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コーディングエージェント「IBM Bob」やノウハウを集積した「ALSEA」をアピール

AI駆動型開発で生産性倍増を狙うIBM セキュリティ、トークンコスト、品質の課題をどう解決する?

2026年09月17日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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 日本IBMの年次イベント「Think Japan」が、2026年9月8日、オークラ東京で開催され、基調講演に登壇した日本IBMの村田将輝社長が、フロンティアAIを活用した製品およびサービスにおけるセキュリティ対策について説明。さらに、AIエージェント駆動型エンタープライズ開発支援パートナーと位置づける「IBM Bob」およびAI駆動開発ソリューション「ALSEA」で目指す成果などについて触れ、2028年度以降には、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)全体の生産性を倍増させる考えを示した。

Think Japanに登壇した日本IBMの村田将輝社長

業界全体の防御優位性に向けたIBMの3つの施策

 2026年8月1日付で社長を就任した村田氏にとって、顧客やバートナーを対象にした大型イベントへの登場するのは、今回が初めて。「前提が変わる-転換点に立ついま」と題した講演のなかで、村田社長は、フロンティアAIを活用したセキュリティ対策の取り組みについて言及した。

 村田社長は、「IBMは、業界全体の防御優位性に責任を果たしたい」と述べ、3つの施策を推進していることを示した。

 1つめが、「業界横断プロジェクトへの参加と貢献」だ。IBMは、Anthropicとの協業により、「Project Glasswing」に参画しているほか、OpenAIの「Daybreak」にも参画。さらに、Red Hatやパロアルトネットワークスとともに、「Project Lightwell」を推進し、AI時代に対応したエンタープライズ向けセキュリティの強化に取り組んでいる。

 また、金融庁の作業部会など、日本政府が主導する取り組みにも参画。政府機関やパートナーとの協力を通じて、IT実務の観点からフィードバックを行なっているという。

 2つめが、「IBM製品の脆弱性、不具合の検査完了と継続改善」への取り組みだ。AnthropicのMythosや、OpenAIのGPTなどの複数のフロンティアAIを活用し、共通のルールおよびシステム上で管理。IBMが提供している製品やサービスを対象にした脆弱性や不具合の検査を行なっている。2026年5月末までに検査を一度完了したが、フロンティアAIモデルの進化を捉えながら、継続的な検査を実施。自社製品に留まらず、オープンソースソフトウェアに対しても、早期にセキュリティパッチを開発し、提供する考えを示した。

 3つめが、「お客様システムの保護を最優先する」ことである。約4年前に、Log4jに関する脆弱性が発見された際、IBMは、オープンソースとの関係などについて正確な発信を行ない、現在では、 IBMの製品およびサービスに、6万2000のオープンソースプロジェクトを採用していることを明らかにしている。

「オープンソースへの依存関係を明確にし、IBM自身が行なってきた対策を、短期対応、優先対応、本格対応、 AIエージェント対応の4つに分類し、包括的で、早期の防御優位性を確立することに全力を尽くしている」

セキュリティに向けた3つの施策

 こうした取り組みを示しながら、「ソフトウェアの脆弱性自体は、新しい問題ではない。そして、すべての脆弱性を塞ぐことは非現実的である。2016年~2026年までの10年間で、セキュリティの脆弱性は700%になっている。Project Glasswingの初期成果で発見されたものは、すべてを明らかになっているが、そこでは、高・重大レベルの脆弱性が6000以上見つかっている」とコメント。「オープンソースは、社会インフラの多くで使われている。オープンソースのセキュリティ問題の責任を、IBM自らが担うことを目指す」と宣言した。

 オープンソースに対するセキュリティ問題に取り組んでいる「Project Lightwell」では、2026年5月の発足以降、64件の未公開の脆弱性に対して、8000件の検証済みセキュリティパッチを開発し、提供を開始したことを報告。「日本でも、DXにおいて開発されたアプリケーションで、多くのオープンソースが利用されている。Project Lightwellの取り組みは、日本においても重要な取り組みになる」と強調した。

15万人の社員がコーディングエージェント「IBM Bob」で生産性を向上

 一方、「IBM Bob」および「ALSEA」によるシステム開発の変革についても説明した。

 村田社長は、「2026年は、システム開発のあり方が、過去40年で最も変わる年になる」と定義し、1980年代には、これまでの主流だったウォーターフォール型開発において、開発標準化ガイド(ADSG1)を示し、IBMが中心となって標準化を推進したこと、それから約40年を経過した2026年になり、エンタープライズAI向けの開発メソッドとシステム開発、運用、プロジェクト管理までを包括的に支援する「AI for IT」(IT変革のためのAIソリューション)を新たに提唱し、これにより、AI駆動型開発によるシステム開発へと、大きく転換するタイミングが訪れていることを示している。

