東京大学と科学技術振興機構などは12月11日、従来のTCP理論限界値を超えるTCPデータ転送速度を実現する新たなTCP通信技術「LFTCP」を確立したと発表した。
TCP通信は現在のネットワーク標準的に用いられているプロトコルで、TCP/IPと言えばインターネットの基礎と言える。従来TCPは内部変数に32bit値を用いるというプロトコルの規定、パケット形式の規定と実装上の制限から性能の上限があり、現在の高速ネットワークである100Gbitネットワークを埋めるだけのデータ送信ができないため効率が低く、理論最大値でも29Gbit/secが上限だった。
東京大学の研究チームとインターネット研究開発を行なうWIDEプロジェクト、NTTコミュニケーションズなどからなる共同研究グループは、TCPの基本性質、輻輳制御アルゴリズムを変えることなくこれらの制限を超えるTCPソフトウェア「LFTCP」を開発した。送信側バッファに関連する変数を64bitに拡張したほか、パケットフォーマットの工夫、パケット送出のタイミングを指定。従来のネットワーク機器にも適合するのが大きな特長という。
LFTCPを用い、日米間の100Gbitネットワークの両端で送受信を行なう実験を行なった。これまでの理論上限29Gbit/secの2倍以上となる73Gbit/secで通信できることを証明した。
今回開発したLFTCPはオープンソース・ソフトウェアとして公開し、他の研究機関などで利用することが可能。100Gbitネットワークの活用、特に最先端の観測・測定機器から生み出される超多量データを利活用するための基本技術として使用するという。