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フレッツIPv6のすべてを知ろう ― 第2回

「インターネット(IPv6 PPPoE)接続」と「インターネット(IPv6 IPoE)接続」とは?

NTT東西のIPv6サービスが2方式あるわけ

2012年02月29日 06時00分更新

文● 中野功一

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前回は、NTT東西がIPv6サービスを提供する必要性と意義について解説した。続いては、NTT独自の理由から2種類の方式が提供される同サービスの仕組みを紹介しよう。

独特なNTT東西のネットワーク

 サービスや機能の説明に入る前に、NTT東西とそのネットワークについて簡単におさらいをしたい。NTT東西は会社としてもネットワークとしても、他に国に例を見ない、かなり特殊なものだ。

 NTT東西のサービスを理解する上で、2つのことは必ず知っておかなければならない。

  • NTT東西は直接のインターネット接続サービスを提供しない。ISPが行なう。
  • NTT東西はIPv6による巨大バックボーンネットワークを持っている。

 NTT東西は、ユーザーに対してインターネット接続サービスを提供しない。インターネット接続サービスを提供しているのは、BIGLOBEやOCNといったISPである。たしかに、OCNはNTTグループのNTTコミュニケーションズが提供しているし、同じくグループ会社のNTTPCコミュニケーションズ、ぷららといった会社がインターネット接続サービスを提供している。しかし、これらの会社は、NTT東西とは別の企業として、ISPサービスを行なっている。

 NTT東西が行なえるのは、ユーザーとISPを橋渡しする「ホールセール(卸売り)サービス」にとどまる。これは、1984年に制定された「日本電信電話株式会社等に関する法律」(略称、NTT法)によって、NTT東西の活動内容が規定されているためだ。NTT東西が提供可能なのは同一都道府県内のサービスであり、同一都道府県内どころか全世界を結ぶネットワークであるインターネットへの接続サービスは制限されているのだ。そのため、都道府県内のアクセスはNTT東西が行ない、インターネット接続はISPが行なうという役割分担になっている。

NGNの役割

 また、NTT東西は、「フレッツNGNネクスト」を展開するために作られた、日本全土にまたがる巨大なIPv6ネットワークを持っている。いままで、IPv6は主としてマルチメディア配信などで利用されてきたが、ここに来て、インターネット接続サービスのために利用されることになった。

 NTTでは、このネットワークのことを「NGN(Next Generation Network)」と呼んでいる。また、NTT東西のブロードバンドの商標である「フレッツ」を使って「フレッツ網」と呼ぶ場合もある。もっとも、「フレッツNGNネクスト」の前身サービスである「Bフレッツ」でも、「フレッツ網」という呼び名を使っていたため、同じ呼び名を使うと混乱することがある。そこで本稿では、NGNと呼ぶことにする。NGNは通信業界での一般用語としての次世代ネットワークという意味もあるが、ここではNGNはNTTの固有ネットワーク名として用いる

新たな2つの接続

 以上のようにNTT東西は会社的にもネットワーク的にも特殊性を持っている。そのため、IPv6サービスといっても話は簡単ではなかった。NGNの通信とインターネット通信の切り分けの問題、多量のルーティング情報の扱いといった問題など、新しいサービスを提供するにあたって、考えるべき課題はいくつもあった。

 長期にわたってNTT東西、JAIPA(Japan Internet Provider Association、日本インターネットプロバイダ協会)が論議を重ねた結果、最終的にまとまったのが、次の2つの接続方法だ。

  • インターネット(IPv6 PPPoE)接続
  • インターネット(IPv6 IPoE)接続

 「インターネット(IPv6 PPPoE)接続」(以下、「IPv6 PPPoE接続」)はトンネル方式と呼ばれ、検討されていたものだ。また、「インターネット(IPv6 IPoE)接続」(以下、IPv6 IPoE接続)は検討段階ではネイティブ方式と呼ばれていた。どちらの接続名称も、NTT東西が5月27日に行なった報道発表に合わせて正式名称が公表されている。「トンネル方式」、「ネイティブ方式」といった名称は、方式名として引き続き用いられている。