AI駆動開発によるシステム開発の変化

「IBMは、すでにAI駆動型開発を導入している。2025年4月に開始し、現在では15万人のIBM社員が、コーディングエージェントであるIBM Bobを利用している。IBMでは、Instana、Guardium、Concert、Maximoといったソフトウェアを自ら開発しており、ここにAI駆動型開発を導入した結果、45%の生産性改善が確認できた」

 IBM Bobでは、マルチモデルとハイブリッドクラウドの考え方をベースにしており、エンタープライズAIを構成する業務アプリケーション層、制御層、企業知識層、モデル層、資源層のうち、制御層と企業知識層を担い、迅速性、生産性、安全性を実現するものだと位置づける。

エンタープライズAIの5つの階層

 マルチモデルではAnthropicのClaudeへの対応に加えて、今後は、OpenAIのGPTや、GoogleのGeminiも採用。また、NVIDIAのNemotronや、PoolsideのLaguna S 2.1も活用することになる。

「AIエージェントの高頻度の使用が常態化することで、課題となるのがトークンコストの上昇である。IBM Bobは、マルチモデルとハイブリッドクラウドによって、この課題にも対応できる。すべての処理をAIに渡すのではなく、答えが決まっており、ルール化できるものは、専門ツールの利用により、トークンコストを圧縮するという工夫もしている。9月30日からは、オンプレミスの提供を開始し、様々な環境でAIコーディングができるようになる。今後もIBM Bobを成長させていく」

大量成果物時代の品質管理とテストの課題

 今回の説明では、AI駆動開発を区分してみせた。ここでは、エンタープライズ開発に活用するものを「仕様駆動開発(AI駆動型開発)」と定義。AIに自然言語で指示し、コードを生成する「バイブコーディング」は、人間が開発の主体となり、プロタイピングなどで活用する手法と位置づけた。さらに、AIが計画を提示し、人間が確認後、AIがコードを生成する「ハイブリッド」という区分も示した。

「仕様駆動開発は、仕様を文書化し、AIがコード生成する仕組みとなる。また、ここでは、エンジニアリング技法が速いスピードで進化している点が見逃せない。プロンプトエンジニアリングだけでなく、文脈情報を開発運用に生かすコンテキストエンジニアリング、AIの挙動を制御するハーネストエンジニアリングといった技法が進化している。IBM BobとALSEAが、これらの技法を取り込みながら、エンタープライズAIにおける仕様駆動型開発を推進していくことになる」

AI駆動型開発の分類

 開発者がIBM Bobを活用してソフトウェア開発を行なうと、多様な成果物が、大量に生まれることになる。これに対して、AIとの対話によって、品質要件を構造化し、明確な仕様とテスト環境を指示し、品質観点でのレビューおよび統制を行ない、最終品質は人が決めていくことになる。

「AIは多くの成果物を作るため、それをレビューする時間が増え、結果として開発生産性が下がってしまったという事例もある。ここがAI駆動型開発の課題ともいえる。この壁を乗り越えるのがALSEAになる」

IBMの大規模開発ノウハウを詰め込んだ「ALSEA」

 ALSEAは、IBMおよび日本IBM独自の大規模開発のノウハウを詰め込んだエンタープライズ向けソリューション。標準プロセスや成果物テンプレート、ルール、ガイド、コマンドなどを参考情報としてまとめ、AIに渡し、コンテキストやハーネスに基づいて開発を指示し、人間がレビューできる単位で成果物を作り、品質や整合性を維持することができる。

「IBM BobとALSEAにより、仕様駆動型開発を進め、業界の変革をリードしていく。現在、80以上のお客様に協力をもらい、試行やプロジェクトを開始している」

ALSEAとIBM Bobによる仕様駆動開発

 日本IBMでは、IBM BobとALSEAを活用することで、要件定義から実装、テスト、デプロイまでのソフトウェア開発ライフサイクル全体の生産性を、2027年までに36%削減することを目指しているという。

 村田氏は、「現時点で、その成果が手に入りそうだという、手触り感のある実感を得ている。とくに企業知識層を構成するナレッジやデータ、コンテキストを整え、資産化し、AIが活用する知識基盤を構築すると、生産性が一気に高まることがわかっている。部分的なAIの適用では生産性の改善は限定的だが、IBM BobとALSEAは、開発ライフサイクル全体の生産性を高めることができる」とコメント。その上で、「2028年以降は、50%削減を行ない、ソフトウェア開発ライフサイクルを倍増させる。この実現にも手応えがある。この1年間で、36%から50%にまで、大幅な生産性改善が進むのは、テスト部分での改善が大きく、さらに、知識基盤とAIの組み合わせも進むことが背景にある」とまとめた。

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