イギリスの経済紙であるFinancial Times(FT)が6月初め、HTML5モバイルアプリ「FT Web App」を公開した。アップルのApp Storeを回避するもので、これから読者はApp StoreではなくFTのサイトに直接アクセスすることになる。開始後2週間半で20万近いユーザーを獲得するなど、現時点でチャネル変更は成功しているようだ。HTML5アプリはFacebookも開発中といわれており、アプリストア一辺倒だったモバイルアプリの流通トレンドに変化が起きそうな気配だ。
AppleのApp Storeから“脱獄”して
HTML5アプリをリリースしたFinancial Times
FTによると、これまでのモバイルアプリのダウンロード数は約22万4000だったというから、HTML5アプリはまずは成功といっていいだろう。
FTは有力紙の中でも最初からコンテンツの有料配信モデルを成功させるなど、IT戦略に定評があり、HTML5アプリの開発は2010年から進めてきたという。そうしてできあがったアプリを公開したのは、ちょうどAppleがアプリ内サブスクリプションを可能にした後となった。
Appleはサブスクリプションサービスを開始した2月当初、Apple側が3割の取り分を維持する一方、独自にサブスクリプションを提供するコンテンツプロバイダーに対しては、アプリ内で提供するよりユーザーにとって利益がある条件(料金)で提供してはならないなどの制限を設けたことから、一部で不評を買った。
すでに地位を確立しているコンテンツ提供者にとって
アプリストアは必要なのか?
6月に開催されたモバイルイベントで、FT.comのディレクターであるRob Grimshaw氏の話を聴く機会があったのだが、氏はオフライン/動画/自動アップデートといったHTML5アプリのメリット以外に(以上に?)Appleのコントロールを避ける狙いを示唆した。
流通チャネルとしてのアプリストアの重要性を認めつつも、Appleの規約に加え、顧客データが自社の手元にないためにマーケティングが難しいこと(検索エンジンを使ったマーケティングができないとも述べていた)、多様なプラットフォームに対応するための開発コストなどの負担が小さくないことなどを挙げた。
HTML5に移行することで、アプリストアでのプレゼンスがなくなるが、そもそもアプリストアでは上位に入らなければユーザーに発見されないなどのデメリットもあると言い、最終的には「(アプリストアのない)PCでのウェブの世界と同じ条件だ」と述べた。
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