 方式名の頭に「インターネット」とついているのは、これらサービスがインターネット接続サービスであることを明示しているためだ。NGN上に構築されたフレッツ 光ネクスト利用者専用のWebサイト「サービス情報サイト(旧称フレッツ・スクウェア ネクスト)」、VPNサービスやひかり電話の利用の場合はインターネット接続が不要なため、IPv6を使っていても、上記2つインターネット接続サービスは利用しない(正確には、サービス情報サイトへのアクセスなどにはIPv6 IPoEが使われるが、インターネット接続ではない)。

利点が多いが問題点もある「IPv6 PPPoE接続」

 IPv6 PPPoE接続に使う「PPPoE(PPP over Ethernet)」は、Ethernet上でPPP(Point to Point)セッションを作り、ユーザー認証を行なうための技術だ。いままでのBフレッツやフレッツ光ネクストは、IPv4のPPPoE接続を使っている。PPPoEクライアントからユーザー名とパスワードを入力する、もっとも一般的な方法だ。

 IPv6 PPPoE接続は、IPv4 PPPoE接続と同様にISPとの接続をPPPoEで行なうものだ。今までと同じ方法を踏襲できる。ISPから見ると、今までの方式とほぼ同じユーザー認証を使うことができ、導入が容易だ。一方、インターネットとNGNへの両方のIPv6経路が生じる。インターネットアクセスはIPv6 PPPoE接続経由だが、NGNへはPPPoEを使わないIPv6接続でアクセスすることになる。このように、1つの端末が複数のIPv6アドレスを持つ状態をマルチプレフィックスと呼ぶ。

「インターネット(IPv6 PPPoE)接続」の方式

 IPv6のマルチプレフィックスとNGN閉域網の組み合わせの結果、インターネットに送られるべきパケットがNGNに送られること(あるいはその逆)により、パケットが喪失し、通信が正常に行うことができない事態が起こる。これが「マルチプリフィックス問題」だ。NTT東西が世界でも類を見ない大きな規模でインターネットに接続されないIPv6ネットワークを有しているが故に起こる、きわめて特殊な問題である。

 この問題を解決するために、IPv6ルーティングを手動で制御する機能が必要になる。そのために、「IPv6アダプタ」と呼ばれるハードウェアが別に必要となる。ブロードバンドルーターと似たようなものだ。

IPv6 IPoE接続の仕組みとは?

 IPv6 IPoE接続で使う「IPoE」とは、IP over Ethernetの略で、IPをEthernet上で送るという意味だ。何のことはない、普通のEthernetを使った通信を指す。また、検討段階で用いられていたネイティブ方式だが、これも「自然のやり方」ぐらいの意味だ。あえて、PPPoEに対比した表現が必要だったので、「PPPoEを使わない本来の自然な方法」だからネイティブと呼ばれていた。つまり、普通につなぐのがIPoEであり、ネイティブの意味なのだ。

「インターネット(IPv6 IPoE)接続」の仕組み

 IPv6 IPoE接続は、パソコンをそのままフレッツNGNネクストに接続する。NGNのIPv6インフラを利用し、パソコンにIPv6アドレスを自動構成し、PPPoEを介さず、直接IPv6通信を行なう。ユーザー側からは回線申し込みを行ない、回線が固定されるという不便さはあるが、基本的に今までの環境を変更することなく利用できる。

 IPv6 IPoE接続は、NGNと直接IPv6の通信を行なう。そのため、ルーティング先は1つになり、IPv6 PPPoE接続のようなマルチプリフィックス問題は起きない。NGNの技術的な理由によりISPと接続するのではなく、「ネイティブ接続事業者」を介してインターネットに接続するが、ユーザーとしては意識することはない。

 ネイティブ方式では、接続したISPの固有のIPv6ルーティング情報をNGN内で持たなければならないとの検討がなされた。300社にも上るISPがNGNに乗り入れた場合、NGNのネットワーク機器ですべてのISPのルーティング情報を管理しきれないとの技術的な判断があったようだ。その結果、ISPを直接接続するのではなく、数を3社に限定し、3社のネイティブ接続事業者がNGNに接続、そしてISPはこのネイティブ接続事業者に接続するという方法が採用された。これにより、ルーティング情報を管理しきれないという問題を回避したのだ。

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 今回は、IPv6 PPPoE接続とIPv6 IPoE接続の仕組みについて説明を行なった。次回は、実際にIPv6 PPPoE接続方式のサービスを利用し、その使い方や使い勝手などについて見ていこう。

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