「スマホゲームの寿命はだいたい3カ月。生き延びても半年から1年が関の山だ。ライフサイクルは短くなっている」。ゲーム業界の関係者は、そう肩を落とす。
スマホの登場で、ゲームの「遊ばれ方」は大きく様変わりした。スマホではゲームソフトの売り切りではなく、基本プレー無料のアプリでアイテムなどに課金してもらうビジネスモデルが主流。スマホの浸透に伴うユーザー数の広がりで、「広く薄く課金されるアプリが増えた。平均課金価格500円未満のタイトルが、ゲームアプリ業界の過半数を占めている」とスマホ向けコンサルティング会社の担当者は話す。
ゲームメーカーとしてはできるだけ多くの人に少しでも長くアプリで遊んで欲しいところだが、世界中から次々と新作がリリースされる極端な競争環境に加え、「課金の設計を間違えると、すぐユーザーに愛想を尽かされる」(ゲーム業界の関係者)。つまり常にゲームバランスに気を配りつつ、ユーザーが適度と感じるような課金モデルを維持するという、非常に高度な運営スキルが要求されるわけだ。
そんな中、アプリからユーザーの行動や属性を探り、スマホゲームの運営を効率化するSDK(ソフトウェア開発キット)が脚光を浴びている。韓国発の「5Rocks」だ。同社の佐藤康雄執行役員は「2013年にリリースした新しい製品にもかかわらず、採用企業は2ケタ後半に迫る勢い」と話す。
5Rocksの特徴は、ユーザーを細かくセグメントして分析できる「ユーザーコホート分析」にある。スマホゲームを設計する際に収集したい情報を設定しておけば「ユーザーがどの経路でアプリを見つけ、現在どのレベルで、どんなアイテムを持っており、初回課金はどのくらいの時間で発生し、どのタイミングでゲームから離脱したか、といったデータを入手できる。つまり『ゲームデザイン通りに遊んでもらえているかどうか』が分かる」(佐藤執行役員)
データはリアルタイムで収集されるため、ユーザーの行動に顕著な変化が見られたときアラートで知らせる機能も備える。さらに、特定の相手にキャンペーンや広告といった通知を表示することも可能。「ユーザーの動向に応じて、その場で手当ができる」(佐藤執行役員)のだ。
5Rocksを、リリースする全てのゲームに導入している会社もある。「幻獣姫 モンスタープリンセス」「竜王と勇者アレン」といったスマホ向けタイトルを擁するgumiだ。同社の佐々木智之執行役員は「スマホゲームは世界中のユーザーにリーチできるが、地域によって遊ばれ方も変わってくる。5Rocksを使ってゲームバランスを調整している」と話す。
現在、同社が取り組んでいるのは自社タイトルのIP(知的財産権)の活用。「(IPビジネスを展開するためには)ゲームの寿命を少しでも長くする必要がある。短期的な利益ではなく長期的な運営のために、5Rocksから得たデータは不可欠だ」(佐々木執行役員)
5Rocksが1日に処理するデータ量は100GBを越え、セッション数も月間10億セッションに達する。まさに量が多いという意味で「ビッグ」な「データ」だが、SNS上のつぶやきといった非定型データの分析機能はない。「5Rocksはどちらかといえば、『次のユーザーを予測する』サービスではなく、『ゲームのライフタイムバリューを最大化する』もの。アプリから取れるデータに分析対象を絞っているので、利用料金を安く抑えられている側面もある」(5Rocks佐藤執行役員)
何にでもビッグデータを使うのは大間違い。自社の課題とデータの利用目的をしっかり見据え、ツールを選ばないと意味がないのだ。アスキークラウド4月号では、データとツールの「正しい使い方」を紹介する。