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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第51回

不可能と思われた“中学生総獲り”を実現する“ガンダム超え”タイトル

『モンスト』アニメがTVではなくYouTubeを選んだ理由

2015年11月01日 12時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史/ASCII.jp

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趣味嗜好が細分化するはずの中学生を総獲りできる理由は
“マイ・ファースト・スマホ”に入れたい一番人気アプリだから

木村 現実的な戦略としても、競合ひしめくキッズをターゲットにするのでなく、自分のスマホを初めて手にした小学校高学年から中学生くらいをターゲットにするとなったときに『テレビで戦えるのだろうか?』という疑問が浮かび、いろんな議論をしました。

 僕たちは自前の宣伝チャネルを構築してきました。たとえばコンビニでも販売している「モンスターマガジン」は数十万部発行しています。であれば、それにアニメのDVDを付けてもいいんじゃないか? とか議論をしていくなかで、「ちょっと待てよ、だったらYouTubeで無料で流したら?」と(笑)。

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イシイ (ターゲット層に)インタビューをしていくなかで、想定ユーザーが“3DSでYouTubeを見ている”というのがわかってちょっとびっくりしたんですね(笑)。そこまでして見るんだ!って。

 あとは、僕はレベルファイブに居たときに“小学生はマスである”、つまり人気が出れば、クラス中の誰もが参加するということを実感できていました。男子全員、女子全員を獲る、逆に獲れないと脱落する……。

 でも、中学以降はそれが細分化するはずだと思っていたんです。アニメはその最たるものですよね。どんどん趣味嗜好が細分化していって、その細切れのパイを奪い合う、みたいな。全部を獲るなんてことはないだろうと。そういう世界は小学生までだろうと。

 でも、スマホは小学生・中学生にとって“皆が欲しいもの”ですよね? それが手に入ったとき――“マイ・ファースト・スマートフォン”には、人気トップのアプリをやっぱりダウンロードするんですよ。

 つまり、それがモンストなんです。中学生のマスをモンストは持っている。アニメ業界やコンシューマーゲームにおいても、そこを持っているIP(タイトル)はないですよね。中学生すべてをターゲットにするなんて、ガンダム級のビッグコンテンツだって狙えないことですよ。

 そう考えたときに、どんどんメディアの選択はYouTubeになっていきました。若年層なら土曜・日曜の朝夕のテレビ、大人ならその深夜枠という選択肢もあったかもしれないけれど。いま、マスとなっている、スマホと連携したターゲットを狙うタイトルってないわけです。

―― なるほど。ストーリーの建て付けは先行事例がありますが、それをネットでやりきろう、というところが新しいですよね。そして、そのターゲットは意外にもマスで、そこを狙うならYouTubeだと。

 では、ウルトラスーパーピクチャーズ(USP)にはどういったタイミングで声が掛かったのでしょうか? また、深夜帯での「ウルトラスーパーアニメタイム」や、日曜夕方のアルスラーン戦記などテレビタイトルを展開しているなかで、本作はどういう位置付けになるのでしょうか?

平澤直(プロデューサー) こちらにお話が来たのは、木村さんの相談を受けたイシイさんからでした。ここまで木村さん・イシイさんから語られた“グループインタビューでの発見”あたりからプロジェクトに加わっています。3DSで2時間も動画を、それも5~10分の尺のものを連続して見ている、といった発見があったあたりからの合流です。

 僕自身、深夜アニメでビデオを売るというモデルを15年くらいやってきて、やれることとやれないことがある、というのがわかってきました。そしてここ最近で言うと、やれないことのなかに次のチャンスがあるだろうということもわかってきました。

 そんななか、イシイさんから「モンストの展開について意見を聞きたい、という話がある」というお声が掛かったのは、とても幸運だったと思います。

 USPグループとしても大人向けの深夜帯、子ども向けの時間帯だけにこだわっているわけではありません。自分たちの制作力・クリエイティビティーをどう発揮するか、誰のために役立てるかというのが大事なので。

平澤直氏。ウルトラスーパーピクチャーズ プロデューサー

 その点で言えば、アニメの産業として存在していない「思春期向けアニメ」にチャレンジできる。しかもフォーマットが新しく、製作委員会といったスキームも使わないといった、クリエイティブとプロデュースの座組みをゼロからフルスクラッチで作る実験に参加できるというのは極めて意義深い。やらない理由はない、と思いましたね。

 旧来のアニメの作り方で、当たり前というか、守らないとリスクが上がるよとすら思い込まれていた、いくつかのルールを意図的に破っていく。たとえば「TVで放送しない」というのは従来のルールから言えば基本的に「ない」話です。しかも、リスクをカバーするためにも組成するのが常道である製作委員会方式も今回はやっていません。(C)はミクシィのみです。

 逆に言えば、皆がやりたくてもやれなかったことをやれるタイトルだというのが、すごくやり甲斐もあるし、この作品で新しいスタンダードを作るんだという気持ちで、USPとしても参加しています。

―― USPは純粋に制作としての参加なのですね。フィギュアなどの商品化の窓口としても入っていない?

平澤 制作元請けですね。権利運用の窓口をもつ、という話にもいまの段階ではなっていません。もちろん提案させていただくこともあると思います。ただ、まずはお客さんに受け入れられるフォーマットを作ってから、それと矛盾しない形で商品を作っていきたいということになると思います。

 本作はとてもピュアにお客さんと向き合うタイトルです。製作委員会における利害調整がほぼありませんので、大勢のプロデューサーとメインスタッフの間との意識合わせでリソースを使い果たしてしまうようなこともないんです。

 お互いの得意分野で「こうすれば勝てる!」という方程式に気付いたときには、すでにだいぶ後ろのほうの話数になっていた……というような悲劇も回避できるはずです。もちろん、こういった問題が(従来の製作委員会方式で)毎回起こるわけではありませんよ(笑)。

 そして何よりも、ミクシィさんには“迷ったときにはユーザーに聞く”という文化があって、それがとても有効に機能していると思います。

(次ページでは、「2年後に向けて“おまじない”するアニメの世界と、2時間に1度“通知表”が返ってくるアプリの世界」)

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