーン店でもクオリティが高くて充実しており、流通も発達しています。またサービスのレベルは高く、インターネットの速度はモバイルで高速、固定回線だと超高速です。雇用は業種によっては人手が足りない状態になってきました。今挙げたことは、すべてアメリカでは達成されていないものばかりです。
だからこそアメリカでは、インターネットまたはモバイルで、こうした問題を解決するアプリが発達しやすい環境が整っており、UberやYelp、Square、AirBnBといった日本にも進出してくるアプリが登場しているのです。しかしながら、ライフスタイルや法制度など様々な問題から、これらのサービスが日本でうまくやっているという話は聞きません。
言語の問題を翻訳によって取り除いても、そこには文化の障壁があり、往々にして「アメリカでは問題だったかもしれないが、日本では問題ではない」というジレンマにぶつかっているように見受けられます。
(次ページでは、「日常の不便が少ない国から、海外に不便を取りに行く!?」)

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