6月30日から7月2日までの3日間、千葉・幕張メッセで、“Computer World
Expo/Tokyo '99”が開催された。CTI(Computer Telephony Integration)とはいっても、アプリケーションやシステムとしては、電話と密接な業務向けということで、CRM(Customer
Relationship Management)の展示が多かった。また、電話/FAXのIP化(VoIP)をにらんでのハードウェア製品も多数展示されていた。昨年に比べて音声合成/認識/認証といった音声がらみの展示が増えていたように感じられた。
音声認識、音声合成が進歩
レルナウト・アンド・ホスピー・ジャパン(株)は、ベルギーのレルナウト・アンド・ホスピー・スピーチ・プロダクツ(Lernout & Hauspie Speech Products)社の日本法人。L&Hは多言語・マルチプラットフォーム対応の音声認識(Automatic Speech Recognition)、音声合成(Text to Speech)、音声圧縮(Speech and Music Coding)を専門に研究している会社である((株)ビバリウムのドリームキャスト対応ゲーム『シーマン』にも同社の音声認識技術が使われている)。ブースでのデモンストレーションでは、単語(「やきとり」や「ぎゅうどん」)を読み上げて、あらかじめ登録してある言葉(“焼き鳥”、“牛丼”)を表示させていた。この認識技術では、発声する話者のトレーニングが不要であること、不特定話者で認識が可能であること、単語の追加が簡単(単語の読みを入力するだけ)であることなどが特徴。
同様の音声認識技術を、【CT World Expo No.1】で紹介したNTTデータもデモンストレーションしていた(NTTデータのデモは同社の独自技術による)。日本IBMの『ViaVoice』や、NECの『SmartVoice』などの文章認識(Dictation)と異なり、単語(ないし短文)に限られるが、発声者の登録やトレーニングがまったく不要なため、電話の自動応対システムや、決まったフォーム入力の省力化などに利用しやすい。
また、先月英語版を発表したばかりという音声合成/文章読み上げソフト『RealSpeech』による読み上げのデモンストレーションも実施していた。英語版と、開発中という日本語版を聞いたが、記者が今まで聞いたことのある音声合成による読み上げとはまったく違い、実に自然に聞こえた。
・エル・アンド・エイチ・ジャパン
http://www.lhj.co.jp/
声紋による認証システムも
日商岩井インフォコム(株)のブースでは、米T-NETIX社が開発した、声紋分析による認証システム『SpeakEZ Voice Print』を展示していた。任意の言葉をパスワードとして登録し、それを使ってWindowsのパスワードの代わりにしたり、あるいはもっと高度なセキュリティーの必要な、さまざまな分野に応用したりできるという。SpeakEZによる認証に必要なリソースが、少なくて済むことを強調していた。Windows版であれば、PentiumクラスのCPUと16ビットのサウンドカード、およびマイクがあればよい。日本での発売にあたっては、日商岩井インフォコムが協力し、その結果が現在の英語版にもフィードバックされているという。パスワードを、同じ言葉を4回発声することにより登録する仕組み。認証の度合いは、厳しくもゆるくも設定できる。米国では、このSpeakEZによる認証システムが、刑務所内の電話の本人認証に使われているという。
・日商岩井インフォコム
http://www.infocom.co.jp/
顧客と顧客担当者のブラウザー画面を同期
日本アイ・ビー・エム(株)は、同社のCRM関連ブランド“Corepoint”を前面に出して、中心となるウェブベースのCRMアプリケーション『Corepoint Contact Center』とその周辺ソフトを展示していた。また、2日には“コアポイント技術セミナー”を開催し、コアポイントの技術が、同社の提唱する“e-Business”のなかで果たす役割をアピールした。アイ・ビー・エム・アジア・パシフィック・サービス(株)のAPコアポイントテクノロジー課長、永井孝尚氏 |
ブースのデモで目についたのは、まず、Javaアプレットを使い、インターネットを間にはさんで、顧客と、顧客担当者とで、ウェブブラウザーの画面を同期させることができる『Corepoint
Web Collaboration』。それから、大量の電子メールを適切なカテゴリーに仕分けしたり、担当者に転送したりすることができる『Corepoint
Mail Analyzer』である。
Web Collaborationでは、ウェブブラウザーのウィンドウの大きさや、スクロールまでも同期させることができ、ウェブウィンドウ内にマウスで線を書き込むと相手にもまったく同じものを表示するといったことが可能。ウェブの画面データではなく、URLや、スクロールの度合いの情報を送って実現しているので、通信速度が遅い場合でも、十分実用になるという。
顧客(右)と、顧客担当者(左)のパソコンに見立てたデモ |
Mail Analyzerでは、カテゴリー分けの基本となるルールを作成する際に、通常のメールソフトと違って、“●●という言葉が出たら△△という処理をする”という条件を書き連ねる必要がない。送られてくるメールのサンプルを、一度人間が手作業でカテゴリー分けし、そのカテゴリー分けされたメールデータから、Mail
Analyzerがルールを自動生成する。これにより、類似文書も含めて高い比率での仕分けが可能としている。
そのほか、ViaVoiceをクライアント・サーバーシステムで利用する『ViaVoice
Telephony』、電話で人の名前を告げると、自動的にその人にダイヤルする『Directory
Dialer』なども紹介していた。
・コアポイントのページ
http//www.corepoint.com/japanese/corporate/
corporate.html