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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ

世界の「5台」のコンピュータの中身

2009年11月20日 06時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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クラウドコンピューティングは
1943年に予言されていた!?

Google Chrome 一周年記念パーティー

「Google Chrome 一周年記念パーティー」は、同社及川卓也氏の「ブラウザのルールを変えた」という乾杯の挨拶からはじまった。たしかに、未来の位置づけを見据えたブラウザが、Google Chromeなのだといえる

 10月8日、グーグルは同社のWebブラウザーである「Google Chrome」の1周年を祝うイベントを、東京・青山で行なった。Chromeは、「Chromium」というオープンソースのプロジェクトを基にしている。その開発コミュニティーやユーザーに呼びかけたイベントだが、わたしは「future of browsers/ディスプレイ時代のブラウザ」と題したトークをさせてもらった。

 クラウドコンピューティングでよく引き合いに出されるのが、IBMの初代社長トーマス・ワトソン・シニアが語ったといわれる「世界のコンピュータ市場は5台くらいだろう」(I think there is a world market for maybe five computers.)という言葉だ。1943年に発言したとされているものだが、これをサン・マイクロシステムズのCTOグレッグ・パパドプラスが引用して話題となった。

本当にワトソン・シニアがこのような発言をしたのかどうかについては議論がある。英語版Wikipediaでは、「Famous misquote」(有名な誤引用)とされている。

 この引用ほど、クラウドコンピューティングを簡潔に言い得た例はないかもしれない。たしかに、コンピューティングのグローバル化が進めば、アマゾンやグーグルやセールスフォースなど、世界でも5社ほどのクラウドがあれば、すべてまかなえるような気もしてくる。事実、前回のコラムで触れたように、世界のサーバーの17%(約1000万台=バーチャルなサーバーと見られるが)はグーグルのものだという見積もりがある。まもなく、世界のサーバーの5分の1になるのではないか。

 しかし、トーマス・ワトソン・シニアが言ったとされる「コンピュータは世界で5台の市場」は、少しばかり事情が異なる。1970年代には世界のコンピュータ市場を席巻してガリバー的地位を築くIBMだが、初期にはコンピュータの需要を低く見積もっていたために、UNIVACに市場でのリードを許した。このエピソードは、巨人IBMのコンピュータに対する初期の理解の甘さを揶揄する話として出てくるのだ。

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