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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ

テレビも映画も網膜も、ただの「画面」になる

2009年12月07日 06時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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Google Chrome OS

グーグルが開発中の「Google Chrome OS」。開発版は「chromium os」となっている。起動すると、WebブラウザーであるGoogle Chromeが全画面表示で立ち上がるだけの非常にシンプルなOSだが、あらゆる「画面」の基盤となる可能性を秘めている。2010年後半に正式リリースされる予定。

 11月19日、グーグルは「Google Chrome OS」をプレビューした。Chrome OSというのは、前回(世界の「5台」のコンピュータの中身)で触れたWebブラウザーの「Google Chrome」やクラウドに関する議論とも、大いに関係がある。世界に5台のコンピュータ(正確にはクラウド)しかいらないような環境では、ほとんどの処理はクラウド側のサーバーがやってしまう。ユーザー側のOSでは、ブラウザーさえ動けばいいわけだ。

 その結果として訪れるのが、「ディスプレイ時代」ともいうべきものだ。PC、モバイル、携帯から始まって、デジタルサイネージから、映画、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、RID(網膜操作ディスプレイ)まで。いままで、およそ別の世界のものと思われていたさまざまな「画面」が、1つの共通のプラットフォームに近づいていく可能性がある。

 映像であろうが、文字であろうが、ゲームの画面であろうが、どの画面にも自由に表示して見ることができるようになる。脳科学の世界では、すでに2匹のザリガニのシナプスを電子デバイスを介して繋いだりしているそうだ。脳に直接映像や文字を送り込めるようになるまでは、世界のメディア年表の上では、「画面の時代」と記されるべきだろう。

 「どの画面にも、何でも出せるようになる」などと書くと、「エンドウさん、あなたは業界というものを分かっていない」とか、「それで仕事をしているのではないから仕方がないですね」とか言われそうだ。しかし、すべての画面で何でも出せるようになるということを、象徴するようなことがいま起こっている。ゲームのプラットフォームがそれだ。

 歴史的には、最初はゲーム機やアーケード機が中心で、次にPCも入ってきて、10年ほど前に携帯電話が加わった。そこにいま、iPhoneが加わり、ソーシャル・ゲームが出てきて、馬鹿げたほどの勢いで伸びている。つまり、いままでゲーム画面ではなかったところが、ゲーム画面になってきている。

 単純に、iPhoneとiPod toutchを合わせて5000万台のプラットフォームだ、というような議論ではない。重要なのは、iPhoneやソーシャル・ゲームでは、ゲームの提供プロセスが変わったということだ。実のところ、いま我々のまわりにある「画面」の裏側には、ゲームくらいは十分処理できるシステムがついている。かつてはゲームパッケージという配布手段しかなかったが、App StoreやSNSによって、「この画面でもやれるじゃん」ということになったのが、いまなのだ。

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