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SNSとストーリーコンテンツで移住促進の架け橋に

移住検討者「有益な地域情報が見つからない」、その課題に挑む「RegionWire」

2015年08月10日 09時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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 合同会社RegionWireは8月6日、SNSを活用しながら全国各地の移住者募集地域(市町村)と移住検討者(ユーザー)間で情報の架け橋となるサービス「RegionWire」をスタートした。

 都会の過密化、地方の過疎化が進み、地方創生の必要性が叫ばれる昨今、地方自治体では移住を促進するさまざまな施策が始まっている。移住に対する機運も、インターネットの普及や東日本大震災をきっかけとした価値観の転換などを背景に、若年層を中心に高まっているという。

都市在住の20~40代の過半数が地方移住に前向き(内閣府調査)

 移住促進が期待される一方、現状では、地域と移住検討者の間に、必要な地域情報がうまく伝わらない“溝”が存在すると、RegionWire代表の小槻博文氏は指摘する。

RegionWire代表の小槻博文氏

 「たとえば、移住相談施設は全国各地の情報が網羅されており、その分、個々の地域が埋没しがち。情報の拡散もその施設を訪れた相談者にとどまってしまう。移住情報ポータルは要項的内容で、他地域との違いが分かりづらく、強い興味を喚起するものではない。一方、詳細な情報を提供できる地域独自サイトも立ち上がり始めているが、そもそもその土地に関心がある人にしか読まれないなど、いずれにおいても課題がある」。

 実際、移住検討者も「移住に関する情報が十分でない」という不満を抱いていることが、政府の調査でも明らかになっている。問題は「これまでの自治体の施策は、まず数多の情報の中から、いかにその地域に“気づいてもらうか”という視点が欠けている。気づいてもらえなければ、その地域は存在していないと同じ」と指摘する。

移住検討者も「移住に関する情報が十分でない」という不満を抱いている

いかにその地域に“気づいてもらうか”という視点が欠けている。気づいてもらえなければ、その地域は存在していないと同じ

 RegionWireは、まさにその「最初の気づき」に着目したサービスとなる。具体的には、地域の魅力を伝えるストーリーコンテンツ制作と、SNSのソーシャル性による情報拡散力で、情報を発信したい地域と、自分にあった情報がほしいユーザーの双方を支援する。

 ストーリーコンテンツ制作について、同社は、実際に徳島県美波町の地域活性化に関わり、地域事例を取材・掲載するFacebookページ「地方創生のススメ」の運営経験を持つ。そのノウハウを使って、移住者誘致を希望する地域の魅力を、単なる移住募集要項を集約・掲載するのではなく、実際に取材して、インタビューを基にしたストーリー記事として編集。「だれでも楽しめる内容にすることで移住への興味を喚起する」(小槻氏)という。

ストーリー記事化により移住者の興味・関心を喚起

 こうして制作された地域情報は、SNSのソーシャル性を活かした仕組みで拡散する。

 用意されたRegionWireサイトに移住検討者が登録すると、希望の地域や暮らし方などの条件に応じて、一人ひとりの希望にあった記事がリコメンドされる。このサイトはFacebookと連動するため、所縁のある友人に相談することが可能(今秋実装予定)。さらに特定の地域を応援したいユーザーが「地域サポーター」として名乗りを上げることで、記事がFacebookでシェアされる。地域サポーターには、抽選で地域特産品が贈られるインセンティブの仕組みもある。

RegionWireの画面構成・機能概要

 さらに記事はRegionWireのみならず、月間リーチ数20万人というFacebookページ「地域創生のススメ」にも掲載されるため、情報拡散の促進が期待できる。

 「SNSによる情報拡散の仕組みというハード面と、ストーリーコンテンツといソフト面の双方を支援できるのがRegionWireの強み」(同氏)とのことで、SNSを活用しながら地域と移住検討者の接点を創出する「移住ソーシャルファインディングサービス」と紹介している。

 なお、すでに宮崎県小林市、沖縄県国頭村、徳島県海陽町、徳島県美波町の4自治体でモニター導入が決定済み。今後も自治体への提案を進め、年内に10地域分、2016年に50地域分の記事掲載をめざす。税抜価格は、基本情報・インタビューの計3本の記事制作が10万円、掲載料が6カ月で18万円、年間で30万円。

 ユーザーは無償(要登録)で利用可能。サービス開始から9月13日まで、Facebookまたはメールアカウントで会員登録したユーザーにAmazonギフト券を抽選でプレゼントするなど、自治体への提案と同時にユーザーの獲得にも努める方針だ。小槻氏は「RegionWireを通じて、地域情報の発信、移住に対する意識変容の促進、情報収集のサイクルを作りたい」と意気込みを語った。

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