【短期集中連載】新聞はネットに飲み込まれるか? ― 最終回
信頼できる「場の空気」はいかにして生まれたか? 「発言小町」に見る読売新聞社のCGM観(後編)
2007年12月10日 09時00分更新
「投稿を削除したい」「書き直したい」との注文も
投稿はすべてチェックするが、根本氏によれば、なんとスタート当時は投稿者にいちいち文章を直してもらったりしていたそうだ。実に牧歌的な世界である。ところがコーナーを作って日を追ううち、事態は思わぬ急展開を見せる。
「あっというまにコーナーが知れ渡り、どんどん投稿がくるようになったんです。今では多い日は2000や3000はきますよ。もう『文章を手直ししてください』なんて、もちろんできません(笑)」
今では書き込みが殺到し、スタッフはてんやわんやだ。だがそれでも読者からはいろんな「注文」がくる。
「すでに投稿した文章のここをこう直したい、とか(笑)、自分の投稿にきた反響が大きすぎるから削除してほしい、というのもあります。『やっぱり削除してください』というのは、平均すると週に1回ぐらいはありますよ(笑)。ただ、その時点ですでにレスがたくさんついていると、なかなか判断がむずかしいんです」
![]() |
|---|
根本氏によれば、読者からのこのテの声はけっこうくるらしい。
「あんなことを言わせていいのか? とか、これは『女尊男卑』じゃないか? などという抗議もあります。でも実際に見てみると、このくらいどうってことないんじゃないか? というレベルだったりするんですけどね」
それは客観的な事実なのか? が問題に
限られたテーマで募集するわけではないから、『発言小町』には実にいろんな書き込みがある。運営側が頭を悩ますものも少なくない。
「例えばご自身が飛行機に乗った体験をもとに、『A社がいい、B社はやめたほうがいい』などという書き込みがきたりします。これはその人の主観で書いていますから、ユーザー的には役に立つ情報かもしれませんが、新聞社としてはそれを載せるわけにはいかないだろう、と。読売新聞社が投稿に書かれた内容を、オーソライズしたかのようになってしまいますから」
ユーザー個々の体験にもとづく口コミはネット特有の「お役立ち情報」であるが、新聞社としては掲載の可否はケース・バイ・ケースだ。
「例えばあくまで自分の意見として、『私はこう考える』という思考の内容を書くなら認められるべきだと思います。ですが裏付けがないのにあたかも客観的事実であるかのような書き方をしているなら、書き方そのものに問題がありますね」
ユーザーがコンテンツを作るCGMを新聞社が採用する場合、こうしたさまざまな難問が出てくる。これらへの方策は、発言小町を続けていくうち培ったものだ。
「あのコーナーがここまで成長したのは、われわれのやってきたことがまちがってなかったということだと思います。発言小町には、場に対する信頼感があるんです。だからこそ投稿者がふえるんですね」
スタートした当初は、「新聞社がCGMをやる場合にどんな課題があるか? などは考えてなかった」と根本氏は語る。
その意味ではまさにトライ&エラーで進んできた道であり、発言小町はそんなノウハウの蓄積の結晶であるといえそうだ。
松岡美樹(まつおかみき)
新聞、出版社を経てフリーランスのライター。ブロードバンド・ニュースサイトの「RBB TODAY」や、アスキーなどに連載・寄稿している。著書に『ニッポンの挑戦 インターネットの夜明け』(RBB PRESS/オーム社)などがある。自身のブログ「すちゃらかな日常 松岡美樹」も運営している。
この連載の記事
- 第9回 信頼できる「場の空気」はいかにして生まれたか? 「発言小町」に見る読売新聞社のCGM観(前編)
- 第8回 「紙とネットの融合」にトライする日本経済新聞社(後編)
- 第7回 「紙とネットの融合」にトライする日本経済新聞社(前編)
- 第6回 紙とウェブを使い分ける朝日新聞社の論理(後編)
- 第5回 紙とウェブを使い分ける朝日新聞社の論理(前編)
- 第4回 「紙はウェブより上」であるべきか? 毎日新聞が既成概念を破壊する日(後編)
- 第3回 「紙はウェブより上」であるべきか? 毎日新聞が既成概念を破壊する日(前編)
- 第2回 「新聞の自殺」とまで言われたタブーに挑む産経グループ(後編)
- 第1回 「新聞の自殺」とまで言われたタブーに挑む産経グループ(前編)
- この連載の一覧へ















