今年もいろいろな場で SEO や検索技術に関する講演をさせていただくのですが、参加者やテーマを問わず、共通していただく質問として必ず上がるのが「ページ表示速度」のお話です。あらためてポイントをまとめます。
SEO 関係なく速いほうが良い
ページ表示速度は本質的に SEO が関係ないお話です。ページをクリック(タップ)して瞬時に情報が表示されるほうがユーザー体験が良いに決まっています。SEO に関係なかったら、ページの読込時間は遅くてもいいんでしょうか?そんなことないですよね。一般的に、ページ表示速度が極端に遅いと、直帰率や滞在時間に悪影響があるといわれます。それは SEO 関係なく改善したいはずです。
Google が繰り返し(ウェブマスター向けに)ページ表示速度に言及するから、何か SEO 施策の一環として速度改善に取り組まなくちゃ!という焦燥感にかられるのかもしれませんが、別に Google の掌で踊らされる必要はありません。
不愉快なほど遅いのであれば改善を
Google がページ表示速度をシグナル(検索順位を判断するための手がかり)として扱うことは事実ですが、200以上あるシグナルの1つに過ぎず、影響は微々たるものです。重要な意味をもつのは極端に読込速度が遅いケースです。たとえば、検索結果画面でリンクを選んでから、表示されるまでに数十秒と待たされるくらい遅いページはユーザーの検索体験を損なうから順位が調整されます。。現在2秒で読込が完了するページを1秒にしたら検索順位が上がるといった具合に、速くすればするほど順位が上がるというお話ではありません。
あるいは、仮に他のすべての条件が完全同一だった場合、ページのページ読み込み速度が判断基準になりうるという話で、原則として検索クエリと情報との関連性が最優先されます。ロード時間が速いだけで関連性が乏しいページの順位が上昇するわけではありません。
順位に影響するくらいスピードに問題があるならば、検索云々関係なしに取り組むべき改善事項であり、やはり SEO の問題ではありません。
でも、ページ読込速度で検索順位が上がった事例を聞いたことがある
時折、「ページ読込速度を上げたらこんなに検索順位が上がりました」という事例を見ることがあるのですが、テスト実施時のデータが公開されているケースを見たことがありません。単に「5秒を4.3秒にしたら検索流入が20%増えました」と一言添えられても、それは本当に因果関係があったのでしょうか。
PageSpeed Insightsの点数が上がらない
「PageSpeed Insights の点数が上がらないと検索順位は上がらないのか」という質問をいただくこともあるのですが、このツールの点数と実際の検索順位は関係ありません。先に述べた通り極端に遅いページをふるいにかける性質のシグナルであり、より速いページを優先表示するものでもなければ、PageSpeed Insightsで点数が高いページを上位に表示するものでもありません。
現在 3秒で表示されるページを 2.5秒に SEO のために努力するよりも、もっと他にやることがあるでしょう。
でも Google は積極的にページ表示速度に言及するじゃないか、重要なんでしょう?
グローバルで事業を展開する Google の視点でいえば、世界中のウェブマスターに教育・啓蒙するためにページ表示速度の重要性を訴え続けているにすぎません。
海外で 3G/LTE でネットに接続した経験がある方はおわかりだと思いますが、日本の LTE と他国の LTE の通信速度は別物です(たとえば米国の T-Mobile USなど)。日本の通信インフラが整っているのであまりストレスを感じませんが、海外だと通信環境の悪さとウェブの重さが相まってスマホで閲覧するのにストレスが溜まります。
通信インフラは国・地域によってばらつきがあります。私が経験した範囲でいうと、コペンハーゲンやストックホルムなど北欧都市は(LTE接続で)日本並の通信速度でアクセスできますが、バンコクやサンフランシスコ、シドニーは都市部であっても微妙です(キャリアにもよりますが)。そういう事情をくむと、Google がページ表示のスピードを重要視するのも頷けます。
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