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RX1に見た「強い」ソニー復活の予感

2013年05月24日 16時45分更新

文● 澁野 義一/アスキークラウド

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2013年5月22日に開催されたソニーの経営方針説明会で、平井一夫社長兼CEOは「高付加価値」という言葉を繰り返し強調した。昨年度リリースのソニー製品を見れば、平井氏のソニーが目指す方向性が分かってくる。

 「お客様の期待を超える独自の価値を提供することで、価格競争だけに陥ることのない競争優位のポジションで事業をしていく」。ソニー社長兼CEOの平井一夫氏が、経営方針説明会の壇上で力強く宣言した。コモディティー化が進む家電業界の中で、ソニーは高付加価値・高価格帯戦略へシフトしつつある。

 平井氏は「新生ソニー」を象徴する製品として、高機能スマートフォン「Xperia Z」と高級コンパクトデジカメ「DSC-RX1」を挙げた。Xperia Zは7万7280円、RX1は23万円前後と、いずれも高価格帯の商品だ。

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壇上でRX1を例に挙げた平井氏。発売から半年以上も経っている製品にも関わらず大きく紹介した姿勢に、RX1に賭ける意気込みを感じられる

 注目したいのは、RX1の価格推移。昨年11月発売の商品にもかかわらず、価格.comでの売上推移を見ると発売直後(昨年11月19日)の平均価格が23万5937円だったのに対し、今年5月20日時点では23万2476円と、ほとんど値崩れを起こしていない。

 デジカメ市場は値段が下がりやすく、例えば同じソニーのコンデジ「DSC-WX200」は、発売直後の価格2万4792円(今年1月28日時点)から1万9277円(今年5月20日時点)と、約2割も安くなっていることを考えれば、驚異的な安定感だ。

 値崩れしない理由は、代替可能な競合製品がないことが大きい。コンデジのサイズに35mmフルサイズセンサーを詰め込んだ高い技術力はソニーならでは。「高付加価値・高価格」の極みに振り切った戦略が功を奏していると言える。

 平井氏は昨年4月の社長就任以来「エレクトロニクス事業の再生」を掲げ、「デジタルイメージング(カメラ)」「ゲーム」「モバイル」の強化を謳ってきた。2012年度の連結業績では純利益は2011年度の4567億円の赤字から430億円へと黒字転換したものの、肝心のエレクトロニクス部門については1344億円の赤字になった。

 2013年度はエレクトロニクス事業で売上高6兆円、営業利益率5%、つまり営業利益3000億円の黒字転換を目指すという。

 道行きは険しいが、「デジタルイメージング」と「モバイル」は「カメラグランプリ2013」で大賞を受賞したRX1と、NTTドコモから発売後6週間連続で販売台数1位をキープしたXperia Zという形で結果を出しつつある。そして「ゲーム」についても年末には「PlayStation 4」の発売を控えている。

 かつてソニーは、優れた技術を惜しみなく製品につぎ込み、多少は価格が高くなっても品質でブランドを作り上げた会社だった。平井氏率いるソニーの製品が高価格でも評価され売れている事実は、ソニーブランド復活の兆しと言える。「伝説のSONY」が帰ってくるのは、もうすぐそこだ。

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