価格、デザイン、音質と、意外性だらけのイヤフォン。それがRHAの「S500」シリーズでした。
RHAは英国グラスゴーに本拠地を置くオーディオメーカーで、斬新な設計のカナル型イヤフォンをラインナップ。特に昨年発表された「T20」シリーズは、同軸2Wayに近い構造を持つ斬新なドライバーユニット「DualCoil」の採用で、音質面でもメカニカルな面でも注目すべき存在です。
そうしたアプローチは、シンプルなエントリークラス、ミドルクラスの製品にも見られます。今回は、その中でもコストパフォーマンスモデルである、S500をチェックします。
RHAの国内での扱いはナイコム株式会社で、S500の国内販売価格は5000円台半ば。同じ基本スペックで、Apple製品対応のリモートマイク付きの「S500i」は6000円台半ば。ともにイヤフォン激戦区に投入された製品ですが、単に安いだけではない製品です。
ダイナミック型とは思えないサイズ
RHAのラインナップに共通する特徴は、筐体の素材が金属であり、それを活かしたデザイン手法が採られていること。このS500もハウジングの素材は削り出しのアルミニウムで、バックエンドを斜めに断ち切ったデザインが新しい。プラグのカバーもアルミニウムで、ローレット加工を施したグリップを持ちます。
こうした正しくエッジのきいた見た目がアピールポイントですが、実際に手にして感じるのは、あれっと思うほど軽く、小さいこと。そのサイズ感からシングルのバランスド・アーマチュア型と思いがちですが、実はダイナミック型というのが、まず最初の意外性です。
S500のドライバーは「140.1」モデルと呼ばれ、ドライバーの口径は公表されていません。が、メーカーでは「マイクロダイナミックドライバー」と形容しているので、ラインナップの中でも相対的に小さいのでしょう。
ちなみに筒状のハウジングは実測で直径約7.5mm。カナル型に使われる一般的なダイナミック型ドライバーの口径は、9mmから13mm程度ですから、ここには収まりません。削り出しのアルミという素材を活かし、ハウジングの厚みをギリギリ薄くできたとしても、ここに入るのはせいぜい6mm径程度のドライバーでしょう。
そうしたことから、そこに入るドライバーが何形だろうと、か細い、あっさりした音だろう、だからこれは見た目で選ぶモデルだろう、だって安いし。という先入観を持ってしまうわけで、実際私も試すまではそう思っていたのですが、実際には、それを完全に裏切るキャラクターが与えられていました。