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人工衛星「だいち」が遺した300万枚から

地形は語る!全世界を網羅した高精細3D地図のインパクト

2016年06月23日 07時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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 全世界を網羅する、世界最高精度の3D地図が完成した――4月末にそんなニュースが舞い込んだ。

 2014年からNTTデータと一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)が取り組んできたプロジェクト。JAXAの陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」が遺した約300万枚の衛星画像から高精細なデジタル3D地図を作成する。その対象エリアに南極や諸島地域も加え、ついに地球上の全陸地を網羅したという。

 世界最高精度とは? その社会的意義とは? NTTデータ 第一公共事業本部 e-コミュニティ事業部 第三開発担当 課長の筒井健博士に聞いた。

筒井健博士

人工衛星「だいち」が遺したもの

 だいちは、JAXAが2006年に打ち上げた陸域観測技術衛星だ。太陽電池パドルの片翼を持ち、3つの地形観測センサーを搭載。高度700kmもの高さからでも民家や列車などを識別可能で、地球観測・災害把握・資源探査など、幅広い分野での利用をめざして開発された。

 打ち上げから5年間、地球を撮影し続け、東日本大震災には被災地の様子を関連機関に伝えた。目標寿命を超えても運用されていたが、2011年4月22日に交信不能に。5月12日に地上から停止コマンドを送信し、その生涯を終えた。

 遺産として残されたのが、全世界を撮影し続けた膨大な衛星画像だ。そのうち雲などに遮られていない実用的な写真は約300万枚におよんだ。今回の3D地図はこの衛星画像を圧倒的なコンピュータパワーで解析することで作成したものだ。

陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」(出典:JAXA)

「世界最高精度」の意味するところ

 では、何がどう「世界最高精度」なのか。一言で言うと「5m解像度で世界中の陸地の起伏を表現している」ことだ。「5m解像度」が大きなポイントで、地上の物体をどれくらいの大きさまで見分けられるかの指標において、「5mの大きさの物を判別できる」ことを意味する。

 これと同等の解像度となると、国土地理院が整備している1/25000の地図が該当する。筒井氏によれば「国内ではスタンダードで最も高精度な地図ですが、これと同じ精度のものが全世界で活用できるようになるとお考えください」という。

 また、全世界の3D地図といえば、NASAが整備しているものがあるが、その精度も「30m解像度」まで。5m解像度と比べてみると、その差は歴然だ。ここまで高精度な3D地図を作るには航空機や人出による調査・測量が欠かせず、従来はコストと時間の観点から、整備できるエリアには限界があった。

5m/30m/90m解像度の比較。差は歴然(出典:JAXA)

 「だいち」が優れていたのは、それら課題も克服できる「撮影能力」を備えていたことだ。一地点を同時に3方向から観測する「RRISM」というセンサーによって、地表の3次元座標値(水平位置と高さ)を詳細に計測できた。それにより、衛星写真ながら航空写真にも匹敵する高解像度を実現しつつ、航空機を飛ばす手法よりも最大1/10に費用を抑えられたという。

 ほかにもだいちには、それまでの人工衛星の約20倍もの大容量データを一気に送る性能など、最新鋭の技術が搭載されていた。その性能を最大限に引き出すため、RESTECの衛星制御技術も駆使し、収集された約300万枚の衛星画像。それらを使って、世界で初めて、5m解像度の細かさと5mの高さ精度で世界中の陸地の起伏を表現した。それが「世界最高精度」たる所以である。

世界で初めて、5m解像度の細かさと5mの高さ精度で世界中の陸地の起伏を表現

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