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古き良きパソコン時代の終わり? Surfaceの戦略を分析する

2012年06月19日 19時42分更新

文● 西田宗千佳

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 18日発表されたマイクロソフトのWindows 8/Windows RTタブレット「Surface」は、予想された面もあるとはいえ、PC業界に大きな衝撃をもたらしつつある。はたしてマイクロソフトはSurfaceで何を求めたのか。そして今後のPC業界にどのような影響をもたらすのか。ASCII.jpにてモバイルPC・携帯端末の連載を手がけるジャーナリストの西田 宗千佳氏に、マイクロソフトとSurfaceの戦略について分析していただいた。

「PC=水平分業」の常識が終わる?

 マイクロソフトがついに、独自のタブレット端末「Surface」を発表した(関連記事)。そのデザインやスペック詳細については関連記事を参照していただきたいが、Surfaceの発表はマイクロソフトのビジネス戦略にとって、きわめて大きな意味を持っている。

 18日にロサンゼルスで開かれた発表会見の中で、マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏は、「マイクロソフトはハードウエアビジネスをする会社でもある」と語った。確かに、Xbox 360は(日本以外では)好調だし、マウスやキーボードなどでも、マイクロソフト製品を使っている人は少なくない。だが、今回の発表とは意味がまったく異なる。

 そもそもゲーム機は「ソフトをライセンス製造する」ビジネスモデルであり、ハードビジネスはそれを成立させる要素と言える。またPC用周辺機器は独占的なビジネスではなく、ライバルとの競合関係も健全な状態だ。仮にマイクロソフトがそのビジネスを止めても、影響はそう大きくはない。

 だが、Surfaceをマイクロソフトが自らのブランドで製造・販売するという(実際にはODMに製造依頼するとしても)今回のビジネス判断は、今までのマイクロソフトのビジネスモデルの根幹に影響を与える判断である。

 ご存じのように、マイクロソフトはOSの販売を大きな収益源とする会社だ。それが30年近くうまくいってきたのは、ハードの製造販売は他社に任せて、ソフトウェアというコアパーツの開発と販売に特化する、というモデルを堅持してきたからだ。できるかぎり多数のハードウエアメーカーの参加を推進し、ビジネスのパイを広げるため、ハード・ソフトの両面で開発支援を大規模に展開。その厚みによって「Windows PC」という巨大なグループを構成して、成功してきた。これぞ「水平分業の極み」ともいえるのが、これまでのPCビジネスであった。

 マイクロソフトはWindows 8でも、そのモデルを堅持すると見られてきた。だがここにきて、単純に「他社に任せる」のではなく、「自社でもやる」判断を下したことは、「PC=水平分業」という常識の終わりを意味する。

重要さを増すハード・ソフト・サービスの一体設計

 その予兆はあった。マイクロソフトはWindows 8、特にARMプラットフォームを利用する「Windows RT」において、これまでのPCとは違ってスタート段階から広くパートナーを求めず、限定された企業とのみビジネスをする、という判断を下したと伝えられてきた。これは「Windows Phone」でも見られた手法で、端末の品質と内容を安定させるための施策と言われる。

 10年前と今のIT機器の大きな違いは、「商品の出来」にソフトとサービスの関与する割合が大きくなっている点だ。また、独自にハードウエアを開発する企業も以前に比べると減っている。巨大EMS、具体的にはFoxconnやQuanta、Wistronといった企業に開発から製造までを依頼する企業が増えていて、実質的な製造メーカーは減っている、という事情もあるだろう。水平分業ではあるがプレイヤーの数は減っているわけだ。

 そのような中で、漫然とハードウエアを作っても差別化はできないし、製品のクオリティーも上がらないし、製品投入のスピードも上がらない。ソフトやサービスとの一体化を進め、「どこでもできるようでいて、実は作れない」製品を作ることが、ヒットさせる秘訣になっている。この代表例がアップル製品であり、典型的な成功例がiPadだ。Androidのタブレットがなかなか品質でかなわないのは、グーグルのふがいなさだけでなく、アップル流「一体設計」の良さがゆえでもある。

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