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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第105回

HTCがなんとか1年ぶりの黒字転換 だが暗雲晴れず?

2014年07月09日 15時00分更新

文● 末岡洋子

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 HTCが1年ぶりに黒字転換を実現した。新フラッグシップ「HTC One M8」に支えられて、3四半期連続で計上していた営業損失をなんとか食い止めた形だ。一方で、直前に発表された中国のXiaomiの業績発表からは、Xiaomiの出荷台数がHTCを超えたことも明らかになっている。新しいベンダーが加わり、端末カテゴリーも広がり、競争はさらに激化しているようだ。

HTCの第2四半期は新型フラグシップ「HTC One M8」の効果もあって、なんとか黒字化

「HTC One M8」効果? 1年ぶりに黒字回復

 HTCが7月3日に発表した第2四半期の業績報告によると、同期の売上は650億600万台湾ドル(約2210億円)。これは前年同期から8%の減少となる。税引後の営業利益は22億6000万台湾ドル(約77億円)、これは前年同期比80%増となった。第1四半期に6280万台湾ドルの損失を計上するなど3四半期連続で続いた損失になんとかストップをかけることができたが、売上高は事前に発表されていた予想範囲の最低ライン。苦しいなかの黒字回復とみてよさそうだ。

 好材料となったのは、3月に発表したHTC One M8だろう。HTC One M8の発売は3月末であることから、第2四半期は実質的にその数値が加わる最初の四半期といってよい。HTCは出荷台数を公開していないが、Digitimesは4月中旬、第2四半期中に300万〜500万台を見込んでいると報じていた。時期を同じくして発売となったSamsungの「GALAXY S5」は最初の1ヵ月で1100万台を売り上げている。

 端末ではHTC One M8のほか、中国で提供するプラスチック版「HTC One E8」や小型版「HTC One mini 2」などのOneシリーズだけではなく、ミットレンジの「Desire」ラインも後押ししたようだ。それに加えて、コスト削減も大きい。同社は製造の一部をアウトソースするなどの対策を行なっており、営業費用も前年同期に153億台湾ドルだったのが今期は117億〜122億台湾ドルと圧縮された。

 2011年をピークに売上が下降線に入り、苦戦が続いてきたHTC。いよいよ回復か、と言いたいところだが、2014年は第2四半期がピークで再び落ち込むとみる向きも少なくない。スマホ市場の競合は激しく、ハイエンドのAndroid端末ベンダーとして知名度を築いたHTCの存在感は薄れている。実際にHTC One M8で勢いを長く引っ張ることはできない。おそらくは、秋に予想されている次期iPhoneで一区切りとなるだろう。

あっさりとHTCを超えてしまったXiaomi

 そのスマホ市場における競合だが、Samsung、Apple、ソニーモバイルといったこれまでのライバルだけではない。中国勢、中でも高性能とデザイン性を特徴とするXiaomiはHTCのターゲットユーザー層と重なることから、無視できない存在だろう。実際、Xiaomiは先に発表した2014年上半期の数値でHTCを超えてしまった

 Xiaomiによると2014年1〜6月、2611万台のAndroidスマートフォンを出荷したという。これは前年同期からなんと270%の増加となる。HTCの2013年の出荷台数は2034万台、Xiaomiは2014年の6ヵ月でHTCの2013年通年の台数をクリアしたことになる。ちなみに、Xiaomiは2014年通年で6000万台のスマートフォン販売を目指している。

 中国市場ではすでにAppleを超えているXiaomiだが、これまでその勢いは中国市場に制限されたものだった。しかし同社はGoogleからAndroidでバイスプレジデントを務めたHugo Barra氏を引き入れ、国外展開を進めているところだ。

 すでに進出しているシンガポールなどアジア諸国のほか、今後Barra氏の出身地であるブラジルなど南米を含む約10カ国に拡大する。Xiaomiの端末と直販モデルが世界のユーザーに受け入れられるのかが試されることになるが、軌道にのれば世界のスマートフォン市場に影響を与えることになるだろう。Strategy Analyticsの調査によると2014年第1四半期のシェアはSamsung(32.4%)とApple(17.5%)の2強に続いて、Huawei Technologiesの4.7%、Lenovoの3.9%となっている。

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