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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第31回

テレビ局はなぜ負けた? 津田氏に聞くロクラク事件

2009年02月16日 09時00分更新

文● トレンド編集部、語り●津田大介(ジャーナリスト)

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「その使い方なら権利者に不利益はない」

── なぜ裁判所の判断が変わったのでしょう?

津田 例えば、動画共有サービスやファイル交換サービスのように、不特定多数の人間が著作権を侵害するファイルをアップできるようなサービスの場合であれば、運営のやり方によって、管理運営者の責任が問われることは致し方ない面があります。

 しかし、ロクラクやMYUTAのように、不特定多数へ公開されるわけでなく、完全に個人が私的複製の範囲内で楽しむためのサービスであれば、私的複製と同じように解釈すべきというのが今回の判決なんだと思います。「その使い方なら権利者に不利益はないだろ。常識に考えて」ということを社会状況も鑑みて、極めて常識的に判断した結果だと思います。

 もっとも、今回の判決はカラオケ法理を「否定」したものではありません。あくまでカラオケ法理の無制限な拡張に対して釘を刺したということです。実際、判決文にはこのように書かれています(判決文のPDF)。


 本件サービスにおいて、子機ロクラクを自由に操作し、好みのテレビ番組につきタイムシフト視聴を実現しているのは、利用者のみであり、子機ロクラクを操作するかしないかは、すべて利用者の意思に委ねられているのであるから、カラオケ法理を無制限に拡張して、控訴人が主体的に録画・視聴に関与しているとの評価を行うことは、擬制に過ぎ、不当である。(10ページ)

 なお、クラブキャッツアイ事件最高裁判決は、スナック及びカフェを経営する者らが、当該スナック等において、カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲が録音されたカラオケテープとを備え置き、ホステス等の従業員において、カラオケ装置を操作し、客に対して曲目の索引リストとマイクを渡して歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による演奏を伴奏として他の客の面前で歌唱させ、また、しばしば、ホステス等にも、客とともに又は単独で歌唱させ、もって、店の雰囲気作りをし、客の来集を図って利益を上げることを意図していたとの事実関係を前提に、演奏(歌唱)の形態による音楽著作物の利用主体を当該スナック等を経営する者らと認めたものであり、本件サービスについてこれまで認定説示してきたところに照らすならば、上記判例は本件と事案を異にすることは明らかである。(33ページ)


 あくまでサービスの利用態様によって、カラオケ法理が適用できるかどうかが変わる。そんな当たり前のことを示したとも言えるのですが、改めて判決文にこう書かれたことには大きな意味があると思います。判決文には類似のさまざまな著作権侵害裁判の事例に対する細かい分析も書かれているので、この問題を考える上での貴重な資料になると思います。

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