米マサチューセッツ州の住宅設備メーカー「トトロジック」が、ほぼ電力を使わないコンピュータの開発を行なっているという。電力の代わりになるのは、大量の「水」。CPUなどの省電力とは、まったく次元の違うアプローチなのだ。
同社の説明によれば、1つの水槽に注水口を2つ、排水口を1つ用意した単純な装置を多数用意して組み合わせることで、電力を使ったコンピュータと同じ計算結果を得られるという。
ただし、この開発はまだ端緒についたばかり。最大の課題は、装置が巨大になってしまうという点だ。上記の装置を大量に配置する必要があるため、実験には建物が必要になってくる。しかしそのためだけの施設を作るには、いかに将来性のある実験とはいえコストがかかりすぎてしまう。
そこで同社が目を付けたのは、新築計画のビル。2007年――リーマンショック前の米国が、まだ住宅バブルに浮かれていた頃だ。幸いだったのは、トトロジックが住宅設備メーカーであること。新築ビルの配水管工事を受注した同社は、下水管を演算回路状に組み合わせ、エココンピュータの実験施設を作り上げることを施工主に提案。受け入れられたという。
「私がトイレを済ませてビルの外に出ると、白衣を着た研究者が抱き合って喜んでいたんです。彼らは私を見つけると、花束をプレゼントしてくれました。事情を知らなかったので、トイレを使っただけなのに何故? と思いましたね」と語るのは、このビルのトイレで用を足した人第一号のロバート・アイナックスさん。
同ビルでの実験では、電卓ほどの演算処理もできていない状況だが、トトロジックによれば、たとえば六本木ヒルズに匹敵するビルならば、さらに演算能力が高まるという。最終的には複数のビルの配水管を地下で組み合わせ、大規模な実験を行なう構想も、同社は持っている。
現在は、エコの観点から、ヨーロッパをはじめCO2排出権取り引きが取り沙汰されることが多いが、近い将来「排泄権」といった言葉が世間を賑わせるかもしれない(4月1日)。