10月5日から開催されるIT・エレクトロニクスの総合展示会「CEATEC JAPAN 2010」にて、UQコミュニケーションズは「WiMAX 2」のデモを出展する。現状でも無線インターネット接続では最速のモバイルWiMAXが、さらに高速化されるというこの規格は、いったいどのような特徴を備えるのか? 展示会に先立ち開催された報道関係者向けの説明会で、同社ネットワーク技術部長の要海敏和氏による説明が行なわれた。
速度は330Mbps! 既存のWiMAXとの後方互換性あり
WiMAX 2の名で呼ばれる無線通信規格「IEEE 802.16m」は、既存のWiMAX(IEEE 802.16e)をベースに、さらなる高速化を実現しようという技術である。最大の特徴は、なんと言ってもその速さ。ダウンリンクで330Mbps、アップリンクで112Mbpsと、現状のWiMAX(ダウンリンク40Mbps)の8倍以上にもなる速さだ。この値は理論上の最高速度だが、実効速度も50%程度の環境で100Mbps以上になるとのことで、無線系最速はもちろん、大半の家庭向け光ファイバーインターネット接続よりも高速となる。
無線通信方式には、WiMAXと同じ「OFDMA」(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)を用い、周波数帯域も(日本では)WiMAXと同じ2.6GHz帯を用いるなど、既存WiMAXとの互換性に配慮しているのも特徴だ。WiMAXが10MHz分の帯域幅を用いて通信するのに対して、WiMAX 2では10/20/40MHzの3パターンの帯域幅で通信できる。つまり、WiMAX 2の基地局はWiMAX端末、WiMAX 2端末のどちらでも利用できるし、既存のWiMAX基地局しかないところでも、WiMAX 2端末はWiMAXとして利用できる。
高速無線通信技術としては、次世代携帯電話で使われる「LTE」(3GPP Release 8)も、2010年末にはNTTドコモなどが商用化する予定で準備が進んでいる。LTEも最高で理論値150Mbpsをうたう高速通信規格であり、特に携帯電話事業者が積極的に取り組んでいるとあって、「LTEがあればWiMAXは不要」という意見もある。またイー・モバイルは10月から、3G系のDC-HSDPA方式による下り最高42Mbpsのサービスを開始する予定だ。
これについて要海氏は、「DC-HSDPAやLTEのピーク速度は、エラー訂正を含めない実用ではありえない数字」と述べ、対するWiMAXのピーク速度はエラー訂正も含めた値であり、同様の条件ではDC-HSDPAは35Mbpsと、40MbpsのWiMAXを下回るという。同様に2x2のMIMOアンテナを使うLTEは31.3Mbpsと、こちらもWiMAXには及ばないとしている。
商用サービスは2012年? 課題は帯域の拡張
WiMAX 2の商用化までのロードマップも示された。規格は現在、標準化作業の最終段階にあり、2010年末には標準化が完了する予定とのこと。それを受けて、機器の互換性を認定する「WiMAX認証プログラム」の準備が2011年末までには完了し、2012年には商用利用が可能になるという。
ただし、現在UQコミュニケーションズに割り当てられている周波数帯域は、2.595G~2.625GHzの30MHz分である。これでは40MHz分の帯域を必要とするWiMAX 2には足らない。そのため同社では、WiMAXの直上の帯域を使っていて、現在はサービス終了しているモバイル放送(株)の衛星放送サービス「モバHO!」の帯域跡地を利用できるように、総務省に対して要望しているという。また、アナログ放送で空く700MHz帯についても要望はあるとのこと。今後の展開に期待したい。
冒頭で記したCEATEC JAPAN 2010でのデモでは、下り330Mbpsを想定した動態デモが披露されるとのこと。複数のハイビジョン映像を同時にストリーミングするといった高負荷なデモが見られるようだ。帯域が確保できないのでデモは残念ながら有線とのことだが、WiMAX 2が実現する超高速無線通信のイメージを体験してみたいという人は、UQブースに足を運んではいかがだろうか。