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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第427回

業界に痕跡を残して消えたメーカー MSに妨害されたPDA向けOSのGo Computing

2017年10月02日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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製品開発は順調だが
資金繰りが難航する

 GoPointの発表前に、AT&Tとの間で新たな契約が締結された。Beの回で紹介した、EO-440である。他の契約と異なっていたのは、このEO-440の開発のための新会社(AT&T Personal Commnications Systems)を設立するというもので、Go Computerのハードウェア部隊の大半がここに移った。

 こちらはBeの回でも説明した通り、AT&TのHobbit CPUを利用するシステムだった関係で、386SXをベースにした既存のGoPointとは異なるバージョンになる。

 この移植作業は、当初はGo Corporationで行なったが、将来バージョンについては同社でその作業を行なう権利も付与された。

 順調、といえるかどうかはともかく一応会社が前向きだったのはこの頃までである。1993年に入ると、同社は急速に失速し始めた。

 理由はいくつかある。まずはパートナーであるIBMやEO、さらにはStateFarmとの関係悪化に起因する、急速な資金不足である。StateFarmの場合、GoPointで更新予定だった保険料算定システムのプロジェクトが1年後送りになった関係で、資金の支払いが遅れることになった。

 代わりとなる有力な投資元も急には見つからず、もちろん新規株式公開など夢のまた夢であった。IBMはGoPointに代わりAppleのNewtonの検討を始め、最終的にはPalmをOEMすることになる。

 おまけに1993年にCEOがLouis V. Gerstner, Jr.氏に替わったことで、Go Corporationへの投資は望むらくもなかった。

マイクロソフトの妨害もあり倒産

 こうしたGo Corporationの急速な不調を裏から加速させていた、と書いてしまってもおそらく支障はないと思うのだが、その陰の立役者が言うまでもなくマイクロソフトである。

 同社は1990年、Go PointにまけじとWindows for Pen Computingの構想を発表。1991年には動作デモも公開している。

 この動作デモ、実はほとんど紙芝居で、単なるデモ以上のものではなく、この時点ではまだ陰も形もないものであったが、1992年には実際にWindows for Pen Computing 1.0をリリースしている。

 これが使い物になったのか? といわれるとNoであって、事実対応アプリケーションはほとんどなかった。

 ただそうであっても、GoPointの採用を考慮していた企業に対して揺さぶりをかけるには十分であり、加えて同社はGoPoint向けのアプリケーションやシステムを販売しようとするメーカーに対してもライセンス料の上乗せ、あるいはスマートな恫喝などで妨害を図った。

 マイクロソフトからすれば、ほとんどPCと変わらない機器の標準OSを提供するベンダーの座を脅かすような存在は、そもそもが敵という認識であった。

 ただし司法省から独占禁止法の疑いで調査が入ったりした関係で、表立って潰すのもはばかられた結果が、周囲を攻める形での兵糧攻めであり、ベンチャー企業の域を脱しなかったGo Corporationには抗うすべもなかった、とも言える。

 運が悪いことに、最終手段としてAT&Tに買収してもらうプランも進んでいたものの、AT&Tが1994年1月にEOの製品ラインそのものをキャンセルする決断を下したことで、この買収もご破算になる。結局Go Corporationは1994年6月に倒産した。

 倒産後の2005年、Kaplan氏はマイクロソフトを相手取り、Goが秘密保持契約で開示した技術を不正利用したと訴えてたものの、4年の時効消滅を主張したマイクロソフトの主張が通って2007年に棄却された。

 ただKaplan氏は、このGo Computingの一連の出来事をまとめて“startup A Silicon Valley Adventure”として出版しており、今でも興味深い読み物になっている。

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 個人的に見ると、一貫して業務向けにターゲットを絞ったのは悪い選択ではなかったと思うが、いかんせん構想に技術が追従し切れなかった気がする。

 せめて10年後なら、もう少しマトモなハードウェアになったとは思うのだが。もっとも10年後だと、果たしてGoPointにどこまでインパクトがあったか、というのは難しいところである。

 やはりPalmみたいな、もっと小さいところから攻めるべきだったのかもしれない。

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