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ファンがアニメ製作に参加・支援できる仮想通貨「オタクコイン」の狙いは何か

2018年02月03日 09時00分更新

文● MOVIEW 清水 編集●ASCII編集部

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「オタクコインの構想は業界の現状への危機感から」
新たな仮想通貨はオタク系コンテンツを救うか

 連日ニュースを賑わしている仮想通貨。ビットコインを中心に、イーサリアム、リップルといった仮想通貨の価格変動や規制の話、あるいは日本の銀行や企業が仮想通貨関連の業務を始めるといった広範囲な話題が振りまかれている。そんな中、昨年末、Tokyo Otaku Mode Inc.から、アニメ・マンガ・ゲームなどのオタク系コンテンツ業界に特化した仮想通貨「オタクコイン」の実施に向けたオタクコイン準備委員会設立が発表された。

 オタクコインは特定の企業の営利活動を目的とした仮想通貨ではなく、業界に特化した仮想通貨を導入することによって、コンテンツ制作サイドと世界中のファンを結びつけ、現状の問題解決や業界の発展を目指す仮想通貨だ。

 今回の発表では、オタクコイン準備委員会を設立し、業界関係者や識者、専門家のほか、一般ユーザーからの意見を受け付け、オタクコインの活用方法、制度設計などを実現していくというもので、仮想通貨の創出ならびにICO(株式市場でいうところのIPOにあたる、仮想通貨における資金調達方法)実施に向けて本格的な検討を開始するというものだ。

 では、実際にオタクコインが流通するとどのようなことができるのだろうか。下記はオタクコインが流通した世界における、その利用法などのイメージ図だ。

オタクコイン利用法のイメージ図

 オタク系コンテンツ業界における買い物やイベントへの参加費用の支払いに使えるだけではなく、コンテンツを制作するクリエイターを直接支援したりできる未来図となっている。また、これまでのアニメ製作委員会に加え、世界中のファンがダイレクトに繋がることでアニメ制作に直接参加・支援する「アニメ製作2.0」という仕組みの構築も考えられており、まさに次世代の業界発展に繋がっていく仕組みのように見える。

 しかし、昨今の仮想通貨のニュースなどを見ていると、まだまだ過渡期といった様相であり、お金儲け目的で使われたり、本当に支援したい人たちへ適切に行き渡るのかという不安が頭をよぎる。そこで今回、Tokyo Otaku Modeを訪問し、Co-Founder and COOの安宅 基氏に、オタクコインのプロジェクトについてたずねた。

Tokyo Otaku Mode Co-Founder and COOの安宅 基氏

――オタクコイン準備委員会設立を発表されて、反響はいかがですか

安宅氏:日本ではSNSなどで話題となりましたが、海外でも話題になりメルマガ登録も増えています。登録者数はこの3週間で、海外が8000人、国内が2000人で計約1万人。Facebookグループのほうも2500人ほど登録されています。

――国内よりも海外のほうが反響が大きかったと

安宅氏:そうですね。お問い合わせも海外が600件、国内は100件です。Tokyo Otaku Modeの活動が海外向けということもありますが、特に海外で興味を持ってくださってる方が多いです。

――それは投資的な観点での興味でしょうか

安宅氏:お金儲けをしたいという人も一部にはおりますが、自分にも何か手伝えることはないか、という声も非常に多かったです。また、この構想によってコンテンツクリエイターや海外ファン自身の環境がよくなるのではないか、という期待感があるようです。アニメ作品を生み出すクリエイターが生活に困るほどの低賃金問題というのは社会的にも話題になっています。今回の新しい取り組みで海外ファンが直接クリエイターへ支援できるようになるのではといったことなどから、ぜひこの構想を実現してほしい、という声が届いています。

――仮想通貨の価格の乱高下などを見ていると、仮想通貨そのものに不安を抱く人もいると思います

安宅氏:おっしゃる通り、現在の仮想通貨は投機目的という部分は否めません。現実のお金が仮想通貨に1%も流れてきていない状況ですし、これから仮想通貨率が5%、10%と高まっていき、いろいろ始まっていくのだと思います。私たちとしては、インターネットが一般に広まっていった20年前くらいの感覚で、ブロックチェーンという技術によって、現状の法定通貨よりも低コストで運用できる仮想通貨を試してみようというところです。仮想通貨が今後一般にも浸透していく段階で、コミュニティや業界ごとの仮想通貨は有効に機能するのではと考えています。

安宅氏:信頼性という点でも、たとえばビットコインが運用されて9年目くらいになりますが、一度もサーバーが落ちていない。今までの通貨に比べて低コストで運営維持をしていて、かつ、いろいろなアタックも受けているはずですが、ここまでサーバーが落ちていないというのはP2P(Peer to Peer)の仕組みが堅牢であり、信用できると考えています。もちろん今後もこのまま安定して運営できるかはわからないところではありますが。

安宅氏:先ほどお話しした「投機目的」という部分についてですが、世の中物事が動くときによく、お金かアダルトかといったようなことが言われますが、仮想通貨の場合、先にお金がきてしまったのだと思います。ビットコインでものすごく儲けたというような話がありますが、根底にあるブロックチェーンの技術はいろいろな応用が利くものですし、これから知財系や著作権系などの新しいサービスが生まれていく過程で、先にお金という部分に注目が集まってしまっているのだと思います。

――すでにクラウドファンディングが普及していますが、それではダメなのでしょうか

安宅氏:クラウドファンディングは、特定のプロジェクトに対してのリワードを設定して行ない、そのプロジェクトが終わったら完了ですよね。仮想通貨はもっと大きな枠組みで、例えてみれば株式会社の株と同じで、仮想通貨を持っているステークホルダー全体がひとつの同じ方向に向ける点で大きく異なると思っています。例えば、ファンがクリエイターに支援するケースで考えてみると、クリエイターに直接仮想通貨を送って支援することもできますが、クリエイターに先にオタクコインを保有してもらい、ファンがこの仮想通貨を流通させる活動をすることでオタクコインの価値を上げて、元々1万円ぶんの価値を10万円ぶんの価値に上げるといった間接的な支援も行なえます。こうしたことは既存のクラウドファンディグだけでは実現しないことだと思います。

――アニメなどのエンタメ業界に絞った理由は?

安宅氏:日本発のアニメ・マンガ・ゲームなどのオタク文化が、ブロックチェーン界隈やフィンテック界隈の方たちとすごく親和性が高いと思っています。例えば仮想通貨関連の「Slack」や「Telegram」に参加するユーザーのプロフィールを見ると、アニメアイコンと言われる、アニメキャラクターをプロフィール画像にしている方がとても多い。エンジニアなど、「好き」をとことん極めるオタク文化と近しい属性なのだと考えています。

安宅氏:それから、Tokyo Otaku Modeはオタク系コンテンツに関する越境Eコマースサイトを運営しているわけですが、その活動から出てきた課題の解決なども想定しています。例えば、Eコマースサイトでは同じフィギュアがいろいろな国で買われています。昨年のTokyo Otaku Modeの実績では、多い月で1万5000以上の配送実績があり、これらは130の国とエリアからドル建てで購入されているわけです。その裏側で何が起きているかというと、購入者の国通貨とドルの間で為替手数料であったり、システム利用における決済手数料が発生しています。通貨というのは昨日と今日では為替が変わるので、売る側と買う側のどちらかがその為替リスクを負担している状態です。しかし、この業界だけでも統一通貨ができれば、為替リスクがなく、しかも間に入っている決済手数料などを省いてシームレスになるはずです。

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