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【短期連載】アップル&ソフトバンク提携の可能性を探る――第3回 iPod携帯を起爆剤としてインパクトを与え続けられるかが鍵

2006年05月23日 23時26分更新

文● 編集部

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木村氏

一部報道機関は13日、「米アップルコンピュータ社とソフトバンク(株)が日本における携帯電話事業で提携する」と報じた。第1回の津田大介氏、第2回の林 信行氏に次いで、最終回となる今回は木村融人(きむらみちと)氏を取材し、アップル参入の可能性や携帯電話業界の事情をうかがった。



第3回 木村融人氏
IT専門の調査会社 IDC Japan(株) コミュニケーションズ シニアマーケットアナリスト。携帯電話やデバイスなどを調査/分析している。

[ASCII24] ソフトバンクとアップルが提携して“iPod携帯”を作る可能性は?
[木村氏] 100%確定ではないが可能性はある。今年の11月1日までに始まる番号ポータビリティは、携帯電話業界にとってここ数年でいちばんの勝負時になる。各キャリアは、既存ユーザーを囲い込むための新規サービスを始めたり、他社から顧客を奪う魅力的な新機種を大量に投入してくるだろう。

902i
“FOMA 902i”シリーズ
今が旬のiPodが携帯電話に進出すれば、キャリアとして大きく注目される。話題性は非常に重要で、例えば、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ(ドコモ)の“FOMA 902i”シリーズの売上にはジャニーズのCMが大きく影響している。豊富な機能や通話品質以外の要素も必要だ。

番号ポータビリティのタイミングを狙って年末までにiPod携帯を出荷するためには、すでに端末の製作に着手していなければならない。部品メーカーを調べると、パネル調達を打診している動きが見られる。

[ASCII24] そんなに短期間で携帯電話機が作れるものなんでしょうか?
[木村氏] あと半年で端末を出荷するのはスケジュール的に難しい。もし年末にiPod携帯を間に合わせようとすれば、既存の携帯電話端末にアップルの音楽機能をのせた商品(PC連携商品)になるのが現実的だろう。ゼロから立ち上げた機種は、その次の3月の春商戦に第2弾として出てくるかもしれない。

ただし、iPodのソフト部分を完全に携帯端末に移管するには、莫大な工手数が必要となる。従って、駆け込みでiPod携帯を作って、中途半端な商品を出すのはかえって逆効果だ。特に日本は品質を重視するため、製造を海外の工場に委託するのであれば、丸投げではなく、日本の技術者を現地に送り込んで製作する必要がある。

[ASCII24] 参入が本当だとしたらアップルの狙いは?
[木村氏] ひとつは携帯音楽プレーヤー以外でiPodファミリーを増やすということ。



6月下旬に発売予定のウォークマンケータイ『W42S』
ソニー(株)の携帯音楽プレーヤーは“ウォークマン”だけでなく、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(株)の携帯電話機もあり、しかも携帯電話機が売れている。アップルはiPodファミリーとしてnanoやshuffleも作っているが、それ以上の発展を考えると携帯電話機への進出も視野に入れるだろう。

もうひとつは携帯電話のコンテンツビジネスに参入するという理由が考えられる。日本は欧米圏と比べると、ユーザーがデータ通信に多額の費用を費やしている。携帯電話は、海外では通話に使われることがほとんど。通話は1人月平均5000円くらい利用するが、データ通信は500円ほどである。これに対して日本ではデータ通信に毎月2000円も支払っている。

そのコンテンツダウンロードの中で、大きな二つの柱となっているのが音楽とゲームだ。実は携帯電話機で音楽を1曲丸ごとダウンロードさせるという配信サービスが成功しているのは日本を含めたごく一部の地域に限定される。iTunesで扱っている音楽やビデオを売ることも視野に入っているだろう。

[ASCII24] アップルは過去に海外で米モトローラ社と一緒にiTunes内蔵の『ROKR(ロッカー)』を作りましたが、この評判はどうだったのでしょう?
[木村氏] コンセプト自体は悪くなかったが、実は不評に終わっている。先ほども触れたように、欧米では通話がメインで、ユーザー側に携帯電話機で音楽を聴くという考え方が根付いていない。

加えて価格が日本円で3万~4万円と高かったこともあって、モトローラという会社の規模から考えると、携帯電話ラインアップの主力に据えるという製品ではなく、その他大勢の中のバリエーションのひとつとして終わってしまった。(次ページに続く)


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