結論には尚早だが、一度まとめてみる
昨年の年末商戦を大いに盛り上げたのが次世代ゲーム機の話題だ。ソニーは昨年11月にPS3をようやく市場に投入。任天堂も続いて12月にWiiを市場投入し、両社の次世代ゲーム機戦争が始まった。
ゲームビジネスの勝敗は、長いスパンで判断しなくてはならない。現状では結論を出せないが、販売状況や各社の決算を通じた数値も少しづつ上がってきている。
今ある資料から、分かる範囲でまとめてみよう。
販売台数からみた次世代ゲーム機戦争
(株)エンターブレイン調べによるPS3とWiiの国内の販売状況を紹介すると、 発売開始から1月28までの販売台数は、PS3の61万4000台に対してWiiは139万5000台と倍以上の数字になっている。
一見、Wiiが優勢のように感じるが、PS3はまったくの新しいプラットフォームを開発し、ソフトも出揃ってない状況だ。そんな中、PS3がこれだけの数を出荷できたことは、逆に健闘したと言えるのではないだろうか。Wiiのアーキテクチャーは、ゲームキューブのそれを拡張したものとされており、親和性が高い。したがって、ハード/ゲームともに開発が容易だったと想像される。『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』のような人気ソフトを発売と同時期に用意できて、うまく滑り出せたことも好調な売れ行きにつながった要因と言えるのではないだろうか。
ソニーの第3四半期決算(2006年10月1日~12月31日)は数字だけ見ると、△542億円と大きな赤字である。ただしこれは、PS3を早期に普及させるために値下げ販売したのが大きな要因だ。ゲームビジネスはソフトメーカーから支払われるライセンス料によって収益を得ている面が大きいので、まずはプラットフォームの普及を狙った戦略と言える。ゲーム機自体の性能は、WiiよりPS3が上回っていることもあり、その性能を生かしたソフトやサービスなどが揃えば、大きな差別化が可能だ。ソニーにとってはあまり悲観的な結果ではないだろう。
次世代ゲーム機戦争の裏で
それよりも気になるのが、携帯ゲーム機PSPの不調だ。決算書によると、全世界の生産出荷台数(工場からの出荷台数)は前年比△72%とかなり落ち込んでいる。絶好調のDS Liteに対してかなり差をつけられた印象がある。
エンターブレイン調べによる国内販売台数を見てよう。
国内販売台数 | ニンテンドーDS(DS Lite含む) | PSP |
---|---|---|
2005年10月~12月 | 242万7000台 | 84万9000台 |
2006年10月~12月 | 288万台 | 50万5000台 |
※集計期間は「2005年9月26日~2006年1月1日」と「2006年9月25~12月31日」
売れ行き自体は、DSのほうが昨年も一昨年も大きいが、気になるのは、PSPの販売台数が大きく落ち込んでいることだ。未だ品薄状態が続くDS Liteに比べ、かなり対照的な結果となっている。
「PSPのような携帯ゲーム機は、当社にとって全くの新しい試みでしたが、普及ペースはPSやPS2などの過去のプラットフォームと比べても順調に伸びており、北米や欧州での累計生産出荷台数はそれぞれ1000万台近くになっています。今後はPSPならではの楽しみ方ができるコンテンツやサービスを充実させ、プラットフォームの普及拡大に努めたいと思います」。((株)ソニー・コンピュータエンタテインメント広報)
ゲーム機ビジネスが全世界を視野に入れている点も見落としてはいけない。PSPの累計出荷台数(工場出荷)は日本を含むアジアで623万台であるのに対し、北米で985万台、欧州で889万台と海外市場の比率が圧倒的に高い。数字の取り方が異なるため単純な比較はできないが(任天堂は販売実績)、DSではアジア市場の割合が高く、約4割が国内での販売(1443万台:2006年12月まで、任天堂のプレスリリースから)。このあたりの視点も持っておきたいところだ。
ソニーは決算発表の席上で「PSPはあきらめない」と語っていたが、どんな対策を考えているのだろうか? 今後の動向に期待したい。