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決め手は大幅強化されたHyper-V 3.0

過去最大級を連呼!クラウドOS「Windows Server 2012」が発売

2012年09月06日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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9月5日、日本マイクロソフトは「クラウドOS」を謳う「Microsoft Windows Server 2012」の提供を開始した。製品発表会では、仮想化機構の最新版「Hyper-V」やネットワーク、ストレージの仮想化など製品の特徴が説明された。

クラウドでの利用を前提にした機能拡張

 過去最大級規模という製品のラウンチを進めている2013年度のマイクロソフトだが、この中でWindows Server 2012は、Windows 8、新Officeとともに新しい時代を拓く3大製品の1つとして位置づけられている。発表会の冒頭、挨拶に立った日本マイクロソフト 執行役 マーケティング&オペレーションズ ゼネラルマネージャーのマイケル・ビール氏は、Windows Server 2012を「クラウドOS」と呼び、国内仮想化市場で一位となり(後述)、クラウドリーダーとしてポジションを確立したことをアピールすると共に、開発だけではなくマーケティング・PRも含め、過去最大の投資を進めていくことを宣言した。

日本マイクロソフト 執行役 マーケティング&オペレーションズ ゼネラルマネージャー マイケル・ビール氏

 続いて製品概要について説明を行なった日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部 本部長 梅田成二氏は、「クラウド」「ソーシャルの拡がりと新しいアプリケーション」「コンシュマライゼーション」「データの爆発的な増大」という4点をサーバーを取り巻く環境の変化として挙げた。そして、「なにより重要なのが、サーバーとアプリケーションの関係が変わったこと。今までアプリケーションは特定のハードウェアにひもづいてきたが、現在では必要な時にリソースを呼び出す形に変わっている。利用場所もクラウドに拡がっている」と、仮想化やクラウドが企業システムに深く入り込んでいる現状を指摘した。

日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部 本部長 梅田成二氏

 これに対し、クラウドOSを謳うWindows Server 2012では、オープンな開発環境、一元的なシステム管理、共通のIDとセキュリティ基盤、プラットフォームとしての仮想化などを実現し、最新のニーズに対応する。今回発表されたWindows Server 2012は、前バージョンのWindows Server 2008 R2に比べて、180以上の新機能が追加されているが、特徴となるのはオンプレミスでの利用のみならず、クラウドでの利用を前提としている点だ。これはマイクロソフト自身がWindows AzureをベースにOffice 365やDyanmics CRM Online、Bing、XBOX LIVEなど200以上のクラウドサービスを展開しており、これらの運営実績が反映されているという面も大きいという。

Windows Server 2012で特徴的な5つの機能

 梅田氏がWindows Server 2012の機能強化点として挙げたのは、仮想化の進化、クラウド連携、さらなるコスト削減、事業継続オプション、モバイルワークの5分野だ。各テーマに沿って、代表的な機能を見ていこう。

Windows Server 2012の機能強化点

仮想化の進化

 バージョン3.0になるHyper-Vでは、スペック向上と高速化が図られた。VMごとの仮想CPUは2008 R2の4個から、一気に64個へ、同じくメモリも64GBから一気に1TBになった。これで重いワークロードも動かせるという。同時ライブマイグレーションもOKになったほか、記憶域のライブマイグレーションやシェアードナッシングもサポートする。梅田氏は「今までは次は追いつきます、と話していたが、ようやく他社に比べて一歩先行くスペックになった」と語る。また、従来のHyper-Vは大規模環境のAzure用に拡張を施していたが、Windows Server 2012から両者は共通化されたという。

Hyper-Vのスペック向上

 なお、2012年の第1四半期のIDCの調査では、Hyper-VがVMware ESXのシェアをはじめて追い抜いたという。梅田氏は、「仮想化のために、わざわざお金を出すものではないというコンセプトが浸透した結果」とOS標準機能で搭載されているHyper-Vのメリットが市場に理解されつつあることをアピールした。

クラウド連携

 マルチテナントの実現やオンプレミスとクラウドの連携を行なうため、物理ネットワーク上にアドレスの共通したネットワークを共存できるネットワーク仮想化の機能が紹介された。OS内部でアドレスやVLANの変換を行なう方法のほか、OpenFlowを含むサードパーティのネットワーク仮想化と連携する方法も提供されるという。

サードパーティ連携も可能なネットワーク仮想化

さらなるコスト削減

 容量の異なる物理ディスクにまとめる「記憶域プール」にシンプロビジョニングの機能が追加された。物理容量より大きい仮想ディスクを作成し、あとから物理ディスクを追加できる。また、物理ディスクの利用の70%を超えたらアラートをあげるといた処理も可能になる。さらに同一のデータブロックの重複を取り除く「重複除去」の機能も追加。マイクロソフト社内のファイルサーバーで試したところ、ストレージ使用量の25%を削減できたという。

シンプロビジョニングや重複排除も実装

事業継続オプション

 Hyper-Vのライブマイグレーション機能を用いて、バックアップの仮想マシンを作成する「Hyper-Vレプリカ」が紹介された。定期的に同期し、WAN越しでの利用やマイクロソフトのオンラインバックアップサービスとの連携も可能だという。

ライブマイグレーションをDRなどのに活用するHyper-Vレプリカ

モバイルワーク

 VDI(Virtual Desktop Infrastracture)を実現するプロトコルであるRDPが8.0となり、H.264のコーデックを用いたRemote FXメディアストリーミングによる描画方式になった。Windows Server 2008の画面データの転送や、2008 R2の描画をリダイレクトする方法に比べ、帯域幅を大きく抑えることができる。また、描画データのタイプの違いで描画方法を変えたり、RDPのプロトコルレベルでマルチタッチをサポートするなどの拡張が施された。

モバイルワークを拡張するRDP8.0

マーケットと4つのエディション

 エディションは、Windows Server 2012 Datacenter、同Standard、同Essencials、同Foundationの4つ。DatacenterとStandardの2つは仮想化を前提とした汎用的なエディションで、フェイルオーバークラスタリングやサポートプロセッサ数、メモリ量などは同じ。ただ、仮想インスタンスの使用可能数(Datacenterは無制限、Standardは2つ)だけが異なる。両者ともプロセッサ+CALライセンスモデルを採用する。

シンプルになっった4つのエディション

 EssencialsとFoundationは仮想化権限を持たないエディション。旧Small Business ServerやHome Serverの流れを汲むEssencialsは、クラウドとの連携を容易にするための仕組みが組み込まれており、特別なシェルも用意される。「セットトップボックスのように設置してつなげば、Office 365などをすぐに利用できる」(梅田氏)。

 発売日は、ボリュームライセンスが9月1日、バンドルモデルが本日、そしてパッケージは9月26日になる。ボリュームライセンスの参考価格(Open Business・税抜)は、Datacenterが92万5000円、Standardが17万円。クライアントアクセスライセンス(CAL)は3万2600円となる。

 IDC Japanの調査によると、国内で220万台稼働するx86サーバーのOSのうちWindowsは73.7%を締めているが、バージョンで見ると2010年でメインストリームのサポートが切れたWindows Server 2003が45.6%も残っているという。これら74万台のサーバーをWindows Server 2012へ移行させるマイグレーションの機会が今後大きくなると見ている。こうした導入促進を目的に日本マイクロソフトでは、「ここに“未来”を搭載せよ」キャンペーンを同日スタートさせるほか、9月27日・28日に開催する「The Microsoft Conference」でも製品の特徴を説明するという。

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