ストレージの未来が見える!EMC World 2012レポート 第1回
「EMC World 2012」基調講演レポート
SFの世界が現実に!EMC CEOが語る「変革」の姿とは?
2012年05月22日 09時00分更新
5月21日、米国ラスベガスにおいてEMC World 2012が開催された。プライベートとしては未曾有の規模といえる1万3000人以上が参加するイベントの基調講演で、米EMC 会長兼CEOであるジョー・トゥッチ氏は大聴衆を前に、ビジネスと顧客自身の変革を訴えた。
必然的なハイブリッドクラウドへの移行
米EMC 会長兼CEOであるジョー・トゥッチ氏の基調講演は、「TRANSFORM(変革) IT+BUSINESS+YOURSELF」というスローガンからわかるとおり、同社が実現するクラウドやビッグデータのソリューションを通して、ビジネスひいてはYOURSELF(顧客やパートナー)自身への変革を促すというテーマだ。
トゥッチ氏の講演はレガシーのコンピューティング環境からクラウドへの移行を訴えるところからスタートした。トゥッチ氏は、メインフレーム時代、クライアント/サーバー時代のコンピューティングの特性を説明しながら、近年のクラウドへの移行により、自動化の推進や大幅なコスト削減が実現され、ビジネスも大きく変革されると説明した。一方で、「20社以上あったミニコンやメインフレームのベンダーは、今やIBMだけになっている」(トゥッチ氏)と述べ、クラウド時代にはベンダー側の生き残りも熾烈になっているという認識を示した。
これに対して、同社は数年前からクラウドへの注力を進めており、プライベートクラウドや仮想化を前提としたストレージのほか、サービスプロバイダー向けの製品を投入している。とはいえ、「パブリック、プライベートどちらがよいかという話は、くだらない議論だ。ピークになったらパブリッククラウドの容量やキャパシティを利用すればよい」(トゥッチ氏)と、ハイブリッドクラウドの構成を推奨した。そして、このハイブリッドクラウド環境に最適な製品群も今回大幅に強化したということで、基調講演後半の新製品概要の紹介に期待を持たせた。
ビッグデータを競争力強化に利用せよ!
また、トゥッチ氏はクラウドと同じく同社が注力するビッグデータの可能性についても言及した。今までユーザーは何年も構造化データを扱っていたが、ここ数年で非構造化データが5~7倍の勢いで伸びており、今後は企業も両者を効率的に利用する必要があると説明。「ものすごい量のデータを競争力強化のために活用できる。これが過去と大きく違うところだ。ユーザーにとってもチャンスとなる」(トゥッチ氏)と述べた。
こうしたビッグデータの活用として、同氏はスマートフォンなどを用いた新しい買い物の仮想事例を見せた。「私が子供の頃は、新聞についているクーポンを探した」(トッチ氏)が、今では過去の購入履歴を分析することで、顧客が実店舗に来店した際にスマートフォンに対してクーポンを送信できる。また、プロフィールを基に「塩辛いお菓子が好きな人にビールを勧める」といったリアルタイムなリコメンドなども可能だ。同氏は、「SFのようなことが現実世界で実現できる」とビッグデータによるビジネスの革新に高い期待を示した。一方で、今後はデータ解析を行なうデータサイエンティストのような人材の育成が必要になると強調した。
さらに同氏はクラウド、ビッグデータに並ぶ同社のソリューションの柱である「TRUST」についても訴求した。システムが集約されていた従来のコンピューティング環境では、「スタティックなセキュリティ」で問題なかったが、個人が特定され、リアルタイムに行動分析されるクラウド環境では、「ダイナミックなセキュリティ」が必要になる。これに対して、同社ではRSAブランド製品を拡充していくほか、セキュリティの機能自体を製品に組み込んでいくと説明した。
その後、同氏は競争力の源泉ともいえるR&Dについて、「売り上げの11%を製品開発に当て、毎年20億ドルで買収を行なっている。これも単によい製品ではなく、最高の製品を作るためだ」と言及。こうして生まれた製品や技術が「弊社の売り上げアップではない。みなさんの成功に寄与できることが、われわれのフォーカスだ」とアピールし、講演を締めた。
1990年代後半には純粋なストレージベンダーだった同社は数多くの買収や技術開発などを経て、インフラ分野のみにとどまらない幅広い製品やサービスを提供する総合的なITベンダーになった。こうした一連の施策をリードしてきたトゥッチ氏だけに、EMCの成長ぶりを見よとばかりに、「変革」をアピールしていたのが印象的であった。
トゥッチ氏に続いて行なわれたEMC インフォメーションインフラストラクチャ製品 プレジデント兼COOであるパット・ゲルジンガー氏の基調講演、そしてプレスセミナーで披露された新製品に関しては、引き続きレポートする。
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