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4つの施策でソニーを立て直す 次期CEOの平井氏が会見

2012年02月02日 21時38分更新

文● 小西利明/ASCII.jp編集部

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 ソニーは2日、都内にて業績説明会および新経営体制についての会見を開いた。会見には現ソニー代表執行役会長兼社長 CEOのハワード・ストリンガー氏と、代表執行役副社長にして、4月1日付けで次期社長兼CEOに就任することが決まった平井一夫氏が登壇。ソニーの再生に向けた重点施策について説明を行なった。

代表執行役副社長にして次期CEOの平井一夫氏

代表執行役会長兼社長 CEOのハワード・ストリンガー氏

大幅減収減益なれど峠は越えた?
ソニーの第3四半期決算

 ストリンガー氏と平井氏の会見に先立って行なわれた、同社の2011年度第3四半期(2011年10~12月期)の決算発表は、ソニーが置かれた厳しい経営環境が浮き彫りになった。グループの連結売上高は、前年同期比で17.4%減収の1兆8229億円。営業損益は917億円、純損益は1590億円という厳しい結果となった。同社ではその理由として、先進国の市況悪化、為替相場の円高による損失、そしてタイの洪水の影響を上げている。特に販売価格の下落に苦しんだテレビ部門(売上高ー42.9%)や、水害による新製品投入の遅れなどが響いたデジタルイメージング部門(同ー36.2%)の損失は大きい。

 ただし、数字だけを見ると重症に見えるが、ここには改革のための痛みと言える数値も含まれている。例えば2011年12月に発表された、ソニーとサムスン電子の合弁による液晶ディスプレーパネル製造会社「S-LCD」の合弁解消(サムスンの100%子会社化)による減損634億円などは、価格下落の激しいディスプレーパネル調達に柔軟さを取り戻すことで、今後のコスト低減に寄与するための出費と言える。

 また、携帯電話事業のソニー・エリクソンを子会社化するのにともない、330億円の費用(資産に対する評価性引当金)も計上されているが、これは100%連結子会社化による評価差益が今後加わるため、2011年度通期では損失と相殺されるとしている。デジタルイメージング部門も、水害の影響で発売を延期した商品が今後投入されるなど、全般的に厳しい状況にあることに代わりはないが、おおむね峠は越えたという評価は妥当であると言えそうだ。

4つの重点領域で改革を進める平井体制

 厳しい経営環境の中、4月1日付けで新たなCEOに就任することとなった平井氏は、どのような舵取りでソニーを立て直し、新たな成長を実現するのかについて、集まった報道陣の注目は集まった。平井氏は「詳細は就任後に別途場を設けて」として子細については語らなかったが、基本となる4つの重点施策とそれを実行するに当たっての礎について、力強く語った。

 平井氏の次期CEO就任と同時に、現プロフェッショナル・デバイス&ソリューション(PDS)担当の執行役副社長である吉岡 浩氏に、今後の成長分野に位置付けるメディカル事業(およびイノベーション推進担当)を担当させるほか、PDSにて半導体事業本部長を務める業務執行役員の斎藤 端(さいとう ただし)氏を、新設するチーフ・ストラテジー・オフィサーに任ずる役員人事が発表された。

 平井氏は両氏らや各事業本部長、担当マネージメントと密接に連携して、迅速なビジネス判断を行なうと述べると同時に、CEOが責任を持って決定を確実に実行する「ワンマネージメント体制」を徹底すると述べた。逆に言えば、今まではこれらが徹底されていない面があり、今後の平井体制での改革は実現に向けて厳しく臨む、という意思表明とも受け取れる。

 平井氏は今後のソニーの重点領域として、4つの項目を挙げて説明した。

新体制下でソニーが重点を置く4領域

  • コア事業の強化
  • テレビ事業の立て直し
  • 事業ポートフォリオの改革
  • イノベーションの加速

 これらに共通するのは、差異化技術を強化して製品・サービスの付加価値を高める点と、付加価値を提供できない事業については、他社との協業や撤退を含めた改革を行なうという点である。

 「コア事業の強化」では、ソニーの有するセンサー・光学・画像処理の利点を生かせるデジタルイメージング部門や、ゲーム事業でナンバーワンの地位を固めて確実に利益を出す。さらにそれらの利点を、傘下に収めたモバイル事業へと活用して強化するという。「イノベーションの加速」でも、センサー技術や光学系、画像処理といった差異化技術を、吉岡氏を陣頭に今後の成長分野に期待されるメディカル部門へと投入し、例えば診断装置などへの応用を進めるという。

 一方で「テレビ事業の立て直し」や「事業ポートフォリオの改革」では、CES 2012で発表して注目を集めたCrystal LED Display技術や、有機ELディスプレーといった差異化技術で商品力を高めるという方向性が示された。その一方で、コスト削減のためのリソースの取捨選択や他社との協業、さらにはコモディティー化が著しくて付加価値を提供できない事業分野については、他社との統合や撤退も視野に入れるという、厳しい見直しが行なわれることが示された。

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