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まつもとあつしの「メディア維新を行く」第51回

不可能と思われた“中学生総獲り”を実現する“ガンダム超え”タイトル

『モンスト』アニメがTVではなくYouTubeを選んだ理由

2015年11月01日 12時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史/ASCII.jp

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ミスマッチなアニメができているように見えた

イシイジロウ氏。ゲームデザイナー/原作・脚本家

イシイジロウ(ストーリー・プロジェクト構成) アニメ化の相談を最初にもらったとき、アニメの“目的”から考えたんですね。

 いまのほとんどのアニメはBDを売るためのビジネススキームになっています。アニメスタジオさんにとっても、そちらのほうが“実入りが良い”。かつてDVDビジネスが成功し過ぎた故に業界自体がそういう構造になっていて、いまも物凄い数の作品が作られ、パイの奪い合いが起きているわけです。

 そんな業界に対して、ゲーム出身の僕はどうアプローチすればよいか、ずっと考えていました。

 もう1点は、アプリゲームや、携帯でのブラウザゲーム、ソーシャルゲームと呼ばれるジャンルも含めて、アニメと連動しようという試みが色々行なわれているけれど、僕がこうだろうと思う成功に達していると言えるものがあまりないんですね。

 じゃあ、自分は何をどうすればいいのか? 木村さんと会う前からずっと考えていたんですよ。ソーシャルゲームのアニメ化、といった場合でもやっぱりアニメ制作側は“アニメを売ろうとしている”ように僕からは見えてしまう。なんかミスマッチだなあ、と。

―― 最終的な回収が、やはりアニメ、それもBDのようなパッケージに依存しているから、ですね?

イシイ アニメ業界がそのビジネススキームに凝り固まっている。だからソーシャルゲームからアニメを作るとなっても、いわゆる深夜アニメ的なフォーマットのものを作ってしまって、成功だったのか、失敗だったのかよくわからない状況になっているかなと。じゃあ、プロモーションに徹したアニメは作れないのかなと思ったわけです。

 そこで、やっぱりラブライブ!がヒントになっています。アニメのパッケージも成功していますが、それ以上の利益をスマホゲームで上げている。その連動性が上手くいっている。でもあれは、“アニメ発のアプリ”ですよね。パターンとしては違うけれど、プロモーションとして上手くいった。これを“アプリ発”でできないものかと。

 考えたのが、まず“オリジナル”である、ということ。ゲームだと、アニメに落とし込む際に“世界観が違う!”という問題が必ず出ます。ゲーム制作者のプライドもあるし、「アニメを作るからここを変えたい」という話はなかなか難しい。ゲームで成功している人であればあるほど、成功体験がかえって呪縛になるわけです。一方、アニメはアニメでパッケージの成功体験が重しになります。

 そういう成功体験を変えるような座組を新しく作ることができないかな、と考えていたところに、木村さんから話があったんです。

プロモーションと作品性は両立できる
すでにファーストガンダムがそれを証明している

 これ(プロモーションに徹したアニメが求められる)って、機動戦士ガンダムが生まれた頃の状況とじつは同じなんですよね。超合金とかプラモデルといったおもちゃ・お菓子を売るためにアニメがあった。BDもビデオもなかったわけですから。モノが売れれば良かった。

 だから、何度も合体シーンが登場したりする。アムロがホワイトベースから離れてしまっていてさえも、回想シーンなんかで(笑)。でもそれは間違いじゃないですよね。作品的にも傑作だし。グッズを売ることが目的であったとしても優れたものは生み出せるはずなんです。

 ソシャゲやスマホゲームを拡大するためのアニメがあってもいい。それは作品を否定するものではない。そのスキームを作りたかった。だから、木村さんからの「モンストでのメディアミックスをさらに拡げたいんだ」という相談は渡りに船だったわけです。

 じつは、この話は最初「ニンテンドー3DS版のモンスト」を想定したものでした。でも、それならば妖怪ウォッチですでに成功事例がある。僕は、ソーシャルゲームのモンストでメディアミックスを成功させたいと思っています。誰もやったことがないし、成功すればすごい武器になると。

 ただ、人気アプリのトップの地位にいるモンストを作っている方が、「じゃあアニメと組むか」となったときに、フラットに組んでくれるのかどうか。「いやいや、モンストはこうだから」とならないか?――正直そんな心配があったんです。

 だから僕は木村さんに「こういう理由だから、ゼロから作りたいんです」と話をしました。そしたら木村さんは、「ミクシィ、XFLAGスタジオは従来のメーカーとは違うんです。僕らは何でも変えられるし、だからこそ成功してきた。イチから一緒に作っていきましょう」と答えてくれたんですね。で、僕も「これならば、できるかも」と。

 アニメを見てもらえればわかりますが、そもそも舞台からしてゲームを反映したものではないんです。

―― PVでは渋谷の繁華街らしき場所でした(アニメ本編は神ノ原という現代の街が舞台)。

イシイ そうなんです。モンストの中を描くんじゃなくて、劇中でもモンストをプレイするアニメを作りたい。そうなると、外に主人公がいることになる。ヴァンガードとか遊戯王はそういうスタイルですよね。

 ゲームの主役を主人公にするのではなく、ゲームの外にいる主人公が、ゲームの人気キャラクターをストーリー内のイベントに応じて使っていくアニメこそがプロモーションになる。ポケモンで言えば、TVシリーズよりも劇場版の見立てに近いかもしれません。あれを毎週シリーズでやったらどうなるか?

木村 じつは、僕はイシイさんのことを知らなかったんですよ(笑)。で、3DS版×アニメの話を進めているときに、トーセさんから紹介いただいて、お話を伺っているうちに「あ、この人は本質がわかっている」とすごく感じたんですね。

 XFLAGのキャッチコピーは「ケタハズレな冒険を。」。これは新しい事・他人がやってないことへのチャレンジにワクワク・ドキドキしたいという意味です。僕はイシイさんの言う「いまのエコサイクルから崩していきたい」という思いに(「ケタハズレな冒険を。」をキャッチコピーとするXFLAGのトップとして)共感したんです。

(次ページでは、「趣味嗜好が細分化するはずの中学生を総獲りできる理由は」)

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