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【PanaSpot特別企画】松下電器産業“神戸工場”レポート

松下パソコン生産拠点にLet'snoteの“こだわり”のルーツを見た!?

2004年11月01日 00時00分更新

文● 編集部 内田泰仁

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現在国内で販売されているパソコンの多くは海外での製造が中心となっているが、松下電器産業(株)の“Let'snote”シリーズは、現在でも国内拠点での製造を続けており、製品パッケージや宣伝用カタログなどには“Made in 神戸”のロゴが入っている。今月6日、同社は“Let'snote”シリーズをはじめとする同社のパソコン本体の製造および修理の拠点となっているパナソニックAVCネットワークス社システム事業グループITブロダクツ事業部プロダクトセンター(通称“神戸工場”)を記者向けに公開し、開発/製造/修理サポートを担当する同社スタッフによる事業説明なども合わせて行なった。今回は、いよいよ10月29日より開始された“Let'snote”秋モデルの発売に合わせて、その模様をレポートする。

神戸工場の概要

神戸工場のフロア構成

神戸工場の概要を説明するパナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部プロダクトセンター所長の藤田尚住氏

同社プロダクツセンターは、山陽新幹線・新神戸駅から地下鉄で40分弱の西神中央駅近郊に位置する。1990年にワープロ工場として竣工、その後1991年からパソコンの生産を開始し、同社グループ内の組織改変に伴う所属事業部変更などを経て現在に至る。現在のスタッフは総勢400名で、“Let'snote”“TOUGHBOOK”“Panacom LC”各製品の製造(基板への部品実装/組み立て/ソフトウェア導入など)や修理サポートなどを行なっている。また、大阪府守口市に拠点を置く開発部門とも密に連携を取る体制が構築されており、開発工場としての役割も負っている。

工場の構成は大まかに、基板への部品実装フロア、ボード組み立てフロア、最終的な組み立てから完成検査までを行なう完成工程フロアと、サポート/修理/個別案件対応フロアなどとなっている。同工場の生産スタイルの目的は、“スピードアップ”“対応力アップ”“品質アップ”の3点に集約される。そのため、部品実装やボード組み立てなどの自動化されている工程以外の人手が加わる工程は、“ラインセル”または“一人セル”といったセル方式による生産を中心に行なっている(製品によってはライン生産方式にも組み替え可能とのことだが、現状生産しているモデルは、すべてセル生産方式が採られていた)。これにより、生産リードタイムの向上とカスタマイズ対応力の強化、製造スタッフの意識およびスキルの改革による品質向上を実現しているとしている。

このような同工場での生産をバックで支えるものとしては、“KISSシステム”と呼ばれる管理システムがある。このシステムは、実装から完成、包装、さらには出荷後の修理サービスまでの同工場で行なう全工程において、機種品番とシリアルナンバーによる製品品質情報/履歴を保存し、ネットワークによる情報の共有を行なうというもの。不良の兆候を発見し自動的にその兆候を通知する機能を持ち、品質を保証するための“履歴書”の役割も果たし、生産設備のメンテナンス時期の見極めや生産品質の変化の兆しの発見などにも活用されている。工程ごとに細かく履歴データを取ることで、どの工程のどの部品に問題が起きやすいかなどの分析が容易になることから、きめ細かい対応が可能となり、生産品質の向上に大きく貢献しているシステムとのことだ。

基板への部品実装を行なうエリア

このフロアでの実装作業はほとんどがオートメーション化されている

組み立てエリア

現在はセル生産方式での作業が中心だが、状況に応じてライン生産方式に組み替えることも可能とのこと

神戸工場内では耐久性や環境などのテストも随時行なっている。これはキーボードの耐久性を検査する機械。一定の速度で自動的に押鍵する

ガラスケース内で全方位から霧状の水を浴びせられ続けている“TOUGHBOOK”

“”KISSシステム”の端末画面

パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部テクノロジーセンター所長の高木俊幸氏

工場見学と併せて行われた、同社パソコン事業に関する説明会では、いつもの新製品発表会などではなかなかお話を聞けない、開発/製造の“現場”の方々からの説明も行なわれた。製品開発の基本姿勢を「“Only One Product”の創造」だと語るパナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部テクノロジーセンター所長の高木俊幸氏は、モバイル用途に焦点を絞った進化を続ける“Let'snote”シリーズの開発を「尖った特徴を持つ製品とコア技術による差別化の実現によりモバイルPCを徹底追及」してきた成果だといい、同シリーズ開発の課題は「背反する技術要素(軽量化と多機能化や長時間駆動、堅牢性強化など)をいかに同時に実現するか」だと述べた。また、Let'snoteシリーズの特徴のひとつである“軽量さ”の実現については、「1g、2gの積み重ね」によるもので、「最後は根性」とも述べており、各開発スタッフの小さな努力の蓄積が伺える。

パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部事業部長の伊藤好生氏

また、パソコン事業全般の概要説明を行なったパナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部事業部長の伊藤好生氏はプレゼンテーションの冒頭に、同社によるパソコン開発を「モバイルパソコンの領域で“技”を磨く」と表現しており、同社のパソコン事業の強い“こだわり”が垣間見える。これらの強い“こだわり”を実現するには開発と生産の現場が密な連携を取ることが不可欠であり、きめ細かな“技”“根性”を量産品で実現するためには国内工場によるクオリティーの高い生産能力が必須だ。パソコン本体の生産を海外拠点に移している国内メーカーが増える中、今も“Made in 神戸”を継続する松下の狙いはこういった点にあるのだろう。

高木氏のプレゼンテーション中に行なわれた“TOUGHBOOK”の堅牢性テスト。左は起動中落下、右はペットボトルの水を本体にかけるという実験。いずれも実施後も何事もなく動作

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