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元月アス編集長・遠藤諭が語る

やったぜ! 新ポメラ  ワラジ形コンピュータへの愛と親指シフトについて

2011年11月16日 13時00分更新

文● アスキー総合研究所所長 遠藤諭(@hortense667

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ガラパゴスの日本には
ガラパゴスなやり方がある

 ポメラの詳しい製品内容は他の記事にたくさん書かれていると思うが、今回もう1つ「やってくれた!」ことがある。日本語入力にPCや携帯で実績のあったATOKを搭載しているのが大きな特徴だったポメラだが、今回は、文字キー配列として「親指シフト方式」(NICOLA方式)を選べるようにしたことだ。

 親指シフトというのは、富士通が同社のワープロ「OASYS」のために開発した独自の文字キー配列である。作家やジャーナリストなど文字で仕事をする人たちに支持者が多いといわれるが、要するに、とてもラクチンに文字入力できる。というか、かくいう私も親指シフトのユーザーの1人である(いまはソフトウェア的にPCの普通のキーボードを親指化して使っている)。

私はOASYS Pocketを初代から3まで使い潰したのだが、これは2とその祖先といわれる「PoqetPC」。この会社、一説には1970年代にTIのSpeak & Spellという歴史的な商品を作った関係者のベンチャーとか

私は、いま毎日VAIO PとGalaxy Tabの2台体制である。サッと出るTab、机の座ってPは、2台が補完しあって理想のモバイル環境を作り出しているともいえる。そのPと新ポメラを比較したところ

 この方式は、キーボードの手前に「左親指シフト」、「右親指シフト」の2つのキーを設定して、これとかなキーを同時に押すことで入力文字が変化することが特徴である。日本語の状態で「J」のキーを押すと「は」、左親指シフトキーと同時に押すと「ば」、右親指シフトと同時に押すと「み」、ちなみに、左親指シフトキーと「Y」を押すと「ぱ」と入力できる(半濁音は親指シフトの発展形であるNICOLA方式)。

 NICOLAというのは、親指シフトが、初期からワープロを導入して公式な文書の作成に使っていた人や印刷関連で使う人がいたことで、DTP分野での利用が期待されていた。そこで、1989年に関係企業が集まり「日本語入力コンソーシアム」という団体を作った、その略称である。富士通はもちろん、IBMやアップル、ソニーや内田洋行、アスキーなどが参加した(「NICOLA」のHP http://nicola.sunicom.co.jp/)。

 アスキーといえば、1980年代にIBM PC互換機の日本語規格の策定をすすめていたが、関係者によると、当時、MS-DOS用の日本語キーボードの1つとして親指シフトを正式に採用しようとしていたという。日本語入力にはさまざまな方式があり漢字変換が不要なものもあるが、親指シフトは、一定の評価と支持層が存在し続けているのがその特徴といえる。

 現在も小説家やジャーナリストなど文字で仕事をする人に、この方式の人が少なくない(勝間和代さんが有名ですね)。しかし、これを正式にサポートしたコンピュータやキーボードは非常に限られている。いくら効率的といってもユーザー数も分からないので、メーカーもおいそれと製品化できないのだ(それでも専門的なユーザー向けに製品は出されてきたが)。

 そんなところへ堂々と「親指シフト配列をサポート」と言ってきたのが、今回のポメラ(DM100)である。これを、快挙といわずどうせよというのだ! 奇跡といってもよい。ニュースを見て何かの見間違いではないかと思った人もいるに違いない。

新ポメラはキーボードの設定がいろいろとできるようになっている。CtrlとCapの入れ替えなど、やはり手で触るものなのでここまでできるのはありがたい

新ポメラには、親指シフトを使う場合のためにキートップに貼って使うシールが付属している。新ポメラとOASYS Pocet2のキーボード手前部分はこんな形になっている

 日本人は、日本語を使っているという点で、そこは、すでに自分たち独自のガラパゴスな課題を抱えているということだ。それには、思いっきりガラパゴスな端末で解決するというのも悪いアイデアではないはずなのである。問題は、グローバルスタンダードが肩で風を切っているITの世界で、それをやる勇気があるかどうかともいえる。

 ポメラは、なんとも暗雲たれ込めた今の日本の雰囲気を、跳ね飛ばしたといっていい。すがすがしく晴れ晴れとした商品ともいえる。しかも、いままでのポメラが小さく手帳のような存在だったのに対して、今度は、大学ノートかレポート用紙の感覚というそれ自身のグレードアップもきちんと果たしている。

 ということで、親指シフトについてだけ書いてしまったが、そうでない人にも断然オススメの商品である。

期待を込めて注文を申し上げますと……

 新ポメラには、iPadなどのタブレット端末のBluetoothキーボードとして使える機能までついている。実は、このときに親指シフト機能は解除されてしまう。これはとても残念なのだが、それなしでも十二分に価値があるのでその点だけを突っ込むべきではない(といってもどこかでファームウェアの更新を心の中で待っている)。

実際に新ポメラで親指シフトしてみた。キーボートは、この薄さ軽さではベストな選択がされているといっても大げさではない

 ファームウェアの更新といえば、1つだけ、親指シフトユーザーなら少しばかり気になる点がある。というのは、「左親指シフトキー」と「右親指シフトキー」の配置なのだが、それぞれ「無変換キー」と「変換キー」に割り振られている。「後退キー」は、「*:」キー。個人的には、より本来の親指シフト配列に近いポジションになる「スペースバー」に「右親指シフトキー」に割り振れる機能がほしい。「無変換キー」は「確定」にもできたらいいと書いておく。

 ATOKという日本語入力の最高の変換システムに、親指シフトというラクチンで効率的だという支持層を持つキー配列。この組み合わせを搭載した端末というのは、実は、いままでなかったのだということもにも気付く。そして、親指でない人ももちろん。このワラジ形コンピュータ的な手で掴めるこの大きさ、軽さ、薄さ、起動の早さ、アルカリ単三乾電池2本で30時間動くというポメラらしさを体感してほしい。

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