1台のパソコンを最大10人で共有できるという触れ込みで、昨年3月に発表された「HP MultiSeat Computing」(以下MultiSeat、関連記事)。「MultiPoint マネージャー」を採用し、複雑な管理の知識なく使え、初期導入コストも大幅に低減できる点がウリだ。
その使い勝手やパフォーマンスに関しては、過去記事でも紹介済み。SOHOや教育機関などをターゲットにした製品であるが、国内でもまとまった規模な導入事例が出てきている。ここでは約100台(世田谷キャンパスだけで97台)の製品を導入した日本体育大学の新図書館を紹介しよう。
パソコンの台数を倍にしたい、ただし低コストで
現在日本体育大学の世田谷キャンパスは、校舎や体育館の全面的な建て替えが進行中。まだ建設中の段階ではあるが、新図書館は一足早く、昨年7月にオープンした。
これに伴い図書館ののべ床面積も1167m2に対して、2013m2と倍程度に増床。座席数も275から355へと増加した。同時に旧図書館の利用者から上がっていた「パソコンの台数が足りない」という要望にも積極的に取り組んだ形だ。
パソコンの台数を倍に増やすという決断に踏み切ったのは、オープンまで2ヵ月となる5月。
とはいえ期間が短く、機種選定には難儀した。通常のパソコンでは初期導入コストと納期に関する負担が大きく、決定打にはなりえなかった。HP MultiSeat Computingに白羽の矢が立ったのは、そんな状況下でのことだ。
「ほかに選択肢がなかったという面がある。シンクライアントも検討したが、コスト高となりインフラへの要求も高くなる──。そんな中、あるニュースサイトでMultiSeatの情報を知った。すぐにHPのウェブサイトを見て、電話で問い合わせた」(管理部電算課 荒井俊嘉氏)
導入までの経緯を「素人的な方法」と表現した荒井氏だが、代理店経由で発注した製品は短期間に納入され、7月の開館に間に合わせることができた。
MultiSeatの親機は約15台購入。これに7~8台の子機を接続している。導入コストは、一般的なパソコンを入れた場合の1/5程度に圧縮できたという。運用コストの低さも特徴だ。親機については通常のパソコンと同様、オプションの保守サービスに契約しているが、子機に関しては故障しても7000円程度と安価なこともあり、ストックとして何台か保持しつつ、壊れたら交換するというアプローチだという。