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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第102回

グラフィック専用メモリーの進化と不透明な今後

2011年05月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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DDR SDRAMをベースに
グラフィックスに特化したGDDRが登場

 どうしてこういう特殊メモリーは受け入れられなかったのか? まずデュアルポートメモリーは高価だった。しかも標準規格ではなく、特定のメモリーベンダーのみが供給する製品だったため、カードベンダー側から供給体制に不満が出てきたという理由が挙げられる。高価なメモリーを使うと当然製品価格も跳ね上がるから、商品の競争力としては不利になる。

 またこうした特殊なメモリーは、当然ながら汎用品のような短い期間では、動作速度が上げられない。グラフィック用メモリーは高速に動作しさえすれば、デュアルポートや描画機能がなくてもトータルの性能は上がる。多くの機能を搭載した、ただし動作速度は遅い専用メモリーを使った場合よりも、機能は最小限ながら高速な汎用品を使ったほうが、性能が出てしかも安い。そうなると専用品を使うメリットはない。

 こうした事情により、しばらくはグラフィックスカードのメモリーにも、PC用メインメモリーであるSDRAMやDDR-SDRAMが流用されていた。しかしそのうちに、「汎用品のSDRAMでは性能が足りない」という事態になってきた。時期的にはグラフィックコントローラーが「GPU」と呼ばれるようになる前後だったと記憶しているが、ようするに描画性能が急速に伸びる一方で、この伸びに汎用のSDRAMやDDR-SDRAMでは追いつかなくなってきたからだ。

 しかし、かつてのように完全な専用品を投入すると、VRAMやWRAM、SGRAMの二の舞になりかねない。そこで考え出されたのが、DDR-SDRAMをベースにした、より高速に動作するグラフィック専用メモリーの開発である。PC用のメインメモリーと異なり、グラフィックスカードのメモリーはユーザーによる増設の必要はないから、DIMMを経由する必要がない。容量よりも速度が重要だから、ひとつのメモリーバスに複数個のメモリーチップがぶら下がるケースを考慮する必要もない。また、信号電圧や消費電力が多少高くても、それほど設計は面倒にならない。

 こうした条件により、内部構造はDDR-SDRAMと同じながら、より高速なメモリー製品をラインナップすることが可能になった。これがGDDRである。ちなみに、電子部品規格の標準化団体「JEDEC」などの正式名称では、「GDDRn SGRAM」と呼ぶことになっている(nは2~5。GDDR1に関してはGDDR SGRAMと呼ぶ)。

 GDDR系と、元になったDDRの関係をまとめたのが図3である。

図3 DDRとGDDRのロードマップ

GDDR1

 1998年3月にJEDECで標準化された。基本的にはDDR-SDRAMと同じで、2.5V動作で最終的には1Gbps程度の転送速度を持つ製品が登場した。チップのバス幅は32bitなので、チップ1個で転送速度は最大4GB/秒(32Gbps)。ただし、標準化完了から実際に搭載製品が出てくるまでの間にはタイムラグがあり、出回るようになったのは1999年後半~2000年にかけてだったと記憶している。

 GDDR系はGDDR1に限らず、比較的長期間使われる傾向がある。GDDR2/3が安く出回るようになってくると、価格面でGDDR1を使うメリットが薄れてきたこともあり、2005年頃には搭載製品がほとんどなくなった。ちなみにGDDR1の信号電圧は2.5Vだが、内部のDRAMセルは2.5~2.8Vで駆動されていた。

GDDR2

 GDDR1がDDR-SDRAMをベースとしていたのに対して、GDDR2はDDR2-SDRAMをベースとしたもの。こちらは2003年6月にJEDECで標準化された。転送速度は最高でも1.6Gbpsと、GDDR1に比べてそれほど高くなっていないが、これはGDDR3が比較的早く立ち上がったことに起因する。

 GDDR2では信号電圧が1.8Vに下げられたが、内部の動作電圧は2.0~2.5Vに設定されている。ちなみにこの内部の電圧だが、当初は130nmプロセスあたりを使っていたこともあって、2.5Vでないと動作しなかった。後期になると90nmあたりまで微細化が進み、2.0Vで動作するようになったという話で、これはGDDR1やGDDR3以降も大体似たような傾向にある。

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