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Dreamforce 2012レポート 第4回

Salesforce Chatterのマーケティング担当者に聞く

新サービスChatterboxは「企業向けのDropBox」になる

2012年09月21日 11時10分更新

文● 大河原克行

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 米セールスフォース・ドットコムのダグ・ビューシャ シニアバイスプレジデントが、同社のエンタープライズ向けSNS「Chatter」の戦略についてインタビューに答えた。

米セールスフォース・ドットコムのChatterマーケティング部門担当シニアバイスプレジデントのダグ・ビューシャ氏

 Dreamforce 2012にあわせて、同社では、「Salesforce Chatterbox」を発表した。これは「エンタープライズ環境向けに開発された初のファイル共有ソリューション」で、「企業向けのDropBox」とも称するサービスだ。ユーザー企業から企業向けDropboxのようなファイル共有サービスが欲しいという声が寄せられており、これに応える形で開発したのだという。

 ビューシャ氏の説明によれば、Salesforce Chatterboxは、すべてのファイルを信頼性の高いSalesforce環境で業務内容に即して管理/共有できるサービス。Salesforce Chatterの環境において、顧客やパートナー、従業員とのリアルタイムでのファイル共有があらゆるデバイスで可能になる。コラボレーションとコミュニケーションを変革するツールだという。

 デスクトップからスマートフォン、タブレットまで、デバイス間でのリアルタイムの同期化機能を活用して、ファイルへのアクセスやコラボレーション、共有を実現。ユーザーは外出時や顧客のオフィスなど、いつでもどこからでも必要なファイルへセキュアな環境で簡単にアクセスできるのがSalesforce Chatterboxの特徴だ。

 また、Salesforceプラットフォームを基盤に構築しており、企業が求める信頼性を提供。契約書や財務諸表、製品ロードマップなどの機密性が高いファイルも、Salesforceと同じ信頼性の高い環境で共有し、コラボレーションを実現するという。

 「Chatterboxにより、従業員がどこにいてもファイルを共有できる環境を提供する。ファイルに変更や追加があった場合でも、Chatterフィードを通じて知ることができる。Salesforceを導入している企業においてはDropboxへのニーズが完全になくなり、ドキュメントとファイルのセキュアな共有が可能になる」とビューシャはメリットを語った。

 その上で、「Chatter Boxは、エンタープライズの人たちが利用するファイル共有システムとして提供するものであり、3つの重要な要素がある。1つ目は、さまざまなデバイスを超えて利用できること。2つ目は、ローカルおよびクラウドでのファイルのシンクが可能になること。そして、3つ目は、これを直接埋め込むことができること。エンタープライズクラウドのリーダーであるセールスフォースが持つインフラの上で、セキュリティと信頼性の高い環境を提供することになる」とした。

 ビューシャ氏によると、Chatter Boxは、すでにパイロット導入がいくつか進んでいることを明らかにしつつ、「正式には、2013年前半に提供開始する予定である」と語った。

Chatterはミーティング時間を25%削減の効果が

 一方、ビューシャ氏はChatterに関する現状についても説明した。

 「Chatterはナンバーワンのエンタープライズソーシャルサービス。ビジネスをいかにソーシャル化するかを実現するエンジンでもあり、プラットフォームでもある。現在、17万にのぼるアクティブなネットワークがあり、小さな会社から、10万人の社員を持つ企業にまで利用されている。この数は順調に伸びており、顧客の成功を支えている。
ここでは単に数が多いだけでなく、どんな利用がされているのかということが重要である。多くのエンタープライズソフトウェアプロバイダが、ソーシャルレイヤの中にChatterを組み込んでいる。Chatterの成功の最大の要因は、ソーシャルとビジネスプロセスを1つにしたという点である。これにより、情報へのアクセスの効率性が20~30%向上し、電子メールの数を減らすことができ、会社の中で組織の活動にかかわっているという実感があがったという声が出ている」のだという。

 また同社によると、現在、フォーチュン500社の過半数の企業でChatterが利用されている。そして、導入企業では、Chatterを通じたコラボレーションにより、ミーティング時間が平均25%、電子メールが平均26%削減され、創出される新たなアイデアは平均29%増加しているという。さらに、従業員同士のコネクションで平均31%、従業員のエンゲージメントが平均34%も増加したことが、5500社のChatterユーザーへの調査で明らかになっているという。

 さらに、ビューシャ氏は、Chatterコミュニティに関しても触れ、「Chatterによって企業が変革した事例を知り、この変化を詳しく知りたいという声が増えている。こうしたニーズに応えるためにChatterコミュニティを設置した」とその狙いを語った。

 一方、今年6月にマイクロソフトが企業向けSNS「Yammer」を買収したが、これに対しては、「セールスフォース・ドットコムは、5年以上前からソーシャル分野に取り組んできた。他社はそれを追いかけている状況にある。本当に重要なのは、ソーシャルをやることではない。ビジネスプロセスとソーシャルを組み合わせることで、企業の業績をあげていくことが大切だ。ここが、セールスフォース・ドットコムと他社とが異なる部分である」と、先行するセールスフォースの優位性を強調。

 また、「Chatterはオープンであり、たとえばChatterの大規模ユーザーであるバーバリーは、公開されたAPIを活用してアプリケーションを開発している。ChatterのアプリケーションをSalesforce製品と統合するケースだけでなく、他社プラットフォームの上にビルトした形で活用する例もある。その点でもオープンであることがわかるだろう」とした。

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