11月1日から国内で順次公開される映画「スティーブ・ジョブズ」。監督のジョシュア・マイケル・スターン氏に、制作にまつわるエピソードを聞いた。
—「スティーブ・ジョブズ」の監督は、依頼があって受けたのでしょうか。それとも志願したのですか。
「監督をやってほしいとプロデューサーから電話で依頼があった。映画化の構想はスティーブ・ジョブズの生前からあったようだが、僕に連絡が来たのは彼の死後。実は始め、怖いと感じたんだ。約2時間で語るのは難しい人物だし、彼は世界中であまりにも有名だ。だから、上手く描けるのか不安に思った。彼の人生の内、どの年代にフォーカスすればいいのかも非常に悩んだ」
—本人に似ていると話題のアシュトン・カッチャーは、誰が配役したのでしょう?
「僕が依頼した」
—初代iMac、あるいはiPhoneの登場以降にジョブズを知って、彼をカリスマ視している人も多いようです。しかしそれ以前、例えばApple IIやLisaの時代から彼を知っている人には、彼はまた違った風に見えるかもしれません。あなた自身は彼をどう捉えているのでしょう。
「若いうちからアイディアに溢れていた、起業家精神が旺盛な人物だと思う。常に“次へ次へと”と考えて行動を起こしていく彼の姿勢は、今の時代に大きな影響を与えている。一方で、人間的には完璧でない部分もある。彼は、『愛情』や『家族』よりも『次に何をするか、次に何を作るか』ということを大切にしていたように思える。感情を自分から切り離しているというか。先見の明がある人物、世の中を変えられる人物というのは、そういった節があるようだね」
—長年アップル製品を追い続けているファンの中には、彼のことを神格化して見ていて、彼に関するかなり細かなエピソードを憶えている人もいます。製作中、コアなファンを意識することはなかったでしょうか。
「彼の細かなエピソードが存分に盛り込まれた映画を見たいファンもいると思うけど、ディティールは追究し過ぎないようにした。彼に対する印象は人によって全く違うと思うし、『特定のファンにとっての彼』を描こうとは特にしなかったかな」
