サンフランシスコ周辺のベイエリアはずっと寒い状態が続いていました。例年であれば5月、6月は好天に恵まれ、気温も25度まで上がり、カラリとした陽気が楽しめるはずなのですが、今年は、特にサンフランシスコ市内やバークレーでまったく晴れず、気温もせいぜい15度止まりという日々が続いています。
内陸はもう少し気温が上がるので、週末ごとに、バークレーから東へ1時間ほど走ったところにある果樹園の街、ブレントウッドへ出かけ、イチゴ狩りやサクランボ狩りを楽しみ、暖を取っていたという5月でした。とはいえ、最終週になると気温は上がって、やっと毛布なしで寝られるようになりました。
昨年の雨期の膨大な雨から、40度を超える昇温、そして大規模な山火事、今度は寒い5月と、気候がなかなか安定しないですね。
さて、こちらでは巨大テック企業の開発者会議シーズンなのですが、Facebook、Googleと開発者会議が行われた5月も終わり、6月4日に開催されるAppleの開発者会議、WWDC 2018を残すばかりとなりました。来週はサンノゼに滞在し、イベントや新製品などのレポートを現地からお届けできればと思います。
クチコミサイトのYelpが
ベイエリアの食のレベルを上げた
サンフランシスコやシリコンバレー一帯を、サンフランシスコ湾岸地域、「ベイエリア」と呼びます。テクノロジー企業の賃金高騰、中国やインドから途切れず人口が流入していることも助けて、リーマンショックも関係なく不動産価格は上がり続け、インフレが続いています。
ちょっとしたレストランでサラダのランチを食べようとすると、チキンをトッピングして、コーヒーもつけようものなら、軽く20ドルになってしまいます。東京だとホテルのレストランのランチを楽しんでおつりが来そうな金額を、どうってことないダイナーで用意しなければなりません。
ただ、この7年住んでいて、おいしいレストランは着実に増えました。もちろんインフレの中でより高い価値を追求しようという動きがあったことも確かですが、街のあらゆるものを評価とレビュー漬けにするアプリ、Yelpのおかげで、レストランのクオリティが上がったと見ることもできます。
Yelpでは、顧客が星の評価とともに、良かったこと、悪かったことをすぐにレビューとしてフィードバックします。そして何か街でお店を探すときに、まずYelpを開く行動パターンが定着し、評価やレビューが真っ先に伝わってしまいます。
そのため悪いレビューには店側がていねいに返事をし、またそうしたレビューがつかないように店の細部にまで気遣うようになります。お店にとってはプレッシャーである一方で、どんな店が好まれるのか、自分の地域でどんなサービスが繁盛するのかを分析することもできます。
これを「正のフィードバック」として活用できるお店は、お客さんから好かれ、店の品質もどんどん向上していくというわけです。
店の壁をふと見てみると、そこには大量のタブレットが
バークレーから隣の市であるアルバニーをなだらかな坂道で貫くソラノアベニューも、良いレストランが建ち並ぶ注目のエリアです。ここには、シカゴスタイルのピザ屋が2軒あります。坂の上端にあるザッカリーズは古くから愛されるお店、そして坂の下端にはリトルスターという新興ピザレストランがあります。
シカゴピザというと、日本ではデリバリーチェーンを思い浮かべますが、ザッカリーズもリトルスターも「ディープディッシュ」ともいわれるピザが楽しめます。ピザパイを3~5cm程度の深さに成形し、そこにチーズやトッピングとともに、大量のトマトソースを流し込んで焼き上げる、とにかくトマト好きにはたまらないピザです。
また、リトルスターはピザ生地を小麦ではなくトウモロコシの粉で作っていて、見た目の迫力の割には、軽く楽しめるところも若い人に人気の秘密です。
と、ピザの話はこのぐらいにして、そのリトルスターで先日、電話でピザを1枚オーダーして取りに行った際、受け取りの窓口の異様な光景に驚きました。壁一面にタブレットが貼り付けてあったからです。iPadやAndroidタブレットなど、全部で6台。
最近レストランや小売店ではSquareに限らず、タブレットをレジとして活用している店舗が増えてきました。しかしそれとはおそらく関係ない代物です。これは一体……。
貼り付けられたタブレットの答えは宅配サービス
これらのタブレットを良く見ると、その答えがわかります。タブレットにはシールが貼ってあり、それぞれ「Postmates」「Door Dash」「Amazon」「GrubHub/Eat24」「Uber」と書いてあります。もう1台のタブレットは「バーでの使用時には電源を付けっぱなしにしておけ」という指示しか確認できませんでしたが、UIの感じからおそらく「Caviar」でしょう。
これらはいずれも、レストランに宅配をオーダーできるアプリのブランドです。
日本ではUber Eatsが知名度を上げていますが、こちらではそのほかにもAmazon Restaurant、Door Dash、GrubHubなどのアプリがしのぎを削る競争激戦カテゴリになっているのです。アプリ側としては、他社よりも多くの地元店をラインアップに加えて差別化したいため、各店舗に一所懸命タブレットを配布して営業活動をしているのでしょう。
一方のレストラン側は、他のレストランが参加している宅配アプリに入らなければ、オーダーを受ける機会を失いますから、こちらも一度どれかのアプリに参加したら、より多くのアプリに参画しなければならなくなります。その結果が、このレストランの壁のような状況というわけです。
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