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IEEE 802.11acからワイヤレスHDDまで――最新無線LAN事情 第1回

最大1300Mbpsの無線LAN! IEEE 802.11acはこんなのだ!!

2013年06月25日 12時00分更新

文● 二瓶 朗

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 スマホやタブレット、ゲーム機などなど、無線LANを搭載した機器はどんどん増えている。居間に置くテレビやレコーダーにも無線LANを搭載するものは珍しくなくなっている。

 また、そういった機器でハイビジョン動画のようなクオリティの高いコンテンツを見る機会も増えてきた。これまで、家庭ではノートPCを接続してネットを見るぐらいだった人でも、無線ルーターやアクセスポイントの速度が気になってきているのではないだろうか。本特集ではそんな無線LANの最新事情を紹介する。

最新の「MacBook Air」や「AirMac Time Capsule」、「AirMac Extreme」がIEEE 802.11acに対応

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 そろそろ新しい無線LAN機器を導入しようか、と思っているなら、最新の「IEEE 802.11ac(Draft)」規格に対応した製品を検討するべきだ。特集第1回目は、そんなIEEE 802.11ac(Draft)について概要を解説し、その対応製品を紹介していこう。

IEEE 802.11acって何?

総務省が3月1日に公開した「次世代高速無線LANの導入のための技術的条件」の資料

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 2013年3月の電波法関連規則の改正によって、法的に日本国内で利用できるようになったのが、最新の無線LAN規格「IEEE 802.11ac(Draft)」だ。

 ただし、現時点では規格名に「Draft(ドラフト)」が付加されていることからもわかるように、まだ完全に標準化された規格ではない。ともかくそのDraftの件はいったん置いておくことにして、まずはIEEE 802.11ac(Draft)規格の概要を解説していこう(以下「Draft」表記は省略)。

 IEEE 802.11acは規格上は最大で6900Mbps(6.9Gbps)もの通信速度(理論値)をたたき出す。単純にスピードだけでみると、従来最高速だった「IEEE 802.11n」の通信速度を10倍以上も凌駕することとなる。

無線LAN規格 通信速度(理論値)
IEEE 802.11 2Mbps
IEEE 802.11b 11Mbps
IEEE 802.11g/a 54Mbps
IEEE 802.11n 600Mbps
IEEE 802.11ac 6900Mbps

 IEEE 802.11acがここまで通信速度を向上させることができたのには、「帯域幅拡大」「変調信号の多値化」「MIMO方式の拡張」といった理由がある。IEEE 802.11acがそれらの面でどのように進化し、高速化が実現されたのか、概要を解説しよう。

高速化の秘訣その1:帯域幅の拡大

 まず、2013年3月に行なわれた電波法関連規則の緩和により、無線LANで使用できる5GHz帯での帯域幅の上限が緩和された。従来、最大40MHzに限定されていた帯域幅が、最大160MHzまで利用可能となったのだ(現行製品は80MHz)。

 1チャネルあたり20MHzの帯域幅を利用する無線LANだが、IEEE 802.11nでは、チャネルを2つ束ねて40MHz幅の1チャネルにしてデータ転送速度を向上させている。IEEE 802.11acではさらにそれを上回り、4つ束ねた80MHz、8つ束ねた160MHzの帯域幅で送受信が可能となっている。

 データの通り道が広がって、一定時間あたりの送信可能なデータ量が増加したということだ。

高速化の秘訣その2:変調信号の多値化

 IEEE 802.11nでは、データを送受信する際の変調方式として「64QAM」が採用されている。64QAM方式では、一度に6bitのデータを送ることができるが、IEEE 802.11acでは変調方式に「256QAM」が採用されることとなった。

 256QAM方式では、一度に送受信されるデータ量が8bitとなるため、IEEE 802.11acは、IEEE 802.11nよりも約1.3倍多いデータを一度に送受信できることとなる。

高速化の秘訣その3:MIMO方式の拡張

 複数のアンテナでデータを送信して合成することで、擬似的な広帯域を実現する無線通信技術が「MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)」である。

 IEEE 802.11nでもMIMOが採用され、それ以前の無線LAN規格からデータ転送速度が一気に向上することとなった。また、MIMOによって、障害物が多い環境でも送受信が安定するという効果も得られる。

 IEEE 802.11nでは、MIMOで利用されるアンテナの数は4基が上限だったが、IEEE 802.11acではそのアンテナ数が最大で8基となり、一度に送受信できるデータ量も約2倍となっている。

 さらにIEEE 802.11acでは、MIMOを進化させた「MU-MIMO(Multi-User Multiple-Input Multiple-Output)」も採用されることとなった。

 MIMOは1基のアンテナから1基のアンテナにのみデータ送信する形だったが、MU-MIMOでは1基のアンテナから複数のアンテナにデータを送信することが可能となった。そしてこのMU-MIMOによって、より障害物に強く、電波干渉の影響を受けにくい通信が可能となるとともに、複数の無線LANデバイスを同時接続してもそれぞれで通信速度に影響が出にくくなることとなった。

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