48歳の「歌姫」Susan Boyle女史のシンデレラストーリー
YouTubeでの動画再生が3000万回を超え、いま各方面で話題のSusan Boyle女史。そのルックスからは想像できない美声で世界中を感動させたわけだが、それがイギリスの「スター誕生」とも言うべきオーディション番組「Britains Got Talent」のワンシーンだったことは興味深い。
もうすぐ48歳のBoyle女史。無職で、未婚で、キスもされたことがない。審査員の「目標にする歌手は?」の問いに「(イギリスの有名なミュージカル歌手)Elaine Paigeみたいになりたい」と答えて失笑を買う。しかし歌い終わってみれば客席は総立ち、もちろん予選は楽勝で通過だ。
彼女が歌ったのはミュージカル『Les Miserables』の『I Dreamed a Dream』。歌う本人のキャラクターと、歌詞の内容が絶妙にシンクロする演出効果満点の選曲だ。まだ決勝まで勝ち残ったわけでもないが、すでに現代のシンデレラストーリーは勝ち得ただろう。
この動画が注目を集めたのは、Boyle女史のルックスと歌唱力の落差という、強力な意外性にアクセントを置いた番組の演出。だが、話題になった理由はYouTube自体の「そこに登場する歌手やタレントを★マークで評価する」性質による。言ってみればYouTubeは年中オーディション番組をやっているようなものだ。
YouTubeの人気は「歌ってみた」から生まれている
実はYouTubeの初期から人気を集めていたのはシロウトによる「歌ってみた」系の動画だった。Boyle女史のオーディション番組の動画も、大きな括りで言えば「歌ってみた」のようなものと言えるだろう。
たとえばYouTubeで最初にブレイクしたのは、オランダの18歳の女の子Esmee Dentersだった。彼女は2006年から「歌ってみた」動画の投稿を始めたわけだが、人気の理由は極めてシンプルで、見ての通りの歌の上手い美少女だったことだ。
そして去年、Justin Timberlake(Janet Jacksonの「ポロリ事件」のとき一緒に歌っていた、あの人)のレーベルからついにデビューを飾った。これは動画サイト時代のシンデレラストーリーとして、後世まで語り継がれるエピソードになるだろうと思う。
そんな歌ってみた動画が面白いのは、歌は原資ゼロで誰にでも始められること、人の感応性の高い部分に訴える表現であること。音楽の知識や嗜好はさておいても、誰でも上手い歌は心地いいわけなのだ。
だが国内に目を転じてみると、日本でシンデレラストーリーを演じたのはおばちゃんや美少女ではなく「初音ミク」だった。
この連載の記事
-
第12回
トピックス
コンピュータ言語の「演奏」に見る、未来のライブ像 -
第11回
トピックス
レスポールの死と、初音ミク「白いクスリ」削除問題を考える -
第10回
トピックス
ビバ☆ヒウィッヒヒー、そのアッサリすぎた偉業について -
第9回
トピックス
ロックバンドからニコ動にシフトした、キャプミラPの生き様 -
第8回
トピックス
iPhoneでメロトロンが弾ける「マネトロン」作者に聞く -
第7回
トピックス
なぜ我々は「電子工作!」に燃えてしまうのか? -
第6回
トピックス
なぜ我々は「けいおん!」に萌えてしまうのか? -
第5回
トピックス
地デジカ騒動とYouTubeリミックス動画に思うこと -
第4回
トピックス
「忌野清志郎は死んでない」に考える、動画サイトとロックの関係 -
第3回
トピックス
ウクレレは最強のネット楽器か? -
第2回
トピックス
初音ミクよりスゴイ「UTAU」って何だ? - この連載の一覧へ