新生活が始まる季節になった。進学や就職、転勤などなど住環境が変わるという人も少なくないのでは? そんな春だからこそ、見直してみたいのが「無線LANルーター」だ。
いまやネット環境は1つの生活インフラになっているからチョイチョイ見直しはあるけれど、無線LANルーターに関しては古い製品を意外にそのまま使っていたりする人も多い。
最近では1万円を切り、5~6000円クラスながら最新・最速を誇るIEEE 802.11acに対応した無線LANルーターも少なくない。自宅でスマホやタブレットを使う機会の多い人こそ、そろそろ最新の無線LAN導入を検討していい頃合いだ。
ここではそんな無線LANルーターについて最新のトレンドを紹介していきながら、手頃な価格の製品を紹介していこう。
2016年春、無線LAN購入前に知っておきたい9つのキーワード
まずは無線LANルーターの購入にあたり、ぜひ知っておきたいキーワードを解説する。
無線LANルーターのカタログやパッケージに躍る文字の意味を、今さら知らないとは言いにくいもの。曖昧だったあのキーワード、ここで再確認しておこう。
キーワード1:
最新無線LANルーターを買うなら注目したい「IEEE 802.11ac」
現在、市販の無線LANルーターに搭載されている最新・最速の無線通信規格は「IEEE 802.11ac」(以下11acと表記)。
数年前に「次世代Wi-Fi」とされた11acは、2013年にドラフト規格として各メーカーの無線LANルーターに採用され、翌2014年には正式規格としてIEEEに承認された。それに応じて11acにPCやスマホでの採用も進み、2016年春時点では主力の無線LAN規格となっている。
5GHz帯に対応した11acは、帯域幅の拡大(20/40MHzから80/160MHzへ)、変調信号の多値化(64QAMから256QAMへ)、MIMO方式の拡張(最大8×8)などによって、高速な無線通信が可能となっている。
また「MU-MIMO」(マルチユーザーMIMO)に対応した製品なら、複数台のWi-Fiデバイスが同時接続してもデータ転送速度が低下しにくくなっている。家族全員がスマホやタブレットを所有していてそれぞれが自宅でWi-Fi通信するんだよね、なんてことも珍しくない昨今では、11acはまさに時勢に合った規格といえるだろう。
11acはMIMOアンテナの数を増やし、160MHzの帯域幅を使うことで通信速度を最大6933.3Mbps(理論値)まで高速化できる。
11acの速度アップのキモは「アンテナの数」。送受信に利用される内蔵アンテナの本数が多いほど高速になる。ここで紹介するようなミドルクラス11ac製品であれば、内蔵アンテナが2×2(送信×受信)本で866Mbps(理論値)であることが多い。
理論値とはいえギガbpsに近い無線通信速度となれば、重いデータのやりとり、たとえば動画のストリーミング再生などでも威力を発揮する。
なお、11ac無線LANルーターは製品によるが、従来の11b/g/n/a規格にも対応している可能性が高いので、現在手持ちの無線LANデバイスが11ac非対応でも利用できるケースが多い。今後入手するWi-Fiデバイスが11ac対応機器である可能性は高いから、手持ちに11ac対応機器がないとしても選択するのがベストだろう。
また、11acと11b/g/nを同時に使える機器も多い。最新のスマホは11acで、チョイ古めのPCは11gで……というように場合に応じて異なる周波数帯・規格で接続することで、それらの機器で同時にアクセスした場合でも通信速度の低下が防げる。
従来の2.4GHz帯はほかの無線LANデバイスの通信で混み合っている帯域でもあるし、電子レンジや宅内無線電話のような同じ2.4GHz帯を利用する機器から発生する障害電波が通信障害の原因になることもある。
近隣の家庭と密接しているような集合住宅環境なら、11ac機器を選択する価値はあるだろう。
記事掲載当初、11acの周波数帯について誤った記述がありました。お詫びして、訂正いたします(2016年3月14日)