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ビル設備のアプリ制御を可能にする「ビルOS」を2つのキャンパスで導入、その目標を聞く

“ソフトウェアで機能拡張するキャンパス” 大阪公立大の実証施設が目指す未来

2026年08月05日 09時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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大阪公立大学の中百舌鳥キャンパスにある「イノベーションアカデミー スマートエネルギー棟」

 竣工してもそれが完成形ではなく“継続的に機能をアップデートできるスマートなビル”を作るには――。そんな研究と実証実験が、大阪公立大学の中百舌鳥キャンパス(なかもずキャンパス、大阪府堺市)と森之宮キャンパス(大阪市城東区)を舞台に行われている。

 空調、照明、エネルギー、移動、防災、防犯など、現在のビルにはさまざまな設備が組み込まれている。これらを統合するプラットフォームを作り、一元的な制御のためのアプリケーションを開発する。こうしたスマートビルは、未来のスマートシティづくりにもつながっていくという。今回は、大阪公立大学のスマートキャンパスプロジェクトを率いる同大学 教授の阿多信吾氏に話をうかがった。

大阪公立大学 大学院情報学研究科長、基幹情報学専攻 教授/学長補佐(スマートユニバーシティ担当)の阿多信吾氏

キャンパスを「社会実証フィールド」に活用する大阪公立大学

 大阪公立大学(OMU:Osaka Metropolitan University)は、それぞれ約140年の歴史を持つ大阪府立大学と大阪市立大学を統合するかたちで、2022年4月に新設された大学だ。12学部/学域と16の研究科があり、学生数は約1万6000人。学部学生の入学定員数は、全国国公立大学中で3位という大規模な総合大学である。

 同大学では、幅広い学問領域をカバーする強みを生かし、個々の専門知だけにとどまらない「総合知」の探究と創造を目指している。さらに、社会課題を解決するための産学官民による共創活動も重視しており、それを具現化していく「社会実証フィールド」として、大学キャンパスを活用している。

 そうしたビジョンに基づき、2025年2月に竣工した中百舌鳥キャンパスの「イノベーションアカデミー スマートエネルギー棟」と、同年3月竣工の森之宮キャンパスの双方には、同じビルOS(詳しくは後述)を導入し、スマートビルの実証に取り組んでいる。ここでは、さまざまなビル設備からデータを取得したり、設備を自動制御したりするソフトウェア(アプリケーション)の開発基盤が整っているのだ。

 「ビルは、都市やキャンパスを構成する要素の一つです。ビルにスマートな基盤を組み込むことで、ゆくゆくはキャンパス全体や都市のスマート化にもつながる――。そう考えて、アプリケーションを開発できる『プログラマブル基盤』を作ろうと考えました。ITインフラの世界には“Software-Defined”という概念がありますが、ビルや都市といったインフラもSoftware-Definedにしていくというのが、最終的に目指す姿です」

大阪公立大学のスマートビルプロジェクト概要

2つのキャンパスは「開発環境と本番環境」、学生に開発経験を与える役割も

 阿多氏は、規模が異なる2つの実証の場=キャンパスは「アプリケーションの開発環境と本番環境」のような関係であり、その狙いを「建物、リアル空間を使ったアジャイル開発(DevOps)」だと表現する。

 「スマートエネルギー棟の床面積は約3000㎡で、200名程度の人が活動しています。一方、森之宮キャンパスは8万㎡弱あり、活動する学生や教職員の数も5000~6000名とはるかに規模が大きい。なので、スマートエネルギー棟を『小規模実証』の場として概念実証を行い、そこで開発したアプリケーションを森之宮キャンパスに移し、社会実装に近い『大規模実証』を行う。そんな関係にあります」

2つのキャンパスを舞台にスマートビルの社会実証を行っている

 今回訪れたスマートエネルギー棟は3階建のビルであり、ネット・ゼロ・エネルギー(ZEB)化やスマートビルの社会実装に向けた研究と実証が行われている。1階がオープンスペース、2階と3階が企業共創ラボも含む研究室やインキュベーションエリアとなっている。

 「実証実験の場」ならではの特徴として、IoTデバイスやセンサーを必要に応じて取り付けられるように、スケルトン天井にフレームを設け、デバイスに給電できるPoEネットワークを敷設している。ビル竣工時に備わる機能に制限されることなく、新たな実証実験も柔軟に展開できるようにする工夫である。

スマートエネルギー棟の内観

天井のフレームやスタンドなど、さまざまな場所にIoTセンサー/デバイスが設置されていた

 こうして整備されたインフラを活用して、さまざまなアプリケーションを開発することで、キャンパス運営にまつわる諸課題を解決していく。ハードウェア(ビル設備)ではなくソフトウェアによる解決を考える、これを阿多氏は“アプリネイティブ思考”と呼ぶ。これから重要になるこの考え方を、実践を通じて学生にも根付かせていくことが目標だ。

 「プログラミング教育というと、これまではパソコンを使ってスマホのアプリを開発したり、ロボットをプログラムで操作したりといった内容が中心でした。その対象を建物に変えて、建物をコントロールできるアプリの開発体験を持つ学生を増やしていく。それが目指すところです」

現在、スマートエネルギー棟で実現していること

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