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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第202回

アップルとサムスン、7年続いた特許訴訟についにピリオド

2018年07月04日 12時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII編集部

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 AppleとSamsungが6月27日、7年越しの訴訟に終止符を打った。「猿真似」などという言葉も飛び交った訴訟だが、和解内容は明かされておらず、却下を告げる裁判所の文書はわずか8行。両社の意図は汲み取りようがないが、初代「iPhone」登場から11年を迎えた現在、スマートフォンが最初の段階を終えたことをあらためて実感させられる。

始まりは2011年、AppleがデザインでSamsungを提訴

 終わりはあっけないーー恋愛でも人の一生でもないのだが、AppleとSamsungが2011年から法廷で対立してきたことを思い返すと、やはりあっけない終わりのように感じる。

 カリフォルニア州北部地区連邦裁判所が6月27日付で出した書類では、「両者が和解に達したという報告を受けた。この件について、残っている主張と反訴は、これにより却下するものとする」といった文言が並び、Lucy Koh判事の署名がある。

 事の始まりは2011年4月、AppleがSamsungを相手取り米国で訴訟を起こした。主としてデザイン特許(意匠権)についてであり、Samsungのスマートフォンブランド「Galaxy」、タブレット「Galaxy Tab」が自社の特許を侵害しているというもの。Appleは約20億ドルの損害賠償金などを求めた。Samsungも反撃し、訴訟はその後、ドイツ、英国、オランダなど欧州、さらには日本や韓国など世界に広がる。

 2012年、判事はSamsungに対し約10億5000万ドルの損害賠償金支払いを命じる。その後この金額は4億5000万ドルに減額され、再審理が行なわれることに。2016年、損害賠償金の金額については下級裁判所で決定するようにとなり、2018年5月末、5億3900万ドルという金額がSamsungに言い渡された。

 Appleはこれについて、「Appleはデザインの価値を深く信じている。金額以上のものを意味する」と言った旨のコメントをしている。

 訴訟の中心は、Appleがデザイン特許、アイコンの商標を模倣されたと主張するのに対し、Samsungは新しさはないと主張(Samsung側の弁護士は、映画「2001年宇宙の旅」まで持ち出した)、Samsungは3Gなど無線通信、画像処理などの技術分野を中心に主張した。

スマートフォンは成長市場から成熟市場へ

 AppleとSamsungは代表的なものだが、スマートフォン特許訴訟は一時期、ニュースの見出しを絶え間なく飾った。着火点となった2011年当時はまだ3Gの時代。フィーチャーフォンもそれなりに残っており世界ではまだSymbian、BlackBerryもシェア争いに登場していた時代だ。IDCのシェアでは、スマートフォン市場でAppleがかろうじてシェアトップを維持、Samsungが前年同期比200~300%台の成長率で猛攻し、大きく差を縮めている時だ。

 全画面+タッチによる操作という新しいスマートフォン(スマートフォンそのものは、Symbian時代からある言葉だ)は成長市場であり、市場トレンドを作り出したAppleとしては簡単に真似されて独自性を失いたくないというところだったのだろう。なお、Samsungの携帯電話事業の歴史は古く、Androidにはどちらかというと出遅れた側のメーカーだ。Androidスマートフォンの初期時代はHTCやソニーがリードしていた。

 あれから7年、スマートフォン自体が成長市場ではなくなった。2017年のスマートフォン市場は初めて減少(マイナス0.3%)、IDCは2018年も0.2%の縮小を予想している。

 Samsungのシェアは約24%、Appleは約15%。2社以外のトップ5は、中国ベンダー(Huawei:約11%、Xiaomi:約8%、OPPO:約7%)だ。Appleはもちろん、Samsungも一時期は30%に達していたシェアが落ちている。法廷での争いがビジネスに意味をなさなくなったと2社が考えてもおかしくない。2社は2014年、米国外の特許訴訟はすべて取り下げており、時間はかかったもののその流れの延長と言える。

 もう一つ、この7年で代わったものにリーダーがある。AppleはSteve Jobs氏が2011年秋に亡くなり、現在はTim Cook氏が率いる。Samsungも、実質的に経営トップとされる副会長の李在鎔氏に有罪判決が出る(朴槿恵大統領への贈賄疑惑)など落ち着かない。スマートフォン市場が成長市場ではなくなりコモディティーとなった中、高価な訴訟を続けることに疑問を感じてもおかしくない。

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