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コスト削減100本ノック 第33回

DRサイトのOSやアプリケーションが実はコストの元だった!

【33本目】仮想化活用でDRを今までの半額に抑える方法

2010年03月24日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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災害や事故が起こっても業務を継続可能にするDR(Disaster Recovery)の実現に多くの企業が取り組んでいるが、コストや運用管理に関して大きな課題が横たわっている。こうしたDRの課題を解決し、コストを大幅に削減できるのがノベルのPlateSpine Forgeだ。

サーバー、OS、アプリケーション
DRは高い!

 ビジネスがITに大きく依存するなか、多くの企業が事業継続プラン(BCP:Business Continuity Plan)の策定に取り組んでいる。そのなかで、災害や事故などでシステムが被害を被っても、システムを早急に復旧するためのDRは、BCPのなかで大きな役割を果たしている。

 一般的なDRの手法としては、メインのシステムを動かすプライマリサイトのほかに、DRサイト(バックアップサイト)を遠隔地に用意し、そこにスタンバイシステムを設けておくことだ。メインシステムとスタンバイシステムはWAN回線等で常時同期を行ない、障害が起こった際には迅速にDRサイトに切り替えるわけだ。

 しかし、実際こうしたDRの構築は非常にコストがかかる。スタンバイシステムには、メインシステムと同じ構成のサーバー機やストレージ、OS、アプリケーションなどが必要になるし、それらを同期するためにはレプリケーションやリモートバックアップのソフトを導入しなければならない。また、遠隔地とのデータのやり取りをテープ等で行なうと結局人手を介することになり、かといってWAN回線を用いるとコストがかかる。もちろん、これらのシステムを構築・運用するための人員も必要になる。特にサーバーが仮想化されている場合は、システムが複雑化する傾向にあり、人的リソースの確保に各社とも頭を悩ませている。

ノベル 営業本部 SEグループ マネージャー 鈴木広紀氏

 こうしたDRのまつわる悩みを解決し、大きなコスト削減を実現するのが、ノベルの「PlateSpin Forge」である。「最低でも既存のDRソリューションに比べて、半額にはなります」(ノベル 営業本部 SEグループ マネージャー 鈴木広紀氏)という新しいDRソリューションの安さのカラクリはどこにあるのだろうか? 

DRサイトには
バックアップイメージが保存される

 PlateSpinは仮想サーバーと物理サーバー間のマイグレーションを実現する技術。これを応用したのがPlateSpin Forgeで、ローカルHDDに仮想マシンを立ち上げ、物理・仮想を問わず、サーバーのデータをまるごとバックアップすることができる。サーバーの障害時には、PlateSpin Forge内の仮想サーバーで業務を継続。サーバーが復旧したら、同期をかけ、元に切り戻せばよい。さらにForge上の仮想マシンはそのままテスト環境として利用すれば、眠ったシステムにはならないわけだ。

災害復旧までのPlateSpinの動作

災害復旧までのPlateSpinの動作(その2)

 では、実際にPlateSpin Forgeでどれくらいコストがカットできるのか? 同社が行なった既存のレプリケーションソフトとのコスト比較を見ると、なんと1台あたりで100万円くらいかかっていたコストが54万円に収まり、半額近いコストダウンになるという。

ノベル試算のコスト比較(10台を仮想化して保護)

 ここまで安価に済む理由はいくつかあるが、一番大きいのが、やはりDRサイトでOSやアプリケーションのライセンスが不要という点だ。一般的なレプリケーションソフトの場合、DRサイトにも同じ構成のサーバーが必要なので、OSやアプリケーション、そしてレプリケーションソフトウェアが必要だが、「PlateSpin Forgeはあくまでサーバーからとったバックアップイメージを眠らせているだけなので、コストは確実に下がります」(鈴木氏)とのこと。また、アプライアンスで提供されるため、仮想化ソフトウェアやOSもすべて同梱されるほか、サーバーやストレージも含まれる。この点もコスト削減に大きく寄与しているはずだ。さらに導入も転送元のサーバーとユーザー名、パスワードを登録するだけの簡単設定。これに関しては発表会でも実演済みだ。

 この試算には入っていないが、PlateSpin Forgeの場合、WAN回線も安価な回線で済む。「回線メンテナンス等で一度セッションが切れると、最初からイメージを送り直す製品もあります。その点、PlateSpin Forgeは単につなぎ直すだけで、差分・圧縮転送をするので、Bフレッツで十分です」(鈴木氏)とのこと。

 3月8日にはリコーITソリューションズが、このPlateSpin ForgeをベースにしたDRシステムの導入コンサルティングや構築サービスを発表した。PlateSpin Forgeの導入がますます確実に、容易になるわけだ。

切り戻しまで考えていない
DRサイト構築も多い

 BCPは今後ISO化される予定となっており、そこではDRの定期訓練や監査、つまり切り替えがきちんと行なえるかを検証する必要が出てくる。しかし、「多くの会社はこの定期訓練/監査をきちんと実施していません。現状のシステムでは切り替えの手順があまりにも複雑で、切り戻しにもお金と時間がかかります」(鈴木氏)という状況で、いざというときに使えるDRになっているかどうか、かなり微妙だ。その点、PlateSpin Forgeでは、DRの仕組み自体をシンプルにし、しかも自動化を進めることで、確実なシステムの復旧を可能にする。

 ターゲットはBCPに関して興味を持つ地方銀行と製造業とのこと。DRを安価に構築する切り札として、2010年はますます注目を集めそうだ。

